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可愛い人
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ボリーさんの強烈な出会いから大分落ち着いてきた頃、シェナが下宿している『梟屋』にたどり着いた。
「ここが、貸部屋の梟屋。鳥人の夫婦が営んでいるの」
「鳥人・・・」
梟屋に入ると、
「シェナちゃん、おかえりなさい」
「ただいま、戻りました」
鳥人のココロさんが笑顔で出迎えてくれた。
「はい、おかえり。貴方がユージーンさんね。私は、この梟屋の主人の妻のココロと言います。よろしくね」
「っ、はい、ユージーンです。ご迷惑をお掛けします」
「いいえ~。話はロベルトさんから聞いているわ。大丈夫よ~」
相変わらず、ニコニコと優しく微笑むココロさんにユージーンの表情が少し和らいだ。
「あら!もしかして、その子が?」
「あ、はい。エンシェントドラゴンのルウです」
「キュ?」
シェナの腕の中でいつのまにか寝てしまっていたルウが目を覚まし、ココロさんを見る。
「まあ!まあ!まあ!!なんて、可愛いの!?はじめまして、ルウちゃん」
ココロさんは体を少し屈め私が抱えているルウに視線の高さを合わせる。
「キュ・・・・」
「うふふ、キュ~?」
「キュ、」
「キュ!」
ルウの鳴き声を真似するココロさんがルウと会話する。
多分、会話出来てないけど、何かが伝わっているの様子。
ココロさんの優しい雰囲気にルウがココロさんに手を伸ばすと、優しい笑顔でココロさんはそっと人差し指を差し出し、指を握らせる。
可愛いやり取りをするココロさんとルウは、なんだか・・・・和む。
「うふふ、あら、ごめんなさい。お客様をお待たせしてしまって。さあ、中にどうぞ」
しばらくルウと触れ合ってご満悦のココロさんはニコニコと梟屋の中へと招く。
「・・・随分と可愛らしい人だな」
「でしょ?」
隣に立っていたユージーンの呟きにシェナは小さく笑いながら短くそう答えた。
「帰っていたか」
後ろから低くて渋い声が聞こえ、振り向くと、梟屋の主人ゼノンさんが立ってっいた。
相変わらず貫禄の威圧感がある佇まいだが、
「ゼノンさん。ただいま帰りました」
「ああ」
シェナと視線が合うと目尻が優しく緩んでいる。
パッと見、分からないけど。
「あら、アナタ。こちら、ロベルトさんから頼まれました、ユージーンさんよ」
「っ、ユージーンです」
「ああ、梟屋の主人のゼノン・クロッカスだ」
ユージーンも背が低い訳では無い。むしろ高身長だ。
それでも、ゼノンさんはユージーンよりも頭ひとつ背が高い。
初老ではあるが、ガッシリとした筋肉質な体。威圧感のある金色の瞳の鋭い眼に、圧倒され、ユージーンの表情がまた固くなる。
「ロベルトから話は聞いている。難儀だったな」
「っ、いいえ、」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
ユージーンとゼノンさんの間の会話が続かない。
「もう、ゼノン。シェナちゃんに渡す物があるんでしょ?」
微妙な空気の沈黙を終わらせたのはゼノンさんの妻のココロさんだった。
「・・・・ああ」
「うふふ、じゃあ、私はユージーンさんをお部屋に案内してきますね」
「ああ・・・・」
「それじゃあ、シェナちゃん、また後でね。
さあ、ユージーンさん、行きましょう」
「、は、はい」
そう言って、ココロさんはユージーンを連れて行った。
ココロさんがユージーンを連れて行ってくれたのはいいが、
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
今度はシェナとゼノンの間に微妙な空気の沈黙が・・・。
「・・・、あの、ゼノンさん、今回の件は本当にご迷惑をお掛けしました」
