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教師と生徒
しおりを挟む「ん…?………えっ」
「…あ、起きた」
目を開けると、向かいの壁にもたれかかっている煌の姿。
「煌ちゃん!?なんで…!」
「達也、授業サボるなって言ったよな?」
「え、え…ちょ、待って、マジでなんでいんの!」
「こっちに入っていく生徒を見かけたって用務員さんが。お前、ここ立ち入り禁止って分かってるよな?」
「…立ち入り禁止なのは屋上だけで、俺が今いるのは屋上に続くドアの前でしょ」
「屁理屈を聞いてるんじゃない。どっちにしろ、授業サボったんだから後で反省文持ってくるように」
「…やだ」
寝る前の、智樹の言葉がぐるぐると頭を回る。
「はぁ?」
「ていうか、智樹は?」
「…アイツなら、俺が戻らせた。後で反省文持ってくるように言ってな」
「…あっそ」
「…なに拗ねてんだよ?」
「別に、なにも拗ねてませんー」
「拗ねてるだろ」
「だから拗ねてないってば!」
「…はー、面倒くせ。本当、お前なんなの?」
「煌ちゃんこそなんだよ!」
「あ?」
「こう…俺が女子と話しててもなにも言わないし…本当に俺のこと好きなの?」
「…俺から好きって言ったことあったっけ?」
「はぁ!?」
「別に、俺は教師としてお前になにか言うつもりはないけどな。そうやって、嫉妬して欲しいとかなら他を当たれ」
「ちょ、待ってよ…俺ら、付き合ってるんだよね?」
「……」
「煌ちゃん、答えてってば」
「…俺は教師で、お前は生徒だろ。学校では先生と呼べって言ってるだろ」
「そういうことを聞いてるんじゃなくてっ…!てか、じゃあなんで好きでもないのに…」
「…お前が言ったんだろ?響也の代わりでもいいって」
「また兄さんかよ…!」
「……」
「…もーいい、帰る」
「…反省文、忘れんなよ」
「うるさいな…」
付き合ってからも、やっぱり変わってない。煌が求めているのは兄の響也ばかりで、その面影を俺に映している。
(俺が高校生だから?ガキだからか…?)
付き合う時は、初めは兄さんの代わりでもいいって思った。兄さんと煌が二人で過ごした十年の月日に対向するのは容易ではないと分かっていたからだ。
「…いつまでもガキ扱いすんなってんだよ、バーカ…」
教師と生徒。近くて、そばにいるのにこんなに遠くて辛い。
「…クソっ…!」
きっと、いつまで経っても煌から見て、俺はガキのままだろう。高校を卒業しても、大学を卒業しても、社会人になっても。きっと、兄さんと煌が過ごした十年の月日に抗うことは出来ない。
(最悪の気分。寝起きだっていうのに…)
本当に、最悪だ。
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