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富くじ 魚屋の松次
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富くじ 魚屋の松次
江戸に多くの神社はあっても、神はいるのであろうか。それが、いたのである。湯島天神の神が 魚屋の松次に幸運を運んできた。
元禄五年卯月。芝七軒町鍵屋長屋から朝早く、魚棒手ぶり松次は、神田の魚市場に仕入れに出かけるところだ。中央の井戸流し場には、左はす向かいの、二八蕎麦屋なみへいの娘お清が洗い物を。寺子屋師匠三之丞は、歯をすすいでいる。
「松次さん早いお出掛けね。まだ寒いから、気を付けてくださいな」
「おう!」
と一声、丸顔で優しい目の松次は、足早に長屋の木戸を抜けて行く。じっと後姿を見つめるお清。またもや三之丞の直感が働く。
「お清さん。松次さんは、いつも元気でいいねえ。それに男前だ」
と三之丞。
「あらいやですよう・・わたしなんか・・」
頬を染める、目鼻立ちの整った器量よしのお清。
「いやいやなかなか・・ちょうど二人は、年頃で似合っておるな」
「女中奉公の私なんか・・松次さんはなんとも思っちゃいませんよ」
「そうかな。松次の目の色から、お清さんに気があるように思えるがなあ」
「いやだあ。師匠こそ、まだお若いのに、誰かいい人がいないんですか」
「それがな・・なかなか・・一人暮らしがすっかり板についてしまったよ」
笑いながら籠の洗い物を胸に抱え、お清は家に戻っていく。
そこへ煮売り屋のおみよがやってくる。
「おみよさん早いねえ。これから、昼餉の仕込みかい」
「いえね。時間のあるうちに、お里さんから、糸刺繍を教わろうかと思ってね。暖簾に太糸刺繍で、店の屋号を入れようかとね」
「屋号・・・なんと・・・・」
「いえ、簡単に、煮売り屋おみよ。ですよう」
笑って、新発田藩浪人、加藤一ノ進のお内儀、お里のところに向かう。
「お里さん。この文字を、太糸で入れる方法は、いろいろあるのかしら」
午後からの仕入れ、煮売り屋の準備を始める前、、おみよが問いかける。
「そうですね。一番早いのは、白粉かしらね、薄く溶いてね、細筆で着物に直接文字を書き、好みの太糸と太針で、針を入れていくことね。洗濯で洗えば白文字は消えますからね。もう少し丁寧な方法は、しっかりした和紙に文字をしっかり書き、針を通します。後は和紙を丁寧に抜くか、洗い落としね」
そばから隣の大工大吉の女房よしのが、
「子供たちに、きれいな糸で、ふさ、つぎお と入れてやったら二人は大喜びでね・・・よほどうれしかったみたい」
「それはよかったですね。よしのさんは器用だから、子供の一重も、ほぐしてまた縫ってやることも、すぐできますよ」
神田の魚市場で、松次は今日は江戸湾のアサリを中心に白魚、貝柱を仕入れると、永代橋を渡って、深川から清澄白河の方向へと向かった。永代の向こう右手に、江戸湾が大きく明るく開けてくる。魚屋は朝早いうちと夕刻が勝負であった。
「あさりーーーあさり。あさりはいらんかねえ! しらうおー 白魚。かいばしらーーーー貝柱。さかなはいらんかねーー 」
松次の声は遠くまでよく届く。
深川本町から清澄にかけて、長屋から籠を持ったおかみさんたちが、たちまち松次を取り囲む。生きのいいのが売りの松次の魚だ。
「今日はこのむき身で深川めしにしょうかねえ」
「貝柱も新鮮なこと! このまま刺身で。亭主は大喜びさね」
昼前にはすっかり手振りの両籠が空になった。今日もいい商いができた。
商売がうまくいって上機嫌の松次は、江戸湾の向こうに大きな廻船が出ていく永代の橋を渡りながら
ーー今日はなにいかいいことがありそうだ。久方ぶりに、湯島の富くじを買って帰ろうかーー
と鼻歌交じりに、神田から東に折れ、湯島天神の境内に入って行く。境内は桜が満開で、出店や屋台の周りは、花見客がごった返していた。奥の社務所の横が、今月末日の富くじ売り場になっていて、まだ肌寒い卯月にもかかわらず、すでにかなりの行列ができていた。手洗い水場の脇に、天秤棒と籠を置くと、行列の後ろに並んだ。
「今年は、桜も見事に咲きましたね。去年は、おお寒で桜もかわいそうでした」
近所の商家の旦那風、角顔で目じりの下がった男が、両手をもみながら松次に話しかける。皆が期待と希望で、文句も言わず行列に並んでいる。
「魚屋さんですか。今年は、ずいぶんと春先から景気がよろしいようですな」
「ご隠居さん。じつは、久しぶりなんですがね。このところ商いも順調で、富を一枚買ってみようかと・・・高いから一枚ですがね」
松次は如才なく老人に言葉を返す。
「さあ、次のかた」
宮司の下働きと思える馬ずらの男が、声をかける。
「ご隠居さん。二枚ですか。それでは二朱頂きましょう。ではこの箱から」
若い宮司が木札の入った大きめの箱から一枚を取り出す。
「へーーーーい。一枚目は竹の四十七番!」
と隠居に木札を渡す。二枚目は、松の九十二番であった。そして松次は一枚500文(今の金で約九千円と当時の一枚は高かった)を差し出した。
「へーーーい。若い方。松の百十番。当たりますように!」
松次は交換所で、木札を、湯島天神の寺印章が押された紙札に換えると、巾着に大事にしまう。桜の花びらが肩に降りかかる中、棒手ぶりを担ぎ、神田から新橋を抜けて芝鍵屋長屋に戻っていった。
それから数日後。松次は今日から数日は、小石川から麻布あたりを売り歩こうと考えていた。月の前半は、上野・神田・日本橋地区、 中ほどは深川・清澄・両国あたり、後半は小石川から麻布周辺の町や長屋や屋敷をめぐることにしていた。地区によって好まれる魚や商いの量も異なる。下町、深川周辺では値の張らない小魚やめざし、浅利が好まれたし、商家の多い日本橋界隈では小鯛、秋刀魚が、小石川、麻布界隈では武家屋敷も多く小肌、アナゴ、白魚など、江戸湾ものが手早くさばけていた。明け六つ前に家を出ると、今日も、井戸端ではお清が洗い物を終わって立ち上がったところであった。
