御曹司とカレシ

セックス

新婚だというのに真まことは夜になると頻繁に優ゆうの部屋にやってくる。
あまり他人のことに興味がない優ゆうですら心配になってくる。

「ここで奥さんの愚痴やノロケなんか聞きたくない」
「言わねえよ。言うほどのエピソードがない。子ども出来たらお互いお役御免だ」
「だから、そういう事だよ。話題に出すな」

結婚してから優ゆうは感情を表すようになった。学生時代からつきあっているが喜怒哀楽をはっきりさせたところを見たことがない。大きな涙袋の瞳で冷たく見ているだけだった。

「お前から話ふったんだろう。何怒ってるの」
「…別に」
指摘されたのが癇に障ったのか自分に背を向けた優ゆうの背中を包むようにしてベッドに押し倒した。
「油断大敵」
冗談で言ったのだが、優ゆうの瞳は心なしか潤んでいた。

しばらくネクタイを弄んでからお互い着ているものを脱がして裸になっていく。

「あ…」
他人の感情の機微など考えたこともない真まことでも、優ゆうの変化には気がついた。わずかな刺激にも敏感に反応して、行為のとき目を閉じていたことが多かったが最近は涙袋のある瞳で見てくることが増えた。
「もっと…奥……突いて」
そんな事今まで言わなかったのに刺激が弱いと体位を変えて自分が上になろうとする。

「俺がお前を支配するほうが燃える」
起き上がろうとする優ゆうを止めて、クッションを下に入れて腰を上向きにする。ゆっくり挿入してから様子を見て彼が気持ちよさそうに瞳を閉じると、律動を早くした。

「ん…う…まこ…と……いい…」
腰をくねらせて優ゆうは自分を攻める男の名前を呼ぶ。少しかすれた声が官能的だった。
「気持ちいい？」
「うん、…うん…いい……気持ちいい」
真まことの繊細な精神はここで終了だった。

緩やかに終わっていくであろうこの関係を思うと、不安が余計快感を強めている気がする。優ゆうの変化の本当の理由はそこだった。

「ああっ！…いぃ…真まこと……」
今まで恥ずかしがって嫌がっていた勃起して濡れたそれを指で刺激しても悦ぶようになった。あふれる蜜を塗りつけて裏を指で強めに上下させると、気を失いそうになる。
「…イキたい？」
「真まこと……いっしょ…に……」
死ぬまで一緒に生きていけたら。

もう２９歳。愛人なんて不安定なものいつまでもやっているもんじゃない。
結婚して、安全地帯からモノを見ている人間にこの不安はわからない。それが優ゆうを苛立たせる。
「お前なんか…」
「ん？」
「……キライだ」
「…」
一瞬無音になったが、真まことが強く突いてゆっくり抜く動きを繰り返すうちに、言葉は嬌声に戻っていった。