落ち込み少女

淡女

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第5章「白紙の手帳」

第5章「白紙の手帳」その15

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一限は物理だったが、


テスト終わりの初日の授業はとてもじゃないが、集中はできなかった。


山形先生は摩擦について三十分ほど語ったあと、


分厚い手で割りばしのようにチョークを持って教科書に示された図を必死に書いている。


四十歳近いおっさんが必死に丸い物体と斜面を描いていると思うと、

なんだかこう、こみあげるような笑いが僕の脳内をかけめぐっている。


それらを描き終えた後、


チョークの粉がついた両手をパンパンはらい、


僕らに物体と斜面の摩擦力を求めるように告げて教室を颯爽と去っていった。


あの焦りようだとおそらく便所だろうな。


意識を蚊帳の外にして聞いていたためか先生の指示を理解するのに数秒かかった。


それは僕だけはなく、クラスメイトも例外ではなかった。


つまり満場一致ということだ。いや、違うな。


くだらない考えがこれ以上増殖しないように問題を解こうと思った。


シャーペンを持ちながらA4のキャンパスノートをパラパラとめくり、


書いていないところまでめくりつづけて残り二枚しかないことに気づいた。


今日買いにいこうか。


いざ解こうと黒板の問題を見ると、一瞬では理解ができなかった。


そのせいかやる気が一気にそがれた。


難しくなっているのはわかったいたが、


何となくで解けるほど簡単では無くなっていることには気づかなかった。



それは物理の問題だけじゃないはずだ。


いろんなことが複雑でややこしくなっている。
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