「おはようございます。いつもお早いですね」
整った笑顔でお清が挨拶する。
「お清さんも、朝早くから宵も遅くまで大変だね。おとつあん元気かい」
「少し脚の具合が悪いようで、蕎麦の屋台も、少し早めに上がるようにしてるんですよ・・何とか。お店に出る前に、おとつあんの食事ぐらいはと」
「お清さんも身体には気を付けて。無理しないようにな。何かあったら手伝うからさ」
きれいな口元をほころばせてお清が頭を下げる。
今日の仕入れは、小石川・麻布方向売りということもあって、魚市場、魚辰文治の店からは小肌、アナゴを多めに、そのほかをやや少なめに、天秤棒の前後両籠に仕入れた。松次は常陸・鹿島の出であったが、親類筋が魚辰の文治で、十七の時からこの店で魚卸を七年ほど勤め、二年前の二十四で独立して、棒手振り魚屋を開業していた。 鍵屋長屋の世話や、開業の資金を貸してくれたのも文治であった。
桜も散り、やや暖かくなり始めた小石川で、声掛け売りを始める。
「こはーーーーだ 小肌! 生きのいい小肌! あなごーーアナゴ! しらうおーー白魚! いきのいいさかなーーー魚いらんかーーーーい」
威勢のいい声に誘われ、近所の寺小僧や、武家屋敷の小物や女中が集まりだした。今日も又いい商売ができそうだ。小魚類を除くと、半分程度が残ったのを潮時に、松次は小石川から下って、麻布本町から天現寺橋のたもとに立った。
「あなーーーご アナゴ。生きのいい魚!さかなあああいらんかーーーい!!」
ここでも毘沙門天、天現寺や光林寺の小坊主や寺男寺女、武家屋敷の下働きや女中たちに囲まれ、天秤籠の魚は、一時もするとほとんど空になった。今日もだいぶ稼ぐことができ、ほっとして、三ノ橋をこえ溜池筋にかかった時、道場帰りの三之丞と出会った。
「松次さん。今日の商いはどうでしたか。魚は、すっかり空のようだ」
笑いながら三乃丞が天秤籠を覗く。
「おかげさまで。ほとんど売れちまいましたよ」
松次も笑顔で返す。
「松次さんは、商売が上手なようですから・・一度寺子屋で子供たちに商売の心得やコツを、話してもらいたいものだが」
真顔で言う三之丞に、
「勘弁してくださいな。当たり前のことをやってるだけですからね」
「長屋のおみよさんのところで、今宵いっぱいどうかね」誘う三之丞。
「そういえば、おみよさんのところは、大きな檜材の飯机にして、随分ときれいになっているようですね。食事がてら・・残った魚ですが、土産に持ってまいりましょうかね」
松次も気楽な独身ものだ。酒も嫌いではない。
「それはそれは・・今日はゆっくり飲み明かしましょうかね」
芝の長屋に帰った二人は、すぐその足で煮売り屋おみよの店に入った。
「や。おみよさん。すっかりきれいになりましたね」
「はい。三之丞さんのお友達の飯能河原の半七さんが、木場の帰りに、立派な檜材で、こんなに立派にしていただきました。見違えるほど」
にっこり笑うおみよ。
しっかりした脚のついた檜の机が四台。各机には四人が座れるように、これも小ぶりの腰掛。大きなかまどと、水桶の間にも広い調理机が檜で作られていた。
「まるで・・・料理屋みたいになあああ・・・・・」
赤い丸顔のつね婆が、ほとんど前歯の欠けた口を開けて笑う。すっかり煮売り屋は小料理屋風だ。うまく配置した半七の腕に、三之丞も驚きを隠せない。
「今日はそんなわけで、あまり材料がなくてね。せっかく来ていただいたのに」
「いや。ここに松次さんの残り物だが・・土産物の魚があるさ」
「まあまあこんなに立派な小鯛や白魚が」
おみよが松次に礼を言う。
「これはほんのおしるしだが。きれいになった改装のお祝いに」
三之丞は、懐から懐紙に包んだ祝い金を、おみよの懐に滑り込ませる。楽しい酒宴が始まった。すっかり酒が回ったころ、笑いながら三之丞は松次に問いかける。
「松次さん。向かいのお清さんをどう思うかね。いい子だと思うがね」
「いやああ・・あっしなんか。とてもとても。無理でござんしょう」
「そんなことはないさね。見るところ、お清さんも、あんたが気に入っておるようだが。年恰好といい・・ちょうどいい・・似合いと思うがなあ」
自分のことを棚に上げ、久しぶりに酔いが回った三之丞は、本気で言う。
「そうですよ。松次さんは真面目に商いだし。お清ちゃんも、お店の通い奉公で真面目だし。わたしも・・お似合いだと思いますよ」
おみよも言う。酒で朱くなった男前の松次の顔が、なお一層朱い。まんざらでもないのだ。
卯月末日。松次は麻布での商いを早めに引き上げると、鍵屋長屋に天秤の荷物を下ろし、夕刻に、湯島神社に向かった。末日。酉の刻を合図に、今月の富くじの抽選が行われる。境内は人であふれかえっている。皆期待して暖かい春の陽気の中で、櫓・台上の神主や係を見守る。
毎度のことであるが抽選日は、北町奉行所からも数人の与力、同心が出て、櫓の周りを、十数人の取り方が境内に配置されていた。
酉の刻、太鼓が六つ鳴らされた。抽選人は二人で、裃を身に着け、大声で告げる。
「今月の湯島天神富くじの抽選ーーーーー。まずは五等賞五本からーーー」
一人が木札の入った大箱をしっかり押さえ、一人が上の丸くあいた穴に手を入れ、木札を一枚取り出し宮司に見せる。
「梅の三十八番。にまいめーーーーー竹の二百八十番・・」
こうして五等五本、五十両から 四等四本、百両。 三等三本、二百両。 二二等二本、三百両。一等一本、五百両が最高商品であった。
松次はごった返す人ごみの中央付近で、聞き逃すまいとしていた。
「二等 いちまいめーーーー竹の三百二十一番・・」
松次はこれはもう無理かな・・とあきらめて群衆の後ろに下がろうとした・・・
「にまいめーーーー松の百十番!」
松次の足が止まる。隣の男に・・・
「いま・・いま・・・松の百十番ですよねえ!」
足が震えた。
「そうだよ。どうしたい。あたったのかね」
男の声に茫然とする松次。
悪いことに、その姿を両国のやくざ、松五郎と玉吉に見られていた。
彼らは毎度当選者に目をつけては、金を奪う悪い輩であった。そうした警戒のためにも奉行所から、抽選日には、こうして見張りに来ているわけであった。
