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恋人に浮気がバレました
許さない
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「いいから書けよ!!」
麻人が圭の胸ぐらを掴む。
「や、やだっ…!お願い、笹野のことはもう許してよっ…!」
笹野、と言い終わる前に殴られる。青黒くついたアザがまた痛む。
「あ、麻人だって浮気してたのに…!なんで俺だけ怒られるんだよ!?」
「お前は俺のモノだから。…だから、もう抑えるのはやめた。もう、お前の五体へし折ってでも側に置いてやる。…お前は昨日、誓ったよな?二度と浮気しないって。もし次に浮気なんてしたら、お前を殺して俺も死んでやるよ」
「麻、人…」
「笹野類のこと調べた。お前がよく出入りしてたブックカフェで知り合ったんだって?K大の医学部…エリートだな」
「な、なんでそんなこと知って…!」
「お前が寝てるうちに調べた。…お前との関係は去年から…随分と長い浮気だなぁ?おい…」
「お願いだからっ…!」
「…なんだ?」
「類に、迷惑かけないでっ…!俺が、全部悪いから…、だから、分かった、なんでも麻人の言う通りにするから…!だからお願い、類には、関わらないであげて!」
「っ……アイツのために、退学届けも書くっていうことか!」
パンッと乾いた音が部屋に響く。顔を叩かれたと分かったのは、ヒリヒリと痛みを感じた時だ。
「…お前さぁ、俺とあの男と、どっちが大事なんだよ」
「え…?」
「アイツのことが好きなのかって聞いてるんだ!!」
「…違う」
「嘘つけ!違うなら、」
「俺が好きなのは麻人だけだからっ…」
「ならアイツとヤった理由は?アイツのことが好きだったからだろ!」
「っ……もう、やだよ…」
痛いのも、こんなに怖いのも。
「…俺と別れて…」
自分が好きだから大丈夫だと思っていた。別れを口にしないようにしていたのは俺だった。
「…俺のこと、嫌いになったのか」
「違う、そうじゃない。でももう、無理なんだって」
「何が無理なんだよ!」
「…麻人は俺のこと、許せない。俺も麻人と上手くやっていける自信ない。…ねぇ、俺たちそろそろ潮時だと思わない?」
「嫌だッ!!」
「麻人!」
「なら、俺とどうしても別れるって言うのなら、殺してやる!」
ヤバイ。また、首絞められる。
「わ、別れない!別れないっ、ごめんっ…!」
「…お前が逃げたところで、俺は絶対に地の果てまで追いかける。…お前が他のヤツのところに行っても、許さない」
「……麻人」
「…痛かったよな、全部……医者には連れていけないけど、ちゃんと看病してやるから安心しろ」
「……麻人、俺のことそこまで好きだったの…」
「当たり前だろ」
「…なら、なんで浮気なんかしたの。麻人がしなかったら、俺だって…」
言い終わる前にぐいっと髪を引っ張られてしまう。
「どうだかな。お前は淫乱だから…もし俺が浮気してなくても、他のヤツに足、開いただろうなぁ?」
「麻人、痛いって…!」
「俺がお前の世話、全部してやるよ。トイレも食事も風呂も、全部俺がやってやるから。…もう二度と、俺以外の男に触れられるんじゃねぇぞ」
同じことを何度言うんだろう。
「…麻人、…あの…さ、俺、」
「……おい、圭」
「え、な、なに?」
「こんな時計、持ってたか?」
圭の腕についている時計を、麻人がなぞった。
「っ…も、持ってたよ?」
これは去年のクリスマスの翌日、笹野にもらったモノだ。
「…いつから?」
「えっと…ま、前に…ね、バイト代で買ったんだ…」
嘘だ。俺のバイト代なんかで買えないほど高価なモノ。
「…嘘つけ」
「え…」
「今更、嘘ついてることくらい分かるって言ってんだよ!おい、今すぐ正直なこと言え…!」
ダメだ。コイツは本当のことを感付いている。そして言っても言わなくても、棄てるだろう。
