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2年生
卒業式
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セオリアスは何も言わず、静かに部屋から出て行った。
(終わったな……)
僕は膝から脱力して、しばらく滲んだ地面を眺めていた。
この日から僕とセオリアスとの距離はどんどんと離れていき、もはや廊下ですれ違っても挨拶すらしなくなった。
長い長い1ヶ月が終わり、今日は卒業式だった。
卒業式は、2年生は強制的に参加で、1年生は任意で参加できる。
今年はフィオーネが卒業してしまうので、1年生全員が参加しており、広すぎる式典ホールは人で埋め尽くされていた。
「ひぐっひぐっ……フィオーネさまぁっ……」
僕の右隣りの生徒が嗚咽を漏らす。
式典の並びは入学式のときの並びと同じなので、僕の左隣りにはグランがいた。
「それにしてもすごいな、フィオーネマジックは」
グランがぐるりと会場を見まわす。
「この場で泣いてない生徒、1割もいないんじゃないか?」
まだ式は始まっていないというのに、嗚咽の大合唱は始まっていた。
フィオーネは学園代表生徒として、とても模範的な人間だった。
生徒だけでなく教師からも絶大な信頼を得ていたし、過激派ガチ恋とまではいかなくとも、学園のほとんどの生徒から尊敬されていたのだ。
フィオーネは、バーバリア学園という小さな国の王としてたしかに君臨していた。
「……」
「お、なんだマリス。お前も寂しいのか?」
グランがからかい口調で言った。今この空間でにやけた顔をしているのはおそらくグランだけだろう。
「いや寂しくはないよ。ただ、フィオーネ様ってすごい人だったんだなって思ってさ。そう言うグランは寂しくないの?」
僕も負けじと言い返すと、グランはふっと表情を和らげた。
「そりゃ、俺は寂しいよ。城ではなかなか会えないからな」
グランは寂しげに前を向いた。
グランとフィオーネの間には、兄弟としての絆があるようだった。
式が始まり、卒業生が入場する。
全員がホールに入り終わると、フィオーネが壇上へと立った。
フィオーネが卒業生代表の言葉を述べる。フィオーネは最後まで笑顔だった。
「フィオ様、ご卒業おめでとうございます」
3年生が使っていた寮に初めてきた。
フィオーネの部屋はほとんど片付いていた。4月からは新入生がこの部屋を使うのだ。
僕はフィオーネに、事前に用意していた花束を渡した。
「マリスありがとう。これから君の顔を見れなくなる日々が始まるのは寂しいな」
「王宮のパーティーでまたすぐ会えますよ」
フィオーネがさらりと僕の髪を撫でた。
「マリス、あと1年頑張れよ」
「はい。フィオ様もお仕事頑張ってください」
「あぁ。それでは、俺は先生に挨拶に行ってくるよ」
フィオーネはそう言い、僕の頭にキスを落とすと部屋から出ていった。
「……」
僕も自分の部屋へと戻ることにした。
(終わったな……)
僕は膝から脱力して、しばらく滲んだ地面を眺めていた。
この日から僕とセオリアスとの距離はどんどんと離れていき、もはや廊下ですれ違っても挨拶すらしなくなった。
長い長い1ヶ月が終わり、今日は卒業式だった。
卒業式は、2年生は強制的に参加で、1年生は任意で参加できる。
今年はフィオーネが卒業してしまうので、1年生全員が参加しており、広すぎる式典ホールは人で埋め尽くされていた。
「ひぐっひぐっ……フィオーネさまぁっ……」
僕の右隣りの生徒が嗚咽を漏らす。
式典の並びは入学式のときの並びと同じなので、僕の左隣りにはグランがいた。
「それにしてもすごいな、フィオーネマジックは」
グランがぐるりと会場を見まわす。
「この場で泣いてない生徒、1割もいないんじゃないか?」
まだ式は始まっていないというのに、嗚咽の大合唱は始まっていた。
フィオーネは学園代表生徒として、とても模範的な人間だった。
生徒だけでなく教師からも絶大な信頼を得ていたし、過激派ガチ恋とまではいかなくとも、学園のほとんどの生徒から尊敬されていたのだ。
フィオーネは、バーバリア学園という小さな国の王としてたしかに君臨していた。
「……」
「お、なんだマリス。お前も寂しいのか?」
グランがからかい口調で言った。今この空間でにやけた顔をしているのはおそらくグランだけだろう。
「いや寂しくはないよ。ただ、フィオーネ様ってすごい人だったんだなって思ってさ。そう言うグランは寂しくないの?」
僕も負けじと言い返すと、グランはふっと表情を和らげた。
「そりゃ、俺は寂しいよ。城ではなかなか会えないからな」
グランは寂しげに前を向いた。
グランとフィオーネの間には、兄弟としての絆があるようだった。
式が始まり、卒業生が入場する。
全員がホールに入り終わると、フィオーネが壇上へと立った。
フィオーネが卒業生代表の言葉を述べる。フィオーネは最後まで笑顔だった。
「フィオ様、ご卒業おめでとうございます」
3年生が使っていた寮に初めてきた。
フィオーネの部屋はほとんど片付いていた。4月からは新入生がこの部屋を使うのだ。
僕はフィオーネに、事前に用意していた花束を渡した。
「マリスありがとう。これから君の顔を見れなくなる日々が始まるのは寂しいな」
「王宮のパーティーでまたすぐ会えますよ」
フィオーネがさらりと僕の髪を撫でた。
「マリス、あと1年頑張れよ」
「はい。フィオ様もお仕事頑張ってください」
「あぁ。それでは、俺は先生に挨拶に行ってくるよ」
フィオーネはそう言い、僕の頭にキスを落とすと部屋から出ていった。
「……」
僕も自分の部屋へと戻ることにした。
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