松五郎は玉吉に目くばせする。玉吉は気を取り直し、引換所に向かう松次の後をつけ始めた。松次は二十五両の切り餅十二個を、巾着にしっかりと入れ、懐奥にしまう。同心が一人そばから松次に声をかける。
「どこまで帰りなさる。捕り手を、二人ばかりつけましょうか」
「へい。芝の七軒町でございます。それでは、お願いいたしますです」
たいていの当選人は捕り方と帰っていく。つける玉吉は、慎重に距離を置いて後を追う。足早に松次と捕り手二名は、数寄屋橋、新橋から芝に向かっていた。
木戸のところで二人の捕り手に礼を言って、松次は、素早く左井戸の向かいの家に入ろうとして・・三之丞が土瓶を洗っているのを見ると、さっと駆け寄り、耳打ちし手を引いて部屋の中に招き入れた。
「まさかと思いましたが・・富くじで・・二番くじ。三百両が当たっちまいました」
その割には冷静な声で言った。
「おう。それはそれは! 幸運であったな。松次さんの、行いがいいからさ」
「しかしこんな大金、おいとくわけにもいかねえ。困ったな」
「では大家の鍵屋さんに相談して、保管してもらってはどうかな。あすこは人いれだけでなく、大名筋への貸金もあるので、しっかりした蔵と用心棒も、おいているからな」
松次はほっとした様子であった。端正な顔が、不安から笑顔に変わる。
「よければ、今からわたしも同行して、長兵衛殿に頼んでみよう」
事情を知った大家の鍵屋長兵衛は、快諾して預かりの証文を書いてくれた。
「ま、店子の幸運ですからな。保管料を頂くわけにも参りますまい。松次さん入用な時はいつでもおいでなさいな」
十両だけ手元に置くことにした。
「大家さん。まことにありがとうございます。急な大金でどうしたものかと」
「いやいやお前様の行いがいいからだろうさ」
丸顔でつややかな髪と耳たぶの大きな鍵屋長兵衛は、ニコニコしながら店子の幸運を喜んだ。
「親分。あの野郎。芝七軒町の鍵屋長屋に入っていきました。棒手振りの魚屋ですね。若い男と何か相談事で、部屋に入っていきましたんで、とりあえず、けえって参りました」
角ばって眼付きの悪い玉吉が、松五郎に報告だ。でっぷり太って半纏姿の松五郎は、これも長い馬ずらに、右目の横に大きな黒ほくろ。
「隠しちまう前に、今晩、これから脅しをかけようかい。大林の旦那をよんできな。今から一仕事ありますからとな」
一刻後、玉吉は泉州浪人大林助十郎、武州浪人高梨松次郎、それと土地の香具師の元締め、両国の吉蔵のところの若い屈強な男二人を連れてきた。
「これはこれは、大林、高梨の旦那に、吉蔵のところの若い衆。四人もかい」
松五郎が皆を練眼回す。
「三百両富の・・うまい話があるそうじゃないか」と大林。
「まるで・・吉蔵もはハイエナみたいなやつでさあな」と松五郎。
「まあ、お前達だって、どっちもどっちもだろうが」
ごつい髭ずらの高梨が笑う。
それからすぐに六人は、両国から芝に向かって走る。あたりはもう暗い。
木戸が閉まる寸前のところで、六人は入口左手の松次の家に向かう。家には明かりがある。戸を開ける。誰もいない。中へ上がろうとしたとき、長屋の奥から若い娘がこちらにやってくる。松五郎は娘の前にヌウと立つ。目を見張るお清は、今一番奥の厠を使って、松次と入れ違いに向かいの家に戻るところだ。
「おい。娘。ここの魚売りはどこへ行ってるんだ」
人相の悪い男たちが、六人も松次の家に上がり込もうとしている。とっさにお清は
「知りませんです」
と言って、向かいの家に向かおうとした。松五郎の張り手がお清の左頬を打つ。細身のお清が飛んで、家の前の扉に腰を打ち付けて倒れた。
中からなみ平や、音を聞きつけた長屋の者が戸を開ける。
「しょうがねえ。今晩は引き上げだ」
人が出る気配に、六人は引き上げた。
厠から戻った松次は、お清が腰を打って崩れ倒れているのを見た。長屋の者たちも四人、五人が、なみ平の家の前に集まりだす。お清を助け起こす松次。怪我はないようだが、強く腰を打って、うまく歩けないお清だ。
「六人が松次さんの家に上がりこもうとして、どこに行ったと聞くから・・知らないといいました。太った長い顔で、右目に黒いほくろのある男に、殴られました。何か懸命に松次さんを探しているみたいで・・」
「変な奴がつけてきてるとは思っていたが、両国の松五郎の一味だな。ゆるせねえ。こんなことをしやがって。お清さんすまねえ。家に入って、しっかり芯棒をかけておくんなさい」
松次は家から天秤棒を持ち出すと、木戸にむかって走った。松次さんが、仕返しに行って、困ったことになったらと、お清はすぐ裏手の大円寺、法円和尚のもとに走る。三之丞と和尚は庫裏にいた。次第を話す。
「なに、松次は一人で飛び出していったのか。それで。両国の松五郎といったんだな」
和尚と三之丞はすぐに松次の後を追う。
両国橋を越え、見世物小屋のかかる手前に、開けた空き地がある。そこで松次は六人に追いついた。浪人が二人、質の悪いやくざが四人では勝ち目はないが、松次は、先頭の松五郎の前に立ちはだかると、無言で松五郎の両足に天秤棒を打ち付ける。小太りの松五郎は、両ひざを打たれ、前に崩れる。前に玉吉と屈強な男二人。後ろに浪人二人が控えている。
「玉吉。殺すなよ。金のありかをはかせにゃならんからな」と大林。
玉吉は、やや長いドスを抜いて突きかかろうとするが、相手が長い天秤棒で、思うに任せない。松次が一気に足を狙う。右から左に払った天秤棒が、玉吉の左腿を強く打つ。ドスを突きこむ玉吉の腹に、棒の先がめり込む。腹を抱え倒れる玉吉。
吉蔵のところの屈強のやくざが二人、次の左右でドスを構える。
構えもしっかりとしているし、むやみにつきこんでも来ず強敵だ。ひとりが右に回って低く天秤棒を狙う。左側の男が付きこんできた。右に気を取られた松次は態勢を崩す。すかさず二人が同時に襲いかかる。転んだ松次の手から、天秤棒が転がり落ちる。二人が転んだ松次に近づいた。
そのとき、左後ろから長い棒が飛んで、左手の男の膝にあたる。振り向いた先には、法円和尚と三乃丞が追いついていた。