「…る……笹野から、貰った…」
「いつ」
「去年の…クリスマスの、翌日…」
「…あぁ。友達とクリスマスパーティー、だっけ?ブランド物ねぇ…。外せ」
「……これ、気に入ってるんだけど…」
「俺が新しいのをいくらでも買ってやる。さっさと外せ」
「っ……はい…」
やはり名残惜しくゆっくり外すと、奪い取るように床に落とされる。
「あっ…」
何度も踏みつけ、壊れた時計を麻人が満足そうに見下ろす。
「…他に他の男から貰った物は?…いや、いい。俺が買ったヤツ以外、全部棄てるから」
「ちょ…やめろよ!」
アクセサリーも服も靴も鞄も、気に入っているほとんどが笹野から貰ったものばかりだ。
「ネックレスは俺がやったもの以外は要らないだろ。ピアスは昔から閉じろって言ってる。鞄も服も靴も、全部、俺が買い直してやるから」
「俺のこと好きなら、そういうのやめてよ…」
こういう言い方はどうかと思うけれど、俺が好きなら俺の嫌がることをしないでほしい。
「…好きだから、こうするんだろ?お前はもう、外に出なくていい。全部俺が買ってくるし、買い物したいならネットショッピングでいいだろ」
「俺は…外に出たら、ダメなのかよ…」
「当たり前だろ?お前に俺以外、必要ないだろ」
別に麻人のことを嫌いになったりしていない。クドいようどけれど、ちゃんと好きだし、愛してる。
けれど。
「ほら、圭。喉乾いたんだろ?」
「麻人っ…」
食べ物も飲み物も、口移し。
「ん、ん……っ」
その度に舌をねじ込んでくるときた。
嫌じゃないけれど、恥ずかしい。
「…なぁ、お前の足、折っていい?」
「は…?」
「そしたらお前、逃げられない」
退学届けを言わなくなったら、次はこれかい。ようやく怪我がマシになってきたというのに。
「…圭、愛してる」
「……うん」
俺も、と言うのは怖い。これ以上愛されたくはない。この男は俺を愛しすぎると、暴力で表すらしい。
「おい、愛してるって言え」
「…はいはい、…愛してる」
もう、どうしてこんなことになるんだろう?俺たちは。
麻人が圭の胸ぐらを掴む。
「や、やだっ…!お願い、笹野のことはもう許してよっ…!」
笹野、と言い終わる前に殴られる。青黒くついたアザがまた痛む。
「あ、麻人だって浮気してたのに…!なんで俺だけ怒られるんだよ!?」
「お前は俺のモノだから。…だから、もう抑えるのはやめた。もう、お前の五体へし折ってでも側に置いてやる。…お前は昨日、誓ったよな?二度と浮気しないって。もし次に浮気なんてしたら、お前を殺して俺も死んでやるよ」
「麻、人…」
「笹野類のこと調べた。お前がよく出入りしてたブックカフェで知り合ったんだって?K大の医学部…エリートだな」
「な、なんでそんなこと知って…!」
「お前が寝てるうちに調べた。…お前との関係は去年から…随分と長い浮気だなぁ?おい…」
「お願いだからっ…!」
「…なんだ?」
「類に、迷惑かけないでっ…!俺が、全部悪いから…、だから、分かった、なんでも麻人の言う通りにするから…!だからお願い、類には、関わらないであげて!」
「っ……アイツのために、退学届けも書くっていうことか!」
パンッと乾いた音が部屋に響く。顔を叩かれたと分かったのは、ヒリヒリと痛みを感じた時だ。
「…お前さぁ、俺とあの男と、どっちが大事なんだよ」
「え…?」
「アイツのことが好きなのかって聞いてるんだ!!」
「…違う」
「嘘つけ!違うなら、」
「俺が好きなのは麻人だけだからっ…」
「ならアイツとヤった理由は?アイツのことが好きだったからだろ!」
「っ……もう、やだよ…」
痛いのも、こんなに怖いのも。
「…俺と別れて…」
自分が好きだから大丈夫だと思っていた。別れを口にしないようにしていたのは俺だった。
「…俺のこと、嫌いになったのか」
「違う、そうじゃない。でももう、無理なんだって」
「何が無理なんだよ!」
