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しおりを挟むあの日から太陽が二十四回も繰り返し昇っては沈んだ。
そして、今日はあれが空に昇った二十五回目の日だった。
今日は私の十六歳の誕生日だ。
なのに、寝起きはいつにも増して最悪だった。なんとかベッドから降りて、メアリと身支度をした。
重い足を運んで部屋から出たら、母の笑顔と父の形容しがたい顔が私を迎えた。
「お父様、お母様、おはようございます。私は最後でしょうか? 待たせてしまって、すみません」
「シエラ」
父が顔をしかめ、言葉を詰まらせた。
普段の凛々しく、模範貴族のような佇まいをしている人とは思えないくらい父の視線が彷徨っている。
「シエラ、十六歳の誕生日おめでとう! そして、今日も相変わらず可愛くて美しいわ!」
母がいつも通りの明るい声をあげた。
先ほどのどんよりとしている雰囲気が薄まり、自然と微笑みがこぼれた。
あの日以来、この家にいることが億劫になった。
いつにも増して眉間に皺を作っている父や、静かに怒りを滲みだしている姉。会うたびに暗い顔をしている弟や必要以上に気をかけている使用人たち。
皆の気持ちは、とてもありがたいと思っている。大切にされている、想われていると肌に感じることができた。
だけど、何故か。何故か、そうされる度に喉が鷲掴みされたみたいに息がしづらくなった。
その中で、いつも通り接してくれた母は唯一の救いだった。
「ありがとうございます。お母様もとても綺麗です」
「ふふふ、ありがとう。さすが私の娘よ!」
母は私の手を取り、階段の方に歩き出した。
彼女の足取りに従い僅かに歩けば、後ろから「シエラ」と父の固い声が耳に届いた。
「お前は無理して参加しなくてもいい」
「あなた!」
思ってもみなかった言葉だった。
まさか、あの堅物な父がこんな大事な催しに不参加を許してくれる日が来るとは。
「そんなことは、できるわけがないでしょう!」
「いや、ロディネだって参加していない。だから、シエラもっ」
「お父様」
普段なら絶対やってはいけないが、父の言葉を私の言葉で被せた。
それに対して「貴族の娘らしくないわ!」と叱る、マナーに厳しい母も口を閉ざしている。
姉が参加しないと分かった時の安堵感。
一瞬だけだとしても、あの罪悪感が今でもくっきりと心に刻まれているから。
だけど、その後湧き出たのが。
「ありがとうございます」
参加しない? できるわけがない。
できるはずがない。だって、これは私に残された唯一の価値だもの。
特殊な立場を持つ姉は許されるとしても、私には――。
「シエラ……」
「お父様、私は先に、馬車に行きます」
ぐっと左手で拳を作り、それ以上何も言わず私は階段を降りた。
赤いカーペットの上に足を進めて、外で待機している馬車に向かう。
私をファルク殿下とアクイラ殿下の結婚式が挙げられる神殿に連れていく馬車に向かう。
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