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5,幸せの道を踏み外したかも。

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 エルヴィスが旅に発つと聞いたのは、出発する前日の夜だった。

「エルヴィス様!」

 思わず引き留めにいってしまったのは、エルヴィスは気まぐれで帰ってきたのではなく、旅を終えたのだと感じたからだ。それをリヴィウスが追い出すような形になってしまった。レイのせいで。

「…レイ殿…」
「旅に発たれるとは本当ですか?陛下にそう促されたと聞きました…。もしや、私のせいで…?」
「そんな…そうではありません、…潮時だったのです」
「え?」

 彼は少し困ったように笑っていった。

「ある人を慕っていたのを、陛下にバレてしまいました、…バカな感情を抱いてしまいまして」
「え…と…」

 恋情を抱いて、リヴィウスに追い出される。つまり好きになってはいけない、…側妃…?

「…そう…なのですか…」

 そういえばエルヴィスは、第二側妃のルナ様と仲が良いと聞いた。もしかしたらルナ様かもしれない。

「あの、エルヴィス様……えっと…その、申し訳ありません、立ち入ったことを…」
「……レイ殿に初めて会ったのは、陛下の催された食事会で遠目に見た時ですね。軽い会釈しか出来ませんでしたが」
「そう…ですね、はい」
「多分私は、貴方に一目惚れしたんだと思います」

 …ん?

「無礼を許してください」
「え、エルヴィス様……?」
「…私と共に行きませんか?」
「は?」
「私ならば生涯、貴方だけを愛し、守ると誓います。幸せにすると断言します。…私と共に、城を出ませんか?」
「エルヴィス様……」
「陛下…リヴィウス兄上は私の気持ちを知り、城を追い出したのです。私は諦めたつもりで戻ってきましたが、やはり諦めるなど不可能だ」

 そういうことか。だからリヴィウスは遠慮なくあんな言い方をしたのか。


 ……いいかも。

 この人なら確かに、自分だけを生涯愛してくれるかもしれない。仮にも王族だし、金はあるだろう。不自由な生活はしないはずだ。

「エルヴィス様、…俺は、」

 貴方についていこうと思います。


 と、言わなくてよかった。

「何をしている…!」

 リヴィウス、いたの。全然気付かなかった。

「陛下…!」
「レイ、エルヴィスと関わるなと言ったはずだ!!っ…エルヴィス、お前は性懲りもなく…!」
「リヴィウス兄上、お願いします!レイを私にください…!」
「呼び捨てにするな!許さぬと申したはずだ!おい、ローレン!レイを部屋に連れていけ!」

 リヴィウスがぶちギレる寸前の状態でローレンを呼ぶ。

「は、はい、陛下!レイ様、戻りましょう」
「レイ殿…!」

 エルヴィスの顔に罪悪感が込み上げる。

 残念ながら、陛下の前で共に連れていってくれなど言えるほど、エルヴィスを好いてはいない。

「…ごめんなさい…」

 くるりと背を向けて数秒も経たぬ内に後悔した。

 幸せへの近道を自分で蹴ってしまった。
 やっぱ、道を踏み外したかも…。
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