「三之丞。殺すでないぞ!」
和尚の太い声。あっというまに和尚が、やくざ二人を、拾った棒で巧みに打ち据える。急所と膝を打たれ、結局四人は起き上がれない。
「口ほどにもない奴らだ」
と言いながら、高梨が上段から一気に三之丞に斬りかかる。軽く受け流した三之丞は、右に回りながら間合いを図る。高梨が気合もろとも左上段から再び切り込むが、右に体を交わした三之丞の峰打ちが、強烈に腹を直撃する。高梨も立ち上がれない。
大林助十郎は、なかなか手ごわい。間合いをはかり、切り込むと見せて引いた。三之丞もこの間合いでは打ち込めない。右にじりじりと回り、大林が三之丞の隙を探す。と。一気に上段の刀を横構えで、左から払い打つ。大林の頭上に飛んだ三之丞。
左手から、さし棒の卍を外し、大林の左肩に鋭く細い刀がシューと飛び出す。わずかに肩を斬るが届かない。再び今度は右下から左上に切り上げる大林。右に体を開いた三之丞は、大きく空いた大林の左胴に、強烈な峰打ちを叩き込んだ。大林が膝をついて倒れる。
松次がすかさず天秤棒の先の細引きで、倒れた浪人二人の両手を縛り上げた。やくざどもはまだ立てない。
危ないところを松次は救われた。礼を言う松次に、
「いやああ・・向かいのお清さんの機転のおかげですよ。礼はそちらだ」
「そのとおり。お清さんが、すぐにわしの寺に飛んでこなければあぶなかった」
長身大柄で大きな耳口。丸い目の法円和尚も、間に合って安心の面持ちであった。
卯月から如月にかけ、鍵屋長屋とその周辺ではいろいろなことがあった。まず魚売りの松次が大円寺大覚和尚にお清とのことを相談した。一緒に暮らしたいということで、和尚は、蕎麦屋なみ平とお清のもとに向かう。なみ平もお清も異存はなく、大覚和尚が松次の父親代わりとなったのだ。
松次は常陸 鹿島の在に、母おますだけが身内であったので、その後、母を江戸に呼んでお清、なみ平と四人で暮らすことになる。仲人は鍵屋長兵衛が喜んで引き受けてくれた。如月の中旬、大覚寺で松次とお清の婚礼が行われ、長屋のほとんどのものと一緒に、三之丞もこの美男美女の新世帯を心から祝った。
それと同時進行で、鍵屋長兵衛の提案もあって、二人は七軒町表通りに新しい商い店を持つことになる。
鍵屋は三百両の使い道として、数軒先で、呉服商を老夫婦でやっていた越前屋が、店をたたみ、売りに出す機会に買い取り、魚やと蕎麦屋を出店することを、新婚の二人に勧めたわけだ。
店の改装には三之丞と、飯能河原、筏職頭の半七が力を貸していた。木場に収める材木の関係から、良質な杉材や桧材が手に入った。間口奥行きともに余裕のある造りであったから、半七は木場の大工と一緒に、入口左手に桧材の大きな簀の子の魚台を据えた。
まことに見事な大型の簀の子で、江戸前の魚や貝類、乾物が映えるであろう。右手には蕎麦屋。薫る杉の大板六枚で、食事台と座りイスを並べた。店内も杉の薄板がふんだんに使われ、清潔な雰囲気の蕎麦屋が出来上がった。奥にはかまど、流し場、調理台も立派にしつらえられていたし、二階は小さな客間と、夫婦の居間のほか、なみ平と松次の母おますの、小さいが居心地のよさそうな部屋も出来上がった。
如月の十日。いよいよ開店の日がやってきた。店の二階の庇の上には、大覚法円和尚の、力強い見事な筆跡の大看板がかかっていた。
「魚屋松次 蕎麦屋のなみ平」
誠に一枚だが二枚看板であった。
「松次さん。店も新しくなって夢のようだよ。本当にありがとう」
丸顔で目じりの下がった、なみ平は少し若返ったような気もする。
「いやおとつあん、これからも・・母ともどもよろしくお願します」
お清も、新しい母おますも嬉しそうに笑って、魚や蕎麦の準備をしている。
「松次・・と呼んで・・いいんだよな。ところで二八のかけ蕎麦だけでなくな・・松次の烏賊や貝柱、白魚と野菜を刻んで合わせた天ぷらを、蕎麦と一緒に出してみようかと・・どうかね」
となみ平。
「おとつあん。それはよさそうだな。串に刺した天ぷらはおなじみだが。そばに天ぷらか・・あうかもしれねえ・・天ぷら蕎麦か!」
「出汁とつゆが、ちっと難しくなるかもしれねえが、今日早速みんなに食べてもらおうかとな。さあ。いろいろやってみなきゃいけねえ」
と大張り切りだ。
初鰹の季節と、新しい店の生きのいい魚ということもあって、松次の魚屋、は、昼過ぎにはあらかたが売れ、残っているのは宵の祝い客に出す物ぐらいになってしまった。
蕎麦屋のほうも天ぷら蕎麦が珍しいのか、近間の職人などで、昼時は大忙しであった。夕、酉の刻には少し早めに、なみ平は暖簾を下ろした。
戌の刻前。祝い客が店にやってくる。鍵屋からは剣菱のこもかぶり、法円和尚、長屋の三之丞と妹弥生や煮売り屋のおみよ、飾り職時次郎、浪人加藤一之辰とお里他数名が、心ばかりの祝い金を包む。開店祝いの始まりだ。
「さ、和尚様。今日は、存分にお飲みください。松次の父親の役目も、無事にすみましたしなあ」
三之丞は大柄で大きい目鼻の和尚に酒を勧める。
「それにしても・・・この天ぷらと蕎麦はあいますなあ」鍵屋も嬉しそうだ。
「いやああ・・この白魚も烏賊の天ぷらも・・・蕎麦に乗せるとうまい!」
時次郎がガブリと烏賊天揚げを噛み、うまそうに蕎麦をすする。
「貝柱とごぼう、人参の細切りは。なみ平さん。どのように・・」
「いやなにね。麦の粉をうっすらと水に溶き混ぜて、強い火で一気にあげたものでがんすよ」
さらに目じりを下げて笑う。
「うまくできておりますね。始めていただきましたが、おいしいですね」
弥生もお里もおみよも感心している。
「こんなにおいしい蕎麦屋さんが近くじゃ、客を皆うばわれてしまいますね」
「いやおみよさん 近くにうまいものがあったほうが、煮売り屋も一緒に繁盛しますのでね」
と酒の入った朱い丸顔で鍵屋長兵衛が笑う。
「これだけ、天ぷらの種類と魚の造りがあるとな。小ぶりのお品書きを作らにゃいかんかな」
法円和尚が上機嫌で言った。
「あら和尚様いやですよう。うちの煮売り物にも、書いてくださいよおお」
おみよの声に皆大笑いだ。
