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第10章「沈黙の祭り」
第10章「沈黙の祭り」その5
しおりを挟む「あら、遅かったわね」
教室に帰ると、平木は一本目の柱を塗り終えかけていた。
周囲を見ても手伝っているのは女子ばかりで、
小西含む二軍男子は隅でトランプゲームをしている。
「あぁ、諏訪先生が美術室にいないもんで、職員室まで行ってから」
「そう」
「あのさぁ、これってどう塗るの?」
そう言った時、平木の手伝いをしていた女子たちが不服そうに言ってきた。
「まさか羽塚が塗る気なの?」
だから聞いているんだろ、と言ってやりたかったが、心の中だけにしておいた。
「やめときなって。平木さん、塗るの超うまいんだし、ここはあたしらが手伝うから」
この三日間でずいぶん信頼を獲得したなぁ。
ついこの間まで僕以外のクラスメイトとは、
目を合わすことも話すところもほとんど見たことないっていうのに。
何か虚しいな。
とりあえず、ここはそれなりの理由をつけて乗り切ろう。
「平木一人に塗るの任せるのは申し訳ないし、
この柱重いから男手がいた方が、はかどると思うぞ」
二人の女子は面食らったように黙り込んだ。
「わかった。じゃあ、塗り方を教えるわ」
少し気まずい空気になったが、平木がフォローを入れてくれた。
まさか、あの自己中少女がこんなにも優しくなるなんてな。
廊下で初めて話した時には想像できなかった。
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