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第2章「悩み部屋」
第2章「悩み部屋」その7
しおりを挟む「悩み部屋のことを知ったのは、一回目にここに来た時だった。
初めは何が起こったのか分からなかったわ。
そして机にはルールブックが置かれていたわ。
そこにはここから出る方法は二つあると記載されていた。
本人が死ぬか、誰かに悩みを解決してもらうかしかない。
そして、私は後者を選んだ。」
彼女は姿勢を整え、僕の目を見て、その赤い唇から言葉を発した。
「ここは悩み部屋。
私が作り出した空間。
私一人じゃこの部屋からは出られない。
だから、あなたを呼んだの。
あなたならこんな理不尽なことでも、受け入れてくれると思ったの。
羽塚くん、私の悩みを解決してください。
どうかお願いします。」
ここまで人に真剣にお願いされたは初めてだ。
ここで断ったら、もう男じゃなくなるような気がした。
だから、
「分かった。」
ただそう言った。
「ありがとう。」
平木は深々と頭を下げた。
昨日まで僕を罵倒した彼女とは別人のようだ。
真剣だ。
そうだ、そうなんだ。
彼女はふざけていない。
平木尊は一度たりとも、ふざけてなどいなかったんだ。
僕に彼女の悩みを解決出来るかどうかは分からない。
しかしよくよく考えればここから何をどうすればいいのやら。
「....」
「....」
いやな沈黙が二人の空間に漂った。
気まずい。
あんなカッコよく引き受けてこれか。
何から話せばいいのか。
いきなり悩みを聞いたところで、いい返事が返ってくるわけがない。
彼女の悩みは死を願うほどの悩みなのだから。
まぁ時間はある。
ゆっくり焦らず、慎重にいこう。
「平木って普段なにしてるの?」
「そうね。勉強しているか本を読んでいるかどちらかね。」
「イメージ通りだなぁ。」
「羽塚くんは私にどういうイメージを持ってるの?」
「真面目そうっていうか賢そう。」
「それは褒め言葉なの?」
「そうだよ。」
「私、真面目って言われるの嫌いなの。」
「何で?」
「何か小馬鹿にされているような気がする。」
「ごめん。そういうつもりで言ったんじゃなくて。
自分っていう芯がしっかりしてる人かなって。」
「芯があるなら、悩みなんて持たないわ。」
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