上 下
21 / 68
ドニー村

王国騎士団長

しおりを挟む
民家へ突入したセルジールは中を探していた。

いない…そんな馬鹿な事があるか。
事前に確認もした。誰かが必ずこの家の中にいたんだ。そしてその正体はおそらく音宮奏と安藤桜だ。一体どこに隠れ…まさか!!

セルジールは複合スキル『空間認識』を発動する。
範囲を徐々に広げていき、一番近くにいる人間を見つける事に全神経を注ぐ。

何処だ…何処に逃げた。…見つけた!転々と移動を繰り返しているな。そこまでの距離を飛べるわけではないが、その分インターバルは短い様だ。間に合うか…

セルジールは白馬に乗り、2人の魔力を感知した方向へと走り出す。

彼らの居場所を捉えるには、常に『空間認識』を使い続ける必要がある。急がねば。
このスキルはそこそこ魔力を消費する。見つけた時に戦えないでは本末転倒だ。

「急ぐぞ、シャルル。頼めるか?」

愛馬であるシャルルがヒヒーンと鳴き声をあげると同時に、駆けるスピードが上がった。

◇◇◇◇◇◇◇◇

2人は平地の崖の上へと来ていた。
スキルが視認できる範囲という条件なので最大活用するために、高所に向かう事が多いのだ。

「ハーベスティアが向こうだから…あの山を越えなきゃいけないね。
うーん。此処からだと微妙にしか見えないけど…村が近くにありそうかな?」

「流石に山越えは準備してから行きたいからね。地図上にも村は載ってるし、大丈夫じゃないかな。村の名前はデルトナか。じゃあ、次はそこに行こう。」

ドルトナ目指して出発しようとしたその時、音宮は遠くから何か音が聞こえた。

なんだ…何かが近づいて来ている気が…

「音宮くん!ドニー村の方角から馬に乗った人が猛スピードで近づいて来てる!
たぶん、騎士団長って言ってた人だと思う。」

まさか、もう追って来るとは…だが一人か。
逆に今がチャンスかもしれない。
此処で騎士団長をやっておけば、王国も下手に追手を寄越しては来ないだろう。

「安藤さん、手だけはずっと繋いでて。
いつでも逃げれる様に。ちょっとだけ戦う必要があるかも。」

崖下へとセルジールが辿り着く。

「音宮奏だな。騎士団長のセルジール・スクライドだ。大人しく投降すれば危害は加えない。抵抗するというのであればそれなりに怪我は覚悟して貰う。」

「騎士団って奴はみんな自信に溢れた人ばかりなのか?今朝同じ様なセリフを言ってかかってきた奴がいたが、そいつは無様に負けてしまったが…お前は同じ結果にならないと良いな。」

「フェルトも本来であれば貴様に負ける事はなかったのだ。貴様の能力さえわかっていれば…」

「驚いた!騎士団長ともあろう者がまさかたらればの話をするか…予想以上に無能なんだな。たらればなんてのは意味のない妄想だろう。結果を受け入れられない弱者の逃げ道だ。上に立つものは常に結果だけに目を向けなければいけない。…お前の器の底が知れるよ。」

「貴様はどうやら、人の神経を逆撫でするのが上手いと見える。いいだろう。乗ってやる。だがその前に一つ聞かせろ。ドニー村の住人が一人もいなかったが、これをやったのはお前たちか?」

「違うといえば信じるのか?
それを調べるのがお前の仕事だろうが。
人に答えを求めるなよ。みっともない。」

「それもそうだな…貴様を捕らえてゆっくり調べる事にしようか。」

2人の戦いが今始まった。

「地の利を理解しているか?
上を陣取るっていうのは思っているよりも重要なんだぞ。」

近くにあった大岩を手当たり次第セルジールの頭上に転移させていく。
数は10個と言ったところか…

「知っているとも…だが、それはあくまで同じくらいの戦力ならの話だろう。
貴様は知っているか?スキルを持つもの同士の戦い方というものを!」

セルジールの剣の光が集まる。
剣を横凪に振り抜くと、光の斬撃が飛び頭上に大岩を全て粉々に砕いた。

「スキルを持つ者同士の戦いで必要なのは相手のスキルを如何に早く看破するかの洞察力だ。スキルさえわかって仕舞えば対策はいくらでも出来るからな。貴様は洞察力があるため、一見厄介な相手に思えるが決定的に足りない部分がある。対応力だ。
お前たちが私から逃げ切る事が出来ていない時点で確信した。…魔力をコントロール出来ていないな?まあ、なにも知らないのだろうから無理もない。魔力を使いこなせなければ、如何に相手のスキルを見破ろうとも、対応出来る力がない。今の貴様は正にそれだろう。」

瞬きをした瞬間、セルジールの姿が消えた。

ーーーまずい!

音宮は瞬時に転移を発動し、遠く離れた場所へと移動した。

「ほう…よく私が背後にいるとわかったな。
…だが!」

またしてもセルジールの姿が消える。
まだインターバルの3秒経っていない。
くそ!

振り返り一か八か防御を試みるがそこにセルジールの姿はなかった。

「背後に回るだけが戦術ではない」

ーーー前か!

腹部に衝撃が走る。
咄嗟に安藤の手は離したので彼女に被害はないが、セルジールに捕まってしまった。

ーークソ!ダメだ。
フェルト戦での傷が痛む。
しかも安藤は奴に捕まってしまっている。
状況は最悪だった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

udonlevel2
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...