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第4章「異常の中の普通」
第4章「異常の中の普通」その6
しおりを挟む三、四、五限と時間はみるみる経ち、
放課後のホームルームが始まった。
秋山先生はころごろ忙しいらしく、
いつもよりも早口でぶっきらぼうだった。
しかし締めにさしかかったころ、なにやら真剣な面持ちになった。
「もうすぐテスト一週間前だ。
君たちにとっては高校で初めての定期テストだな。
何事も初めが肝心だと僕は思う。
これからの人生、こういう局面は何度も訪れる。
君たちにはスタートダッシュが上手い人間になってほしい。
悔いのないよう、しっかり勉強するように」
そう言って、秋山先生は時計を見て、
後は新田と西山に任せてるように
走って教室を颯爽と去った。
良いことを言った気がするが、みんなも何も感じなかったように
早々と支度をして教室から去って行った。
もう一週間前か...。
あんなかっこいいこと言われたところでテストは嫌いだ。
僕は今までどんなテストでも人よりずば抜けて抜きんでたことがない。
かといって赤点もとったことがない、特徴のない男なのだ。
つまり、僕は勉強が嫌いなんじゃないはずなんだ。
ハア…こないだの調子で嫌な事をスキップできる能力でも見つけられたらなぁ。
もっとこう面白いことはないのか。
「羽塚くん」
まだ帰り支度をしていると、名前を呼ばれた。
平木だ。僕と同様、座りながら、帰り支度をしている。
自分から声をかけてくるとは珍しい。
「この後、暇?」
僕は予定などあろうはずがないスケジュールを確認した。
「ああ、暇だよ」
こちらから目をそらし、自分の机の方を見た。
「なら、ついてきてくれない?」
「わかった」
僕はどうやら可愛い女の子の誘いにはすぐに乗るクズ野郎だと
今更ながら悟ってしまった。
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