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元カレに脅されています
過去のハナシ③
しおりを挟む俺が中学を卒業した日、先輩と初めてセックスをした。
「…怖い?」
先輩がシャワーを浴びている間もずっと震えていたことを指摘され、動揺する。
「そ、そんなんじゃっ…!」
「恭弥が怖いなら…無理矢理はしないよ、大丈夫」
「や、やだっ…!」
「恭弥?」
「おねが…先輩のモノにして…?」
「っ…お前、煽んのうますぎだろ…!」
先輩は、どうしても中学卒業までと待っていてくれた。それを拒む勇気も理由も、俺にはなかったし俺だって嬉しかった。けれど、それだけで先輩を独占できるなんて思ってないから、俺は高校を先輩と同じ場所にした。ただ、少しでもそばに居たいと願ったから。俺が、重すぎたから。
「恭弥…っ、名前…呼べ」
「へ…?あ、あっ……!」
「痛い?大丈夫か?」
ゆっくりと慣らしてくれる先輩の気遣いは嬉しかったし、本来ならば俺が準備しておくべきだったことをやらなかったのは自分だが、さすがにもう限界だった。挿れられる前に俺が羞恥の限界で死んでしまう。
「せんぱっ…い、も…いいっ……!」
「え?でも、まだ慣らさないとあとで大変なことに…」
「いいから…っ!お願い…?悠、ちゃん…っ!」
悠ちゃん、というのは先輩が周りの女子から呼ばれているあだ名。別に嫉妬なんてしないけど、少し自分も呼んでみたかったのが今すんなり出てしまったのだ。
「っ…だからぁ…ほんと、お前って抑え効かなくするの得意なのか…っ?おい、お前はこれが初めてだろーな?」
「……ん…」
すぐに答えられなかったのは、少しだけ先輩の言葉に引っかかったからだ。というか、動きが手慣れているのは気づいていた。だから、聞かない。
『先輩は、初めてじゃないですか?」
なんて、野暮なこと。
***
俺が高校で同じところに行ったかといって、何かが変わるわけでもなかった。三年は大学受験で忙しいし、電話もメールも次第に減っていった。
二年の差は、大きい。せめて、俺か先輩があとひとつ違ったら…なんて思うのは日常茶飯事、ただそばに居たいと願った俺は、日に日に欲張りになる。
そんなすれ違いが増えていた時、隣の席の奴と仲良くなった。名前は黒崎 蛍。口下手で暗い雰囲気を出している俺には、友達という名のものは初めてだった。
ちょうど三年の試験が終わった日、先輩と待ち合わせて久しぶりにいっしょに帰った。話すのが楽しくて、嬉しすぎて…少しずつすれ違っていることに気付けなかった。ただ、先輩が言ったのはひとことだけ。
「アイツ…黒崎、だっけ。あんまり仲良くすんなよ」
あまりにもその言い方が冷え切っていたので、俺は思わず反論した。
「なんで?そこは俺に友達出来たって喜んでくれるところじゃないの?」
「だからっ…あんまりそういう…そばに人を置くなって」
「…意味わかんない、先輩のバーカ!」
この時にはもう、遅かった。
「……じゃあ、もういいわ。誰とでも仲良くすればいいんじゃね?よかったな、友達出来て。バイバイ」
「ちょ、先輩っ………ふんっ!」
昔から、俺は変なプライドがいつも肝心なところで邪魔をする。
今思えば、あんな時期にあんな言い方をするべきではなかった。大学受験を間近に控えた高校生だ。ピリピリしてるのも仕方ないのに。
それから、連絡はバッタリ途絶えた。俺から連絡したけれど折り返しはなく、だからと言って戦場のような三年の階に会いに行く勇気もなく。それから連絡は全くなかった。そして卒業式の前日。
[T大経済学部受かった。]
すぐにおめでとうと送りたかったが、やはり頭にきてしまう。何件も送ったメールと不在着信のお返しがこれか、と。
「…バカじゃないの…」
結局先輩が何を伝えたかったのかもわからず、俺は呟いて携帯を鞄に放り込む。
「…先輩の、バーカ…」
それから連絡を入れることも入れられることもなく、自然消滅だと分かったのは黒崎の助言。そしてヤケになって今まで断ってた合コンに参加し、俺はあきらと出会った。
[T大経済学部受かった。
今まで忙しくて、返信できなくて本当にごめん。卒業式の日、出てこれるか?ちゃんと謝りたいし仲直りもしたいから。好きだよ]
「俺に、結局あの人は一度も好きって言ってくれなかったなぁ…」
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