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元カレに脅されています
終わらせる
しおりを挟むあきらから、メールがあった。
[会いたい。]そう書かれたメールに、俺は返信することが出来なかった。けれど、いつまでもあやふやにするからきっと、先輩のようになったんだと思う。
「……あ、…もしもし、俺だけど。今日、会える?」
だから、終わらせる。全部。
「…早いね、待った?」
「いや、全然。恭弥も急がなくてよかったのに」
「…ごめん」
「いいって。…連絡してくれて嬉しかった、もうダメかと思った」
「…ごめん」
「…あのさ、先に聞いていい?」
「え?」
「話をしに来てくれたのか、終わらせに来たのかどっち?」
「…あきら」
「正直に言って。恭弥は、…誰が好き?」
「俺は…」
とっさに浮かんだのは、先輩の顔だ。
「…あきらと、出会う前に好きだった人がいた」
「知ってるよ、前に聞いた」
「その人のこと好きなまま、あきらと付き合った」
「…うん」
「それに、今でも忘れられない」
「……うん、分かった。…話してくれて、ありがとう」
そう言って笑っている顔が、あまりにも辛そうで。
「…ごめん…」
たくさん、傷つけてごめん。いっぱい、嘘ついてごめん。
「謝るな。…その人に告白すんの?」
「…する」
「じゃあ、最後にひとつだけ教えて。俺のこと…好きだと思ったことは、ある?」
「……」
優しくて、いっしょに居たら落ち着いて。穏やかな気持ちになれて、先輩のことも薄れていた。きっとあれも、一つの恋愛感情だったのだと思う。けど、違う。先輩が好きだった時の感情と、違うから。
「…ないよ」
「…うん、わかった。…俺は……いや、俺もない。これでお互い様な!」
「あきら」
「バイバイ」
「…ありがと」
好きと大切は違う。好きだから大切になることはあっても、大切だから好きになることはない。
[たくさん、傷つけて本当にごめん。ありがとう]
打って、送信せず消去する。
「…さー…どうしようか」
電話はかけても出ないだろう。かといって、T大まで行ったところで会う確率はないに等しい。なによりも、あきらと会うかもしれない。
「…ま、なるようになるさ…」
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