皐月の気持ち良い風が、通りを抜けて増上寺の方角に吹き抜ける。
完
江戸に多くの神社はあっても、神はいるのであろうか。それが、いたのである。湯島天神の神が 魚屋の松次に幸運を運んできた。
元禄五年卯月。芝七軒町鍵屋長屋から朝早く、魚棒手ぶり松次は、神田の魚市場に仕入れに出かけるところだ。中央の井戸流し場には、左はす向かいの、二八蕎麦屋なみへいの娘お清が洗い物を。寺子屋師匠三之丞は、歯をすすいでいる。
「松次さん早いお出掛けね。まだ寒いから、気を付けてくださいな」
「おう!」
と一声、丸顔で優しい目の松次は、足早に長屋の木戸を抜けて行く。じっと後姿を見つめるお清。またもや三之丞の直感が働く。
「お清さん。松次さんは、いつも元気でいいねえ。それに男前だ」
と三之丞。
「あらいやですよう・・わたしなんか・・」
頬を染める、目鼻立ちの整った器量よしのお清。
「いやいやなかなか・・ちょうど二人は、年頃で似合っておるな」
「女中奉公の私なんか・・松次さんはなんとも思っちゃいませんよ」
「そうかな。松次の目の色から、お清さんに気があるように思えるがなあ」
「いやだあ。師匠こそ、まだお若いのに、誰かいい人がいないんですか」
「それがな・・なかなか・・一人暮らしがすっかり板についてしまったよ」
笑いながら籠の洗い物を胸に抱え、お清は家に戻っていく。
そこへ煮売り屋のおみよがやってくる。
「おみよさん早いねえ。これから、昼餉の仕込みかい」
「いえね。時間のあるうちに、お里さんから、糸刺繍を教わろうかと思ってね。暖簾に太糸刺繍で、店の屋号を入れようかとね」
「屋号・・・なんと・・・・」
「いえ、簡単に、煮売り屋おみよ。ですよう」
笑って、新発田藩浪人、加藤一ノ進のお内儀、お里のところに向かう。
「お里さん。この文字を、太糸で入れる方法は、いろいろあるのかしら」
午後からの仕入れ、煮売り屋の準備を始める前、、おみよが問いかける。
「そうですね。一番早いのは、白粉かしらね、薄く溶いてね、細筆で着物に直接文字を書き、好みの太糸と太針で、針を入れていくことね。洗濯で洗えば白文字は消えますからね。もう少し丁寧な方法は、しっかりした和紙に文字をしっかり書き、針を通します。後は和紙を丁寧に抜くか、洗い落としね」
そばから隣の大工大吉の女房よしのが、
「子供たちに、きれいな糸で、ふさ、つぎお と入れてやったら二人は大喜びでね・・・よほどうれしかったみたい」
「それはよかったですね。よしのさんは器用だから、子供の一重も、ほぐしてまた縫ってやることも、すぐできますよ」
神田の魚市場で、松次は今日は江戸湾のアサリを中心に白魚、貝柱を仕入れると、永代橋を渡って、深川から清澄白河の方向へと向かった。永代の向こう右手に、江戸湾が大きく明るく開けてくる。魚屋は朝早いうちと夕刻が勝負であった。
「あさりーーーあさり。あさりはいらんかねえ! しらうおー 白魚。かいばしらーーーー貝柱。さかなはいらんかねーー 」
松次の声は遠くまでよく届く。
深川本町から清澄にかけて、長屋から籠を持ったおかみさんたちが、たちまち松次を取り囲む。生きのいいのが売りの松次の魚だ。
「今日はこのむき身で深川めしにしょうかねえ」
「貝柱も新鮮なこと! このまま刺身で。亭主は大喜びさね」
昼前にはすっかり手振りの両籠が空になった。今日もいい商いができた。
商売がうまくいって上機嫌の松次は、江戸湾の向こうに大きな廻船が出ていく永代の橋を渡りながら
ーー今日はなにいかいいことがありそうだ。久方ぶりに、湯島の富くじを買って帰ろうかーー
と鼻歌交じりに、神田から東に折れ、湯島天神の境内に入って行く。境内は桜が満開で、出店や屋台の周りは、花見客がごった返していた。奥の社務所の横が、今月末日の富くじ売り場になっていて、まだ肌寒い卯月にもかかわらず、すでにかなりの行列ができていた。手洗い水場の脇に、天秤棒と籠を置くと、行列の後ろに並んだ。
「今年は、桜も見事に咲きましたね。去年は、おお寒で桜もかわいそうでした」
近所の商家の旦那風、角顔で目じりの下がった男が、両手をもみながら松次に話しかける。皆が期待と希望で、文句も言わず行列に並んでいる。
「魚屋さんですか。今年は、ずいぶんと春先から景気がよろしいようですな」
「ご隠居さん。じつは、久しぶりなんですがね。このところ商いも順調で、富を一枚買ってみようかと・・・高いから一枚ですがね」
松次は如才なく老人に言葉を返す。
「さあ、次のかた」
宮司の下働きと思える馬ずらの男が、声をかける。
「ご隠居さん。二枚ですか。それでは二朱頂きましょう。ではこの箱から」
若い宮司が木札の入った大きめの箱から一枚を取り出す。
「へーーーーい。一枚目は竹の四十七番!」
と隠居に木札を渡す。二枚目は、松の九十二番であった。そして松次は一枚500文(今の金で約九千円と当時の一枚は高かった)を差し出した。
「へーーーい。若い方。松の百十番。当たりますように!」
松次は交換所で、木札を、湯島天神の寺印章が押された紙札に換えると、巾着に大事にしまう。桜の花びらが肩に降りかかる中、棒手ぶりを担ぎ、神田から新橋を抜けて芝鍵屋長屋に戻っていった。
それから数日後。松次は今日から数日は、小石川から麻布あたりを売り歩こうと考えていた。月の前半は、上野・神田・日本橋地区、 中ほどは深川・清澄・両国あたり、後半は小石川から麻布周辺の町や長屋や屋敷をめぐることにしていた。地区によって好まれる魚や商いの量も異なる。下町、深川周辺では値の張らない小魚やめざし、浅利が好まれたし、商家の多い日本橋界隈では小鯛、秋刀魚が、小石川、麻布界隈では武家屋敷も多く小肌、アナゴ、白魚など、江戸湾ものが手早くさばけていた。明け六つ前に家を出ると、今日も、井戸端ではお清が洗い物を終わって立ち上がったところであった。
「おはようございます。いつもお早いですね」
整った笑顔でお清が挨拶する。
「お清さんも、朝早くから宵も遅くまで大変だね。おとつあん元気かい」
