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第二章 商業大国オスヴィン

嘘つき

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いきなり目の前に現れた音宮に驚きながらも、エルフと妖精の2人は反射的に後ろへ飛び、音宮と距離をとっていた。

「貴様…いつから気付いていた!」

さあて、なんと答えるのが正解か…穏便に済ませるためには相手のプライドを刺激しないのが一番だ。見たところ、このエルフはかなり自尊心が高そうだ。最初から気づいていたなどと本当の事を言えばプライドを傷つけられ、なにをしてくるかわかったもんじゃない。出来る限り下手に出て、偶々気づいた程にしなければ。

「食料を探そうとしていたら偶然、物音がしたから気になって見に来たら君たちが居ただけさ。」

「………そうか、気付かれてた訳ではないのか。」

監視していた事がバレていないと思いほっとするエルフだったが横に居た妖精が突如音宮を指さした。

なんだ、こいつ。いきなり失礼な奴だな。

突如指を刺されたことに少しムッとする音宮だったが、妖精が放った一言に驚愕した。

「この人、嘘ついてます。」

ーー!!

このチビ、なんでわかった。スキルかなにかか?それとも、妖精には人の心を読む力が備わっていたりするものなのか?わからないが、ここで俺が引いてしまってはいけない。一度ついた嘘は最後まで貫き通すものだ。

「なんのことかな?」

「私たちのこと、本当はいつから気付いてたんですか?」

なるほど…この質問から察するに、こいつには嘘かどうかを判断する力はあるが、心まで読み取れる訳ではなさそうだ。だとすると、まだやりようはある。

「本当に偶然だよ、偶然。」

嘘は言ってない。俺が仙術の修行をしている最中に偶然、お前らが引っかかっただけだ。俺は意図してこの2人を探していないから問題ない筈だ。

「あれ?今度は嘘じゃない…だったらさっきのは…」

「シルの勘違いだったんじゃないのか?スキルの力もそこまで便利な物じゃないだろう。」

「そうだけど…」

「悪かったな。私たちはこの森に住んでるんだ。人間はあまり近付かないから珍しくてな。悪気はなかったんだ。この森を出たいならあの道を通るといい。そしたら外に出られる。」

エルフはそう言いながら、先に進む道ではなく、コルケーマへと戻ってしまう方の道を指さしていた。

なるほどね。そういう設定か…このエルフ、感情的な奴だと思っていたが思ったより冷静だな。この2人はあくまでもクロエの知り合いでもなければ、この森から出る方法もそっちしか知らないと。コルケーマへと戻ってからクロエを探しに行くとなるとかなりの遠回りをしなければいけなくなる。なんせ、コルケーマは港町だ。周囲は海に囲まれており、通れる道があまりない。安全を考慮しないのであれば海を渡るなりなにもない草原を一心不乱に進むなり手段はあるが、それはめんどくさい。こいつらの目的は時間稼ぎ。俺をこの場に留まらせる、もしくは遠回りをさえクロエの行先から遠ざける事が狙い…だったらこいつらに乗ってみるのもありか。

「ありがとう、助かったよ。なんせ一週間くらい迷っちゃってどうしようって思ってたところだから。本当にありがとう。」

音宮はコルケーマへと戻る道を歩き出した。

「あの男、本当に迷子になってたって言ってたぞ。」

「そう…みたいですね。一応森を出るまで確認しましょうか。森を出たのを確認したら私達もクロエさんを追いましょう。」

「そうだな。約束は守ったわけだし、私たちは来るなと言われてないからな。」

まだ、追ってくるか。このまま俺が森を抜けるまで監視を続けるつもりか?別にクロエが見てるわけじゃないんだから適当にやればいいのに…律儀な奴らだな。仕方ない。付き合ってやるか。

音宮はそのまま歩き続け、とうとう森を抜けだした。

漸く監視がなくなった。おそらく、あの森から出る気はないといったところか。とりあえず、適当なところに身を隠そう。あいつらが動き出すはずだ。

そのまま、感知を続けていると、とうとう2人が動き出した。

掛かったな。奴らを追えば、必ずあの森を抜けるルートがわかる筈だ。なんなら、そのままクロエの元まで案内してもらおう。それがいいな。自分で探し出すのは面倒だ。
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