「…麻人は俺のこと、許せない。俺も麻人と上手くやっていける自信ない。…ねぇ、俺たちそろそろ潮時だと思わない?」
「嫌だッ!!」
「麻人!」
「なら、俺とどうしても別れるって言うのなら、殺してやる!」
ヤバイ。また、首絞められる。
「わ、別れない!別れないっ、ごめんっ…!」
「…お前が逃げたところで、俺は絶対に地の果てまで追いかける。…お前が他のヤツのところに行っても、許さない」
「……麻人」
「…痛かったよな、全部……医者には連れていけないけど、ちゃんと看病してやるから安心しろ」
「……麻人、俺のことそこまで好きだったの…」
「当たり前だろ」
「…なら、なんで浮気なんかしたの。麻人がしなかったら、俺だって…」
言い終わる前にぐいっと髪を引っ張られてしまう。
「どうだかな。お前は淫乱だから…もし俺が浮気してなくても、他のヤツに足、開いただろうなぁ?」
「麻人、痛いって…!」
「俺がお前の世話、全部してやるよ。トイレも食事も風呂も、全部俺がやってやるから。…もう二度と、俺以外の男に触れられるんじゃねぇぞ」
同じことを何度言うんだろう。
「…麻人、…あの…さ、俺、」
「……おい、圭」
「え、な、なに?」
「こんな時計、持ってたか?」
圭の腕についている時計を、麻人がなぞった。
「っ…も、持ってたよ?」
これは去年のクリスマスの翌日、笹野にもらったモノだ。
「…いつから?」
「えっと…ま、前に…ね、バイト代で買ったんだ…」
嘘だ。俺のバイト代なんかで買えないほど高価なモノ。
「…嘘つけ」
「え…」
「今更、嘘ついてることくらい分かるって言ってんだよ!おい、今すぐ正直なこと言え…!」
ダメだ。コイツは本当のことを感付いている。そして言っても言わなくても、棄てるだろう。
「…る……笹野から、貰った…」
「いつ」
「去年の…クリスマスの、翌日…」
「…あぁ。友達とクリスマスパーティー、だっけ?ブランド物ねぇ…。外せ」
「……これ、気に入ってるんだけど…」
「俺が新しいのをいくらでも買ってやる。さっさと外せ」
「っ……はい…」
やはり名残惜しくゆっくり外すと、奪い取るように床に落とされる。
「あっ…」
何度も踏みつけ、壊れた時計を麻人が満足そうに見下ろす。
「…他に他の男から貰った物は?…いや、いい。俺が買ったヤツ以外、全部棄てるから」
「ちょ…やめろよ!」
アクセサリーも服も靴も鞄も、気に入っているほとんどが笹野から貰ったものばかりだ。
「ネックレスは俺がやったもの以外は要らないだろ。ピアスは昔から閉じろって言ってる。鞄も服も靴も、全部、俺が買い直してやるから」
「俺のこと好きなら、そういうのやめてよ…」
こういう言い方はどうかと思うけれど、俺が好きなら俺の嫌がることをしないでほしい。
「…好きだから、こうするんだろ?お前はもう、外に出なくていい。全部俺が買ってくるし、買い物したいならネットショッピングでいいだろ」
「俺は…外に出たら、ダメなのかよ…」
「当たり前だろ?お前に俺以外、必要ないだろ」
別に麻人のことを嫌いになったりしていない。クドいようどけれど、ちゃんと好きだし、愛してる。
けれど。
「ほら、圭。喉乾いたんだろ?」
「麻人っ…」
食べ物も飲み物も、口移し。
「ん、ん……っ」
その度に舌をねじ込んでくるときた。
嫌じゃないけれど、恥ずかしい。
「…なぁ、お前の足、折っていい?」
「は…?」
「そしたらお前、逃げられない」
退学届けを言わなくなったら、次はこれかい。ようやく怪我がマシになってきたというのに。
「…圭、愛してる」
「……うん」
俺も、と言うのは怖い。これ以上愛されたくはない。この男は俺を愛しすぎると、暴力で表すらしい。
「おい、愛してるって言え」
「…はいはい、…愛してる」
もう、どうしてこんなことになるんだろう?俺たちは。
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