シェナは、ゼノンに向き合い頭を下げる。
腕の中にルウがいる為、深く頭を下げる事は出来ないけど。
「いや、気にする事は無い。それに、彼を引き取るとロベルトに進言したのは私の方だ。
私も彼を保護した責任があるからな」
「ゼノンさん」
「それよりも、渡す物がある。部屋で待っていなさい」
「え、あ、はい」
「ん」
ゼノンさんはそう言い残し、歩いて行ってしまった。
「・・・・キュ?」
「なんだろうね」
不思議そうにキョトンとするルウに優しく問い掛ける。
自分の部屋に戻り、とりあえず、ベッドの上に掛け布団を折り畳み、ルウを折り畳んだ掛け布団の上に寝かせる。
ルウはなんだか寝心地が悪いのか、ちょっと嫌そうに顔を顰めている。
「んきゅ~」
「気に入らない?でも、ずっと抱っこしている訳にもいかないし、後でルウの寝る所作らないと」
とりあえず、ロベルトから貰った子ドラゴンの生態を綴った本に目を通す。
ドラゴンの飼育はある程度の知識はあるけど、ルウは人龍化して見た目は1歳未満の人間の子供変わらない。
この本にはさすがに人龍化したドラゴンの生態までは載っていなかった。
どうしたものか。
ぐずっているルウをあやしながら説明書と睨めっこしていると、
コンコンコン
「ゼノンだ」
「あ、はい!」
ドアの外からノックとゼノンさんの声が聞こえた。
すぐにドアを開ける。
すると、そこには、何やら大きな物を抱えたゼノンさんが立っていた。
「ゼノンさん、それって」
「その子の寝所だ」
「へ?ルウの、ですか?」
「ああ」
そう言いながらゼノンさんが部屋に入りベッドの隣に持ってきた物を置く。
それは、揺籠だった。
藍色の太い蔓を編み込んで作った籠を三本の柱で吊して支えている、この街ではよくあるタイプの揺籠だ。
籠は丸く屋根が付いており、まるで大きな卵のような形をしている。
揺籠の中を除くと内側に何かキラキラした物が貼り付けられている。
「その子は、ドラゴンの子だと聞いている。
だから、その子の生まれた卵の殻を核に錬成した魔工石と籠蔓の木を加工して作った物だ」
「え、作ってくれたんですか!?」
「必要な物だからな」
「そんな、わざわざ、」
「この子はまだ数日前に卵から孵ったばかり、それも、人龍化をしている。
いきなり環境が変われば、ストレスになり病気にも繋がる。
それを防ぐ為にも寝所はちゃんとしてやったほうがいい」
「あ、」
ゼノンの言葉にシェナは自分の行動の失態に気付かされる。
そうだった。見た目は人間の子供に見えるけど、ルウは歴としたドラゴン。
普通の人間の子供と同じな訳がない。
ましてや、ルウは産まれたばかり。
些細な事でも気を配らないといけない存在なのに。
それなのに、懐いてくれているから大丈夫だとか、人間の子育てくらいに思っていた自分がいた。
いくら、ロベルトさんに頼まれたからと言って、余りにも考えが浅はかだった。
「すみません。私、簡単に考えすぎていました。
ルウの必要な物は後でなんとかなるって、そう思ってて、考えが足りませんでした」
シェナはまだ少しぐずっているルウを抱き上げる。
「ごめんね。ルウ・・・」
「キュ?」
シェナに抱っこされたルウはよく分かっていないのかキョトンとしていた。
そんなシェナに、ゼノンは、
ぽん
「、??」
優しくシェナの頭を撫でた。
「??、ゼノンさん?」
「間違いは誰にでもある。特に、この子の場合はかなり特殊だ。ましてや、君は若い。間違えたり、思い違う事は当たり前だ」
「ゼノンさん、でも、」
「君は、このドラゴンの子を引き取った事を後悔しているかい?」
「いいえ」
「・・・・そうか」
シェナは即答する。
「なら、自分の判断に自信を持ちなさい。
間違えてもいい。迷ってもいい。弱音も吐いていい。
それはとても大切な事だ。
もし、間違えたのなら、私とココロがそれを止めよう。
迷ってしまったのなら、私やココロ、周りの信頼できる大人を頼りなさい。
