66 / 172
第5章「白紙の手帳」
第5章「白紙の手帳」その3
しおりを挟む「羽塚くん、今日の三教科は全て満点なんでしょうね?」
それは突然だった。
何の前触れもない、しかしそれがまた僕の心を揺れ動かした。
僕らはさも当然のように帰り道を二人で歩いていた。
方向的に僕と平木は一緒なので、そこは問題なかった。
放課後に女子と帰るなんて、僕の予定には組み込まれてはいなかった。
高校生活が始まって以来、僕は一人で登下校をしていたので、
これは嬉しい誤算だった。
「ねぇ、聞いてる?」
この状況について考えていると、返事をすることを忘れてしまった。
「いやさすがに満点はな...」
「聞くまでもないわね。
私がテスト1週間前から教えてあげたんだから、
これでクラスの平均点以下なんて取ろうものなら、
逆立ちして土下座してもらうわ」
「どうやってやればいいんだよ」
相変わらずの暴言だな。
「そんなに人をいたぶって楽しいか?」
「えぇ、楽しいわよ」
「あなたが初めてなのだから」
ドキッとした。
その言葉は刺激が強すぎた。
「何が?」
「こんなに罵られても、恍惚とした笑みを浮かべているから」
こいつは本気で言っているようだ。
眼科に行った方がいいのか、いや脳外科なのか。
「そんな顔した覚えはないぞ」
「そんなことよりさぁ、
まだ明日、明後日とテストあるけど勉強はするのか?」
「当然でしょう」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
思い出を売った女
志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。
それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。
浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。
浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。
全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。
ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。
あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。
R15は保険です
他サイトでも公開しています
表紙は写真ACより引用しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる