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オークション
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「それではご自由にご鑑賞ください」
長い挨拶の後男がそう締めくくって、待ちかねたように集まっていた大人たちが席を立つ。
挨拶の間おのおの目をつけていたと思われる『商品』に近づいて『商談』が行われていた。
よく見るとお兄さんたちはほぼ下着姿で、急に連れてこられたせいか僕は夏の制服のブレザーを着たままだった。
僕はどうしたらいいんだろう。
塾を無断で休んでしまった。
親にも連絡が行っているだろうし、帰って怒られるのが怖い。
というか、ここはどこで何が行われているのかわからない。
「おい、君、ぼーっとしてないで買われるようにせめて笑顔で立ってろ。誰にも買われなかったら処分されるぞ」
急に背後から声をかけられて恐る恐る振り向くと、スーツを着崩して黒髪をラフに後ろに流している、さっきの男の人と少し似ている雰囲気の人が立っていた。
「君、年は?」
「…12」
「は!?」
何だろう。僕なにか怒られることしたのかな。
怖くなって体中にぎゅっと力が入る。
男はふう、とため息をついた。
「ここは人を買うイベントで、俺は客、キミは商品だ」
「…は?」
今度は僕が声を上げる番だった。
「まあ座りな」
男は無人の円形テーブルの椅子を引いて座って足を組んだ。
僕は離れた席におずおずと座る。
「家に帰りたい」
帰りたくないけど、ここにいるのは危ないということはわかった。
「俺がキミを買った程にしてここから連れ出してやる。工藤のやつついに年齢無視して人集めし始めたな、まったく…」
工藤、さっき名前を聞いたような気がする。
目の前のおじさん…、いや男の人は、乱暴にお酒の瓶を取り上げて、ふたつのグラスに注いでひとつを僕のほうに押しやった。
「飲まなきゃやってられない状況になるぞ。一口でもいいから飲んどけ」
ジンジャーエールみたいな色をしたそれを、少しだけ飲んでみる。
甘くて、苦い。
「おい、工藤」
おじさんがさっきの男の人を呼んだ。
「お前まさかこの子買う気か?ついにそこまで行ったか…」
「うるさいな。いくらだ」
そのあたりまで聞こえていた気がする。
また気を失って、次の記憶は大きな屋敷の門の前まで来ている車内から始まった。
長い挨拶の後男がそう締めくくって、待ちかねたように集まっていた大人たちが席を立つ。
挨拶の間おのおの目をつけていたと思われる『商品』に近づいて『商談』が行われていた。
よく見るとお兄さんたちはほぼ下着姿で、急に連れてこられたせいか僕は夏の制服のブレザーを着たままだった。
僕はどうしたらいいんだろう。
塾を無断で休んでしまった。
親にも連絡が行っているだろうし、帰って怒られるのが怖い。
というか、ここはどこで何が行われているのかわからない。
「おい、君、ぼーっとしてないで買われるようにせめて笑顔で立ってろ。誰にも買われなかったら処分されるぞ」
急に背後から声をかけられて恐る恐る振り向くと、スーツを着崩して黒髪をラフに後ろに流している、さっきの男の人と少し似ている雰囲気の人が立っていた。
「君、年は?」
「…12」
「は!?」
何だろう。僕なにか怒られることしたのかな。
怖くなって体中にぎゅっと力が入る。
男はふう、とため息をついた。
「ここは人を買うイベントで、俺は客、キミは商品だ」
「…は?」
今度は僕が声を上げる番だった。
「まあ座りな」
男は無人の円形テーブルの椅子を引いて座って足を組んだ。
僕は離れた席におずおずと座る。
「家に帰りたい」
帰りたくないけど、ここにいるのは危ないということはわかった。
「俺がキミを買った程にしてここから連れ出してやる。工藤のやつついに年齢無視して人集めし始めたな、まったく…」
工藤、さっき名前を聞いたような気がする。
目の前のおじさん…、いや男の人は、乱暴にお酒の瓶を取り上げて、ふたつのグラスに注いでひとつを僕のほうに押しやった。
「飲まなきゃやってられない状況になるぞ。一口でもいいから飲んどけ」
ジンジャーエールみたいな色をしたそれを、少しだけ飲んでみる。
甘くて、苦い。
「おい、工藤」
おじさんがさっきの男の人を呼んだ。
「お前まさかこの子買う気か?ついにそこまで行ったか…」
「うるさいな。いくらだ」
そのあたりまで聞こえていた気がする。
また気を失って、次の記憶は大きな屋敷の門の前まで来ている車内から始まった。
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