ただし、一度決めた事を投げ出す事はしてはいけない。簡単に人のせいにはしてはいけない。
そして、自分の言葉に責任を持ちなさい。
曖昧な言葉は、助けにくいものだからな」
「でも、・・・・」
言いかけた言葉にシェナは口をつぐんでしまった。
「・・・・迷惑になると思っているのかい?」
「・・・・っ」
思っていた事を言い当てられ、シェナの目が微かに揺れる。
そんな、シェナにゼノンは小さく微笑む。
「心配しなくていい。これは、ただの年寄りお節介だ。
無理はしなくていい。出来る事をすればいい。もし何かに躓いたらそこから学べばいい。
だから、たまにでいい。甘えてくれれば、ココロも喜ぶ。家内は世話好きだからな」
大きく硬い手がシェナの頭を優しく撫でる。
その手が、暖かくて、少しくすぐったい。
「・・・ゼノンさん、」
「ん?」
「ありがとうございます」
「ああ」
「きゅ?」
顔を少し赤らめ、俯くシェナをルウは不思議そうに見上げる。
「・・・・今日、ムム芋が多く採れた」
「え?」
「・・・・夕食、ココロの手伝いを頼んでもいいか?」
「っ、はい。美味しいモノ作ります」
「ああ」
優しく微笑みながら、ゼノンはシェナの頭から手を退ける。
そして、キョトンとした顔をするルウの頭を優しく撫でる。
と、その時、
トガ、ガタタタ!!
「!?、」
「え?、何の音?」
下の階から何か落ちるような物音が聞こえた。
「私が見てこよう。・・・・シェナは、この子と居てあげなさい」
「え?あ、え?名前、」
「夕食、期待している」
そう言い残し、そそくさと部屋を出て行ったゼノン。
「・・・・名前、ゼノンさんに初めて呼ばれたかも」
そう呟きながらシェナは熱る顔を持て余しつつ、ベッドに座る。
だが、顔が熱っていたのはシェナだけではなかったようだった。
「ゼノンさん、耳、真っ赤になってた」
梟屋に部屋を借りに来た日にココロさんがゼノンさんは可愛いと言っていたけど、なんだかちょっとだけ、分かった気がする。
思わず思い出して口元が緩んだ。
「ここが、貸部屋の梟屋。鳥人の夫婦が営んでいるの」
「鳥人・・・」
梟屋に入ると、
「シェナちゃん、おかえりなさい」
「ただいま、戻りました」
鳥人のココロさんが笑顔で出迎えてくれた。
「はい、おかえり。貴方がユージーンさんね。私は、この梟屋の主人の妻のココロと言います。よろしくね」
「っ、はい、ユージーンです。ご迷惑をお掛けします」
「いいえ~。話はロベルトさんから聞いているわ。大丈夫よ~」
相変わらず、ニコニコと優しく微笑むココロさんにユージーンの表情が少し和らいだ。
「あら!もしかして、その子が?」
「あ、はい。エンシェントドラゴンのルウです」
「キュ?」
シェナの腕の中でいつのまにか寝てしまっていたルウが目を覚まし、ココロさんを見る。
「まあ!まあ!まあ!!なんて、可愛いの!?はじめまして、ルウちゃん」
ココロさんは体を少し屈め私が抱えているルウに視線の高さを合わせる。
「キュ・・・・」
「うふふ、キュ~?」
「キュ、」
「キュ!」
ルウの鳴き声を真似するココロさんがルウと会話する。
多分、会話出来てないけど、何かが伝わっているの様子。
ココロさんの優しい雰囲気にルウがココロさんに手を伸ばすと、優しい笑顔でココロさんはそっと人差し指を差し出し、指を握らせる。
可愛いやり取りをするココロさんとルウは、なんだか・・・・和む。
「うふふ、あら、ごめんなさい。お客様をお待たせしてしまって。さあ、中にどうぞ」
しばらくルウと触れ合ってご満悦のココロさんはニコニコと梟屋の中へと招く。
「・・・随分と可愛らしい人だな」
「でしょ?」
隣に立っていたユージーンの呟きにシェナは小さく笑いながら短くそう答えた。
「帰っていたか」
後ろから低くて渋い声が聞こえ、振り向くと、梟屋の主人ゼノンさんが立ってっいた。