「少し脚の具合が悪いようで、蕎麦の屋台も、少し早めに上がるようにしてるんですよ・・何とか。お店に出る前に、おとつあんの食事ぐらいはと」
「お清さんも身体には気を付けて。無理しないようにな。何かあったら手伝うからさ」
きれいな口元をほころばせてお清が頭を下げる。
今日の仕入れは、小石川・麻布方向売りということもあって、魚市場、魚辰文治の店からは小肌、アナゴを多めに、そのほかをやや少なめに、天秤棒の前後両籠に仕入れた。松次は常陸・鹿島の出であったが、親類筋が魚辰の文治で、十七の時からこの店で魚卸を七年ほど勤め、二年前の二十四で独立して、棒手振り魚屋を開業していた。 鍵屋長屋の世話や、開業の資金を貸してくれたのも文治であった。
桜も散り、やや暖かくなり始めた小石川で、声掛け売りを始める。
「こはーーーーだ 小肌! 生きのいい小肌! あなごーーアナゴ! しらうおーー白魚! いきのいいさかなーーー魚いらんかーーーーい」
威勢のいい声に誘われ、近所の寺小僧や、武家屋敷の小物や女中が集まりだした。今日も又いい商売ができそうだ。小魚類を除くと、半分程度が残ったのを潮時に、松次は小石川から下って、麻布本町から天現寺橋のたもとに立った。
「あなーーーご アナゴ。生きのいい魚!さかなあああいらんかーーーい!!」
ここでも毘沙門天、天現寺や光林寺の小坊主や寺男寺女、武家屋敷の下働きや女中たちに囲まれ、天秤籠の魚は、一時もするとほとんど空になった。今日もだいぶ稼ぐことができ、ほっとして、三ノ橋をこえ溜池筋にかかった時、道場帰りの三之丞と出会った。
「松次さん。今日の商いはどうでしたか。魚は、すっかり空のようだ」
笑いながら三乃丞が天秤籠を覗く。
「おかげさまで。ほとんど売れちまいましたよ」
松次も笑顔で返す。
「松次さんは、商売が上手なようですから・・一度寺子屋で子供たちに商売の心得やコツを、話してもらいたいものだが」
真顔で言う三之丞に、
「勘弁してくださいな。当たり前のことをやってるだけですからね」
「長屋のおみよさんのところで、今宵いっぱいどうかね」誘う三之丞。
「そういえば、おみよさんのところは、大きな檜材の飯机にして、随分ときれいになっているようですね。食事がてら・・残った魚ですが、土産に持ってまいりましょうかね」
松次も気楽な独身ものだ。酒も嫌いではない。
「それはそれは・・今日はゆっくり飲み明かしましょうかね」
芝の長屋に帰った二人は、すぐその足で煮売り屋おみよの店に入った。
「や。おみよさん。すっかりきれいになりましたね」
「はい。三之丞さんのお友達の飯能河原の半七さんが、木場の帰りに、立派な檜材で、こんなに立派にしていただきました。見違えるほど」
にっこり笑うおみよ。
しっかりした脚のついた檜の机が四台。各机には四人が座れるように、これも小ぶりの腰掛。大きなかまどと、水桶の間にも広い調理机が檜で作られていた。
「まるで・・・料理屋みたいになあああ・・・・・」
赤い丸顔のつね婆が、ほとんど前歯の欠けた口を開けて笑う。すっかり煮売り屋は小料理屋風だ。うまく配置した半七の腕に、三之丞も驚きを隠せない。
「今日はそんなわけで、あまり材料がなくてね。せっかく来ていただいたのに」
「いや。ここに松次さんの残り物だが・・土産物の魚があるさ」
「まあまあこんなに立派な小鯛や白魚が」
おみよが松次に礼を言う。
「これはほんのおしるしだが。きれいになった改装のお祝いに」
三之丞は、懐から懐紙に包んだ祝い金を、おみよの懐に滑り込ませる。楽しい酒宴が始まった。すっかり酒が回ったころ、笑いながら三之丞は松次に問いかける。
「松次さん。向かいのお清さんをどう思うかね。いい子だと思うがね」
「いやああ・・あっしなんか。とてもとても。無理でござんしょう」
「そんなことはないさね。見るところ、お清さんも、あんたが気に入っておるようだが。年恰好といい・・ちょうどいい・・似合いと思うがなあ」
自分のことを棚に上げ、久しぶりに酔いが回った三之丞は、本気で言う。
「そうですよ。松次さんは真面目に商いだし。お清ちゃんも、お店の通い奉公で真面目だし。わたしも・・お似合いだと思いますよ」
おみよも言う。酒で朱くなった男前の松次の顔が、なお一層朱い。まんざらでもないのだ。
卯月末日。松次は麻布での商いを早めに引き上げると、鍵屋長屋に天秤の荷物を下ろし、夕刻に、湯島神社に向かった。末日。酉の刻を合図に、今月の富くじの抽選が行われる。境内は人であふれかえっている。皆期待して暖かい春の陽気の中で、櫓・台上の神主や係を見守る。
毎度のことであるが抽選日は、北町奉行所からも数人の与力、同心が出て、櫓の周りを、十数人の取り方が境内に配置されていた。
酉の刻、太鼓が六つ鳴らされた。抽選人は二人で、裃を身に着け、大声で告げる。
「今月の湯島天神富くじの抽選ーーーーー。まずは五等賞五本からーーー」
一人が木札の入った大箱をしっかり押さえ、一人が上の丸くあいた穴に手を入れ、木札を一枚取り出し宮司に見せる。
「梅の三十八番。にまいめーーーーー竹の二百八十番・・」
こうして五等五本、五十両から 四等四本、百両。 三等三本、二百両。 二二等二本、三百両。一等一本、五百両が最高商品であった。
松次はごった返す人ごみの中央付近で、聞き逃すまいとしていた。
「二等 いちまいめーーーー竹の三百二十一番・・」
松次はこれはもう無理かな・・とあきらめて群衆の後ろに下がろうとした・・・
「にまいめーーーー松の百十番!」
松次の足が止まる。隣の男に・・・
「いま・・いま・・・松の百十番ですよねえ!」
足が震えた。
「そうだよ。どうしたい。あたったのかね」
男の声に茫然とする松次。
悪いことに、その姿を両国のやくざ、松五郎と玉吉に見られていた。
彼らは毎度当選者に目をつけては、金を奪う悪い輩であった。そうした警戒のためにも奉行所から、抽選日には、こうして見張りに来ているわけであった。
松五郎は玉吉に目くばせする。玉吉は気を取り直し、引換所に向かう松次の後をつけ始めた。松次は二十五両の切り餅十二個を、巾着にしっかりと入れ、懐奥にしまう。同心が一人そばから松次に声をかける。
