落ち込み少女

淡女

文字の大きさ
上 下
10 / 172
第1章「平木尊」

第1章「平木尊」その10

しおりを挟む



右隣にいるべきはずで、

今そこにいる平木が表情筋が

完全に固まったような真顔のお手本のような顔で

僕の方を注視していた。



じーっと、僕の顔を見ている、いや睨みつけているのか。

気づいて、もう20秒くらい経っている。

のに、彼女顔は最初の表情から寸分違わなかった。


...こ、こわいな。



ただでさえ、顔のパーツがくっきりしている分、

真顔で見られると威圧感というか、

息苦しいほどの圧迫感を感じる。



まるで西洋絵画に描かれた美女に睨まれているようだ。


「…」


無言だ。

ここまで見られて、何も話しかけられないのは、

人生で一度あるかないかだと思う。




「...ぁ」



全く表情を変えなかった彼女の顔に変化がみられた。


唇が少し動いた。


彼女はようやくその重い唇を開けたのだ。

話すのか?僕に話しかけるのか?



「ここの範囲ってもう終わったかしら?」


「えっ、えっ~と、そこは確かやってないはずだよ。」


初めて彼女の声を聞いた。


とても軽く、しかし何かを抱えているかのような重みのある声だった。



ちなみに平木の質問に答えたのは、僕じゃない。


ちなみに聞かれたのも、僕じゃない。


まさか平木は僕ではなく、平木の席から見て、


右にいる女の子に聞いたのだ。



さっきのガン見はいったい何だったんだ!?




 僕の意識が右隣の座席ではなく、

右隣の彼女へと変わっていったことに

この時の僕はまだ気づいていなかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

高校球児、公爵令嬢になる。

つづれ しういち
恋愛
 目が覚めたら、おデブでブサイクな公爵令嬢だった──。  いや、嘘だろ? 俺は甲子園を目指しているふつうの高校球児だったのに!  でもこの醜い令嬢の身分と財産を目当てに言い寄ってくる男爵の男やら、変ないじりをしてくる妹が気にいらないので、俺はこのさい、好き勝手にさせていただきます!  ってか俺の甲子園かえせー!  と思っていたら、運動して痩せてきた俺にイケメンが寄ってくるんですけど?  いや待って。俺、そっちの趣味だけはねえから! 助けてえ! ※R15は保険です。 ※基本、ハッピーエンドを目指します。 ※ボーイズラブっぽい表現が各所にあります。 ※基本、なんでも許せる方向け。 ※基本的にアホなコメディだと思ってください。でも愛はある、きっとある! ※小説家になろう、カクヨムにても同時更新。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

掌編集

にけ❤️nilce
ライト文芸
一話完結。 「マグネット!」三題噺コン提出作からの転載、「文章力向上委員会」一文字お題より改稿

猫嫌いの探偵が猫探しをすることになりまして

紫水晶羅
ライト文芸
ひいらぎ探偵事務所所長、柊凛太朗は、大の猫嫌い。 そんな凛太朗の元に、ある日猫探しの依頼が舞い込んだ。 依頼主の女性に一目で心を奪われてしまった凛太朗は、条件付きで依頼を引き受けることにするが……。 心温まる、ちょっぴり不思議な物語です。

処理中です...