相変わらず貫禄の威圧感がある佇まいだが、
「ゼノンさん。ただいま帰りました」
「ああ」
シェナと視線が合うと目尻が優しく緩んでいる。
パッと見、分からないけど。
「あら、アナタ。こちら、ロベルトさんから頼まれました、ユージーンさんよ」
「っ、ユージーンです」
「ああ、梟屋の主人のゼノン・クロッカスだ」
ユージーンも背が低い訳では無い。むしろ高身長だ。
それでも、ゼノンさんはユージーンよりも頭ひとつ背が高い。
初老ではあるが、ガッシリとした筋肉質な体。威圧感のある金色の瞳の鋭い眼に、圧倒され、ユージーンの表情がまた固くなる。
「ロベルトから話は聞いている。難儀だったな」
「っ、いいえ、」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
ユージーンとゼノンさんの間の会話が続かない。
「もう、ゼノン。シェナちゃんに渡す物があるんでしょ?」
微妙な空気の沈黙を終わらせたのはゼノンさんの妻のココロさんだった。
「・・・・ああ」
「うふふ、じゃあ、私はユージーンさんをお部屋に案内してきますね」
「ああ・・・・」
「それじゃあ、シェナちゃん、また後でね。
さあ、ユージーンさん、行きましょう」
「、は、はい」
そう言って、ココロさんはユージーンを連れて行った。
ココロさんがユージーンを連れて行ってくれたのはいいが、
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
今度はシェナとゼノンの間に微妙な空気の沈黙が・・・。
「・・・、あの、ゼノンさん、今回の件は本当にご迷惑をお掛けしました」
シェナは、ゼノンに向き合い頭を下げる。
腕の中にルウがいる為、深く頭を下げる事は出来ないけど。
「いや、気にする事は無い。それに、彼を引き取るとロベルトに進言したのは私の方だ。
私も彼を保護した責任があるからな」
「ゼノンさん」
「それよりも、渡す物がある。部屋で待っていなさい」
「え、あ、はい」
「ん」
ゼノンさんはそう言い残し、歩いて行ってしまった。
「・・・・キュ?」
「なんだろうね」
不思議そうにキョトンとするルウに優しく問い掛ける。
自分の部屋に戻り、とりあえず、ベッドの上に掛け布団を折り畳み、ルウを折り畳んだ掛け布団の上に寝かせる。
ルウはなんだか寝心地が悪いのか、ちょっと嫌そうに顔を顰めている。
「んきゅ~」
「気に入らない?でも、ずっと抱っこしている訳にもいかないし、後でルウの寝る所作らないと」
とりあえず、ロベルトから貰った子ドラゴンの生態を綴った本に目を通す。
ドラゴンの飼育はある程度の知識はあるけど、ルウは人龍化して見た目は1歳未満の人間の子供変わらない。
この本にはさすがに人龍化したドラゴンの生態までは載っていなかった。
どうしたものか。
ぐずっているルウをあやしながら説明書と睨めっこしていると、
コンコンコン
「ゼノンだ」
「あ、はい!」
ドアの外からノックとゼノンさんの声が聞こえた。
すぐにドアを開ける。
すると、そこには、何やら大きな物を抱えたゼノンさんが立っていた。
「ゼノンさん、それって」
「その子の寝所だ」
「へ?ルウの、ですか?」
「ああ」
そう言いながらゼノンさんが部屋に入りベッドの隣に持ってきた物を置く。
それは、揺籠だった。
藍色の太い蔓を編み込んで作った籠を三本の柱で吊して支えている、この街ではよくあるタイプの揺籠だ。
籠は丸く屋根が付いており、まるで大きな卵のような形をしている。
揺籠の中を除くと内側に何かキラキラした物が貼り付けられている。
「その子は、ドラゴンの子だと聞いている。
だから、その子の生まれた卵の殻を核に錬成した魔工石と籠蔓の木を加工して作った物だ」
「え、作ってくれたんですか!?」
「必要な物だからな」
「そんな、わざわざ、」
