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第10章「沈黙の祭り」
第10章「沈黙の祭り」その14
しおりを挟む「初めてきたけど、屋上ってけっこう広いんだね」
屋上に着くと、西山は子どものように歩き回っている。
僕は平木に呼び出されて以来、ここには来ていなかった。
あの日と違って空は青さが残っており、日が雲に隠れている。
「で、ここに何の用があるんだ?」
そう言うと、西山は僕をちら見してフェンス際に行った。
「二カ月ほど前の放課後、二人の生徒が屋上から飛び降りたのを見たの」
また、彼女の表情が固くなった。
「見た場所は確かあのグランドの端っこくらいかな。
初めはただの見間違いだと思ったんだけど、この間のあれを体験して、確信したの。
あれは、きっと羽塚くんと平木さんだよね?」
ここまで来て、もう言い逃れはできそうにない。
「ああ。そうだよ」
「平木さんも私と同じ体験をしたってことでいいんだよね?」
「平木はそれを悩み部屋と呼んでいた。
悩みを解決するまで出ることはできないそうだ」
「悩み部屋か...」
フェンス際にいる西山はずっと、下を見ている。
ここからじゃ表情は見えないが、いつも通りでないことは確かだ。
すんなり受け入れられそうにないだろう。
「羽塚くんはどれくらいの人を助けたの?」
助けたとは思えないが、ここで否定するのは違う気がする。
「西山で二人目だよ」
「そっか」
「でも、何で平木さんは悩み部屋って呼ぶんだろうね」
「平木はワンルームで、本が置いていたらしい。
そこには悩み部屋に関することがすべて書かれていたらしいよ」
「その本は今、どこにあるの?」
平木は確か、僕を呼んで二度目に来た時に無くなっていたと言っていたな。
「わからない」
「そっか」
「羽塚くんをここへ呼んだのは、悩み部屋について聞きたいってのもあったんだけど、
本当は渡さなければならないものがあったからなの」
そう言うと、西山は僕の方に体を向けて、
「実は電車にいた車掌がこれを羽塚くんに渡してほしいって言ってたの」
見ると、彼女の手のひらに鍵があった。
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