「どこまで帰りなさる。捕り手を、二人ばかりつけましょうか」
「へい。芝の七軒町でございます。それでは、お願いいたしますです」
たいていの当選人は捕り方と帰っていく。つける玉吉は、慎重に距離を置いて後を追う。足早に松次と捕り手二名は、数寄屋橋、新橋から芝に向かっていた。
木戸のところで二人の捕り手に礼を言って、松次は、素早く左井戸の向かいの家に入ろうとして・・三之丞が土瓶を洗っているのを見ると、さっと駆け寄り、耳打ちし手を引いて部屋の中に招き入れた。
「まさかと思いましたが・・富くじで・・二番くじ。三百両が当たっちまいました」
その割には冷静な声で言った。
「おう。それはそれは! 幸運であったな。松次さんの、行いがいいからさ」
「しかしこんな大金、おいとくわけにもいかねえ。困ったな」
「では大家の鍵屋さんに相談して、保管してもらってはどうかな。あすこは人いれだけでなく、大名筋への貸金もあるので、しっかりした蔵と用心棒も、おいているからな」
松次はほっとした様子であった。端正な顔が、不安から笑顔に変わる。
「よければ、今からわたしも同行して、長兵衛殿に頼んでみよう」
事情を知った大家の鍵屋長兵衛は、快諾して預かりの証文を書いてくれた。
「ま、店子の幸運ですからな。保管料を頂くわけにも参りますまい。松次さん入用な時はいつでもおいでなさいな」
十両だけ手元に置くことにした。
「大家さん。まことにありがとうございます。急な大金でどうしたものかと」
「いやいやお前様の行いがいいからだろうさ」
丸顔でつややかな髪と耳たぶの大きな鍵屋長兵衛は、ニコニコしながら店子の幸運を喜んだ。
「親分。あの野郎。芝七軒町の鍵屋長屋に入っていきました。棒手振りの魚屋ですね。若い男と何か相談事で、部屋に入っていきましたんで、とりあえず、けえって参りました」
角ばって眼付きの悪い玉吉が、松五郎に報告だ。でっぷり太って半纏姿の松五郎は、これも長い馬ずらに、右目の横に大きな黒ほくろ。
「隠しちまう前に、今晩、これから脅しをかけようかい。大林の旦那をよんできな。今から一仕事ありますからとな」
一刻後、玉吉は泉州浪人大林助十郎、武州浪人高梨松次郎、それと土地の香具師の元締め、両国の吉蔵のところの若い屈強な男二人を連れてきた。
「これはこれは、大林、高梨の旦那に、吉蔵のところの若い衆。四人もかい」
松五郎が皆を練眼回す。
「三百両富の・・うまい話があるそうじゃないか」と大林。
「まるで・・吉蔵もはハイエナみたいなやつでさあな」と松五郎。
「まあ、お前達だって、どっちもどっちもだろうが」
ごつい髭ずらの高梨が笑う。
それからすぐに六人は、両国から芝に向かって走る。あたりはもう暗い。
木戸が閉まる寸前のところで、六人は入口左手の松次の家に向かう。家には明かりがある。戸を開ける。誰もいない。中へ上がろうとしたとき、長屋の奥から若い娘がこちらにやってくる。松五郎は娘の前にヌウと立つ。目を見張るお清は、今一番奥の厠を使って、松次と入れ違いに向かいの家に戻るところだ。
「おい。娘。ここの魚売りはどこへ行ってるんだ」
人相の悪い男たちが、六人も松次の家に上がり込もうとしている。とっさにお清は
「知りませんです」
と言って、向かいの家に向かおうとした。松五郎の張り手がお清の左頬を打つ。細身のお清が飛んで、家の前の扉に腰を打ち付けて倒れた。
中からなみ平や、音を聞きつけた長屋の者が戸を開ける。
「しょうがねえ。今晩は引き上げだ」
人が出る気配に、六人は引き上げた。
厠から戻った松次は、お清が腰を打って崩れ倒れているのを見た。長屋の者たちも四人、五人が、なみ平の家の前に集まりだす。お清を助け起こす松次。怪我はないようだが、強く腰を打って、うまく歩けないお清だ。
「六人が松次さんの家に上がりこもうとして、どこに行ったと聞くから・・知らないといいました。太った長い顔で、右目に黒いほくろのある男に、殴られました。何か懸命に松次さんを探しているみたいで・・」
「変な奴がつけてきてるとは思っていたが、両国の松五郎の一味だな。ゆるせねえ。こんなことをしやがって。お清さんすまねえ。家に入って、しっかり芯棒をかけておくんなさい」
松次は家から天秤棒を持ち出すと、木戸にむかって走った。松次さんが、仕返しに行って、困ったことになったらと、お清はすぐ裏手の大円寺、法円和尚のもとに走る。三之丞と和尚は庫裏にいた。次第を話す。
「なに、松次は一人で飛び出していったのか。それで。両国の松五郎といったんだな」
和尚と三之丞はすぐに松次の後を追う。
両国橋を越え、見世物小屋のかかる手前に、開けた空き地がある。そこで松次は六人に追いついた。浪人が二人、質の悪いやくざが四人では勝ち目はないが、松次は、先頭の松五郎の前に立ちはだかると、無言で松五郎の両足に天秤棒を打ち付ける。小太りの松五郎は、両ひざを打たれ、前に崩れる。前に玉吉と屈強な男二人。後ろに浪人二人が控えている。
「玉吉。殺すなよ。金のありかをはかせにゃならんからな」と大林。
玉吉は、やや長いドスを抜いて突きかかろうとするが、相手が長い天秤棒で、思うに任せない。松次が一気に足を狙う。右から左に払った天秤棒が、玉吉の左腿を強く打つ。ドスを突きこむ玉吉の腹に、棒の先がめり込む。腹を抱え倒れる玉吉。
吉蔵のところの屈強のやくざが二人、次の左右でドスを構える。
構えもしっかりとしているし、むやみにつきこんでも来ず強敵だ。ひとりが右に回って低く天秤棒を狙う。左側の男が付きこんできた。右に気を取られた松次は態勢を崩す。すかさず二人が同時に襲いかかる。転んだ松次の手から、天秤棒が転がり落ちる。二人が転んだ松次に近づいた。
そのとき、左後ろから長い棒が飛んで、左手の男の膝にあたる。振り向いた先には、法円和尚と三乃丞が追いついていた。
「三之丞。殺すでないぞ!」
和尚の太い声。あっというまに和尚が、やくざ二人を、拾った棒で巧みに打ち据える。急所と膝を打たれ、結局四人は起き上がれない。