「この子はまだ数日前に卵から孵ったばかり、それも、人龍化をしている。
いきなり環境が変われば、ストレスになり病気にも繋がる。
それを防ぐ為にも寝所はちゃんとしてやったほうがいい」
「あ、」
ゼノンの言葉にシェナは自分の行動の失態に気付かされる。
そうだった。見た目は人間の子供に見えるけど、ルウは歴としたドラゴン。
普通の人間の子供と同じな訳がない。
ましてや、ルウは産まれたばかり。
些細な事でも気を配らないといけない存在なのに。
それなのに、懐いてくれているから大丈夫だとか、人間の子育てくらいに思っていた自分がいた。
いくら、ロベルトさんに頼まれたからと言って、余りにも考えが浅はかだった。
「すみません。私、簡単に考えすぎていました。
ルウの必要な物は後でなんとかなるって、そう思ってて、考えが足りませんでした」
シェナはまだ少しぐずっているルウを抱き上げる。
「ごめんね。ルウ・・・」
「キュ?」
シェナに抱っこされたルウはよく分かっていないのかキョトンとしていた。
そんなシェナに、ゼノンは、
ぽん
「、??」
優しくシェナの頭を撫でた。
「??、ゼノンさん?」
「間違いは誰にでもある。特に、この子の場合はかなり特殊だ。ましてや、君は若い。間違えたり、思い違う事は当たり前だ」
「ゼノンさん、でも、」
「君は、このドラゴンの子を引き取った事を後悔しているかい?」
「いいえ」
「・・・・そうか」
シェナは即答する。
「なら、自分の判断に自信を持ちなさい。
間違えてもいい。迷ってもいい。弱音も吐いていい。
それはとても大切な事だ。
もし、間違えたのなら、私とココロがそれを止めよう。
迷ってしまったのなら、私やココロ、周りの信頼できる大人を頼りなさい。
ただし、一度決めた事を投げ出す事はしてはいけない。簡単に人のせいにはしてはいけない。
そして、自分の言葉に責任を持ちなさい。
曖昧な言葉は、助けにくいものだからな」
「でも、・・・・」
言いかけた言葉にシェナは口をつぐんでしまった。
「・・・・迷惑になると思っているのかい?」
「・・・・っ」
思っていた事を言い当てられ、シェナの目が微かに揺れる。
そんな、シェナにゼノンは小さく微笑む。
「心配しなくていい。これは、ただの年寄りお節介だ。
無理はしなくていい。出来る事をすればいい。もし何かに躓いたらそこから学べばいい。
だから、たまにでいい。甘えてくれれば、ココロも喜ぶ。家内は世話好きだからな」
大きく硬い手がシェナの頭を優しく撫でる。
その手が、暖かくて、少しくすぐったい。
「・・・ゼノンさん、」
「ん?」
「ありがとうございます」
「ああ」
「きゅ?」
顔を少し赤らめ、俯くシェナをルウは不思議そうに見上げる。
「・・・・今日、ムム芋が多く採れた」
「え?」
「・・・・夕食、ココロの手伝いを頼んでもいいか?」
「っ、はい。美味しいモノ作ります」
「ああ」
優しく微笑みながら、ゼノンはシェナの頭から手を退ける。
そして、キョトンとした顔をするルウの頭を優しく撫でる。
と、その時、
トガ、ガタタタ!!
「!?、」
「え?、何の音?」
下の階から何か落ちるような物音が聞こえた。
「私が見てこよう。・・・・シェナは、この子と居てあげなさい」
「え?あ、え?名前、」
「夕食、期待している」
そう言い残し、そそくさと部屋を出て行ったゼノン。
「・・・・名前、ゼノンさんに初めて呼ばれたかも」
そう呟きながらシェナは熱る顔を持て余しつつ、ベッドに座る。
だが、顔が熱っていたのはシェナだけではなかったようだった。
「ゼノンさん、耳、真っ赤になってた」
梟屋に部屋を借りに来た日にココロさんがゼノンさんは可愛いと言っていたけど、なんだかちょっとだけ、分かった気がする。
思わず思い出して口元が緩んだ。
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