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37,まさかの経験済み。
しおりを挟む一週間後。悲痛な顔で再度レイの警備につくかと思われたローレンは涼しい顔をして、逆にロイスは悲痛な顔で王妃宮へとやって来た。
「人払いを…」
「え、いいのですか?ローレンが…」
ちらりとローレンを見ると、冷ややかな目でロイスを見下ろしていた。まさか落とせなかったのか。
(俺が弟じゃなかったら、こんな格好いい人に迫られたらイチコロだと思うけど…)
「…ローレン、外に出てて」
「畏まりました。何かあればお呼びください」
「あ、うん…」
一体どうしたというのだろう。ローレンが出ていって二人になった部屋で、ロイスは重々しく口を開いた。
「…年上の余裕…」
「え?」
「年上の余裕を見せつけられた…」
「…えー…と…?」
意味が分からない。深く聞いていいのかも分からないので、どうしようかと思考を巡らせる。
「一週間、ローレンが公爵邸に泊まったとお聞きしましたが…」
「…平然としていたんだ…」
「はい?」
「私が抱いた女は皆、骨抜きになったのに……」
「はぁ」
何が言いたいのかよく分からない。
「彼は、アルファのはずなんだけど…」
「そうですね、ローレンはアルファで……どうしましたか?」
「初めてじゃなかったんだ…」
「は?」
「彼は以前にも他の誰かと寝たことがあると……」
思考がフリーズした。どういうことだ?ローレンが?どうして?いつの間に?
「どれだけ抱き潰しても、余裕の笑みで、私を子供だと…」
「深く聞きたいような、聞きたくないような…」
「……」
見たことがないほど落ち込んでいる兄に、どんな言葉をかけていいものか。
「…えっと……そうだ、ロイス兄様!良かったら一緒にアルバートに会ってくれませんか?」
「王子に?私が会ってもいいのか?」
「もちろん!だって兄様はアルバートの叔父に当たる方ですから…会って欲しいです」
「ーーそうだ、レイ」
「はい?」
「陛下に、お話していないのか?」
「何をです?」
「お前が我が公爵家の次男だということだ」
ドクンと心臓が鳴る。それを考える度に、死んだーー殺された母の姿が脳裏に蘇る。
「…俺は今も昔も、街で生まれた、捨て子です。…名前を名乗ることは永遠にありません」
「どうしてだ?」
「今更その事を明かす必要もないでしょう?それに…俺は捨てられたとは思っていません。自らアグシェルトを捨てたつもりですから」
「そう、か。…けれど、これだけは覚えておいてくれ。私はいつだってレイの味方だから、困ったらいつでも私の名前を出せばいい。今更になってしまったが、大切な弟に少しでも兄らしくしたいんだ」
「ありがとうございます。その気持ちだけで、本当に嬉しいんです」
そうして気にかけてくれたことだけで十分。
そんなことよりも、気になるのはローレンのことだ。ロイス曰く『テクニックが凄かった』らしいが。
…ローレンに教えを乞ってみようかな。
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