「口ほどにもない奴らだ」
と言いながら、高梨が上段から一気に三之丞に斬りかかる。軽く受け流した三之丞は、右に回りながら間合いを図る。高梨が気合もろとも左上段から再び切り込むが、右に体を交わした三之丞の峰打ちが、強烈に腹を直撃する。高梨も立ち上がれない。
大林助十郎は、なかなか手ごわい。間合いをはかり、切り込むと見せて引いた。三之丞もこの間合いでは打ち込めない。右にじりじりと回り、大林が三之丞の隙を探す。と。一気に上段の刀を横構えで、左から払い打つ。大林の頭上に飛んだ三之丞。
左手から、さし棒の卍を外し、大林の左肩に鋭く細い刀がシューと飛び出す。わずかに肩を斬るが届かない。再び今度は右下から左上に切り上げる大林。右に体を開いた三之丞は、大きく空いた大林の左胴に、強烈な峰打ちを叩き込んだ。大林が膝をついて倒れる。
松次がすかさず天秤棒の先の細引きで、倒れた浪人二人の両手を縛り上げた。やくざどもはまだ立てない。
危ないところを松次は救われた。礼を言う松次に、
「いやああ・・向かいのお清さんの機転のおかげですよ。礼はそちらだ」
「そのとおり。お清さんが、すぐにわしの寺に飛んでこなければあぶなかった」
長身大柄で大きな耳口。丸い目の法円和尚も、間に合って安心の面持ちであった。
卯月から如月にかけ、鍵屋長屋とその周辺ではいろいろなことがあった。まず魚売りの松次が大円寺大覚和尚にお清とのことを相談した。一緒に暮らしたいということで、和尚は、蕎麦屋なみ平とお清のもとに向かう。なみ平もお清も異存はなく、大覚和尚が松次の父親代わりとなったのだ。
松次は常陸 鹿島の在に、母おますだけが身内であったので、その後、母を江戸に呼んでお清、なみ平と四人で暮らすことになる。仲人は鍵屋長兵衛が喜んで引き受けてくれた。如月の中旬、大覚寺で松次とお清の婚礼が行われ、長屋のほとんどのものと一緒に、三之丞もこの美男美女の新世帯を心から祝った。
それと同時進行で、鍵屋長兵衛の提案もあって、二人は七軒町表通りに新しい商い店を持つことになる。
鍵屋は三百両の使い道として、数軒先で、呉服商を老夫婦でやっていた越前屋が、店をたたみ、売りに出す機会に買い取り、魚やと蕎麦屋を出店することを、新婚の二人に勧めたわけだ。
店の改装には三之丞と、飯能河原、筏職頭の半七が力を貸していた。木場に収める材木の関係から、良質な杉材や桧材が手に入った。間口奥行きともに余裕のある造りであったから、半七は木場の大工と一緒に、入口左手に桧材の大きな簀の子の魚台を据えた。
まことに見事な大型の簀の子で、江戸前の魚や貝類、乾物が映えるであろう。右手には蕎麦屋。薫る杉の大板六枚で、食事台と座りイスを並べた。店内も杉の薄板がふんだんに使われ、清潔な雰囲気の蕎麦屋が出来上がった。奥にはかまど、流し場、調理台も立派にしつらえられていたし、二階は小さな客間と、夫婦の居間のほか、なみ平と松次の母おますの、小さいが居心地のよさそうな部屋も出来上がった。
如月の十日。いよいよ開店の日がやってきた。店の二階の庇の上には、大覚法円和尚の、力強い見事な筆跡の大看板がかかっていた。
「魚屋松次 蕎麦屋のなみ平」
誠に一枚だが二枚看板であった。
「松次さん。店も新しくなって夢のようだよ。本当にありがとう」
丸顔で目じりの下がった、なみ平は少し若返ったような気もする。
「いやおとつあん、これからも・・母ともどもよろしくお願します」
お清も、新しい母おますも嬉しそうに笑って、魚や蕎麦の準備をしている。
「松次・・と呼んで・・いいんだよな。ところで二八のかけ蕎麦だけでなくな・・松次の烏賊や貝柱、白魚と野菜を刻んで合わせた天ぷらを、蕎麦と一緒に出してみようかと・・どうかね」
となみ平。
「おとつあん。それはよさそうだな。串に刺した天ぷらはおなじみだが。そばに天ぷらか・・あうかもしれねえ・・天ぷら蕎麦か!」
「出汁とつゆが、ちっと難しくなるかもしれねえが、今日早速みんなに食べてもらおうかとな。さあ。いろいろやってみなきゃいけねえ」
と大張り切りだ。
初鰹の季節と、新しい店の生きのいい魚ということもあって、松次の魚屋、は、昼過ぎにはあらかたが売れ、残っているのは宵の祝い客に出す物ぐらいになってしまった。
蕎麦屋のほうも天ぷら蕎麦が珍しいのか、近間の職人などで、昼時は大忙しであった。夕、酉の刻には少し早めに、なみ平は暖簾を下ろした。
戌の刻前。祝い客が店にやってくる。鍵屋からは剣菱のこもかぶり、法円和尚、長屋の三之丞と妹弥生や煮売り屋のおみよ、飾り職時次郎、浪人加藤一之辰とお里他数名が、心ばかりの祝い金を包む。開店祝いの始まりだ。
「さ、和尚様。今日は、存分にお飲みください。松次の父親の役目も、無事にすみましたしなあ」
三之丞は大柄で大きい目鼻の和尚に酒を勧める。
「それにしても・・・この天ぷらと蕎麦はあいますなあ」鍵屋も嬉しそうだ。
「いやああ・・この白魚も烏賊の天ぷらも・・・蕎麦に乗せるとうまい!」
時次郎がガブリと烏賊天揚げを噛み、うまそうに蕎麦をすする。
「貝柱とごぼう、人参の細切りは。なみ平さん。どのように・・」
「いやなにね。麦の粉をうっすらと水に溶き混ぜて、強い火で一気にあげたものでがんすよ」
さらに目じりを下げて笑う。
「うまくできておりますね。始めていただきましたが、おいしいですね」
弥生もお里もおみよも感心している。
「こんなにおいしい蕎麦屋さんが近くじゃ、客を皆うばわれてしまいますね」
「いやおみよさん 近くにうまいものがあったほうが、煮売り屋も一緒に繁盛しますのでね」
と酒の入った朱い丸顔で鍵屋長兵衛が笑う。
「これだけ、天ぷらの種類と魚の造りがあるとな。小ぶりのお品書きを作らにゃいかんかな」
法円和尚が上機嫌で言った。
「あら和尚様いやですよう。うちの煮売り物にも、書いてくださいよおお」
おみよの声に皆大笑いだ。
皐月の気持ち良い風が、通りを抜けて増上寺の方角に吹き抜ける。
完
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