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1章

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 何日経ったか、何年経ったか。この森にいる限りそれは分からない。
 どれだけの時を得ようと、私は変わらない。だから、意味が分からなかった。
「お前を探していた。俺の嫁になれ」
「……どちら様?」
 森への侵入者に私は眉を顰める。
「数年前、お前に助けてもらった。私はこの国の国王である」
「……はぁ」
 数年前というと、あの少年だろうか。無事だったことに安心するけれど、今更だ。
「私の妻となればこの国の王妃になれるぞ」
「お断りします」
「そうか、なりたいか………ん?」
「ですから、お断りします」
「…すまないが、もう一度…」
「お断り、致します」
「……何故だ!!?」
 驚愕の表情を浮かべるこの男に私は呆れてしまう。彼は何も知らずにここへ来ているのだろうけれど、私の力があれば一瞬でこの国を破滅へと導けるのだ。
「というかここ、何だか息苦しいな」
「アゼル」
「? アゼル?」
 私には見えるアゼルが見えないらしい。どちらにせよ、彼が息苦しいのはアゼルの仕業だ。
「おやめなさい」
「…わかった」
「お、息が出来る」
「それは良かったですね。ではお帰りを」
 これ以上いられたら迷惑だ。
「なっ、待て!王妃になりたくないのか!?」
 その言葉に私は笑ってしまう。
「人間は嫌いです。そもそも、人間のように脆く汚いものの上に立って、何になると言うのです」
 私は常に上にいる。光と闇の大精霊の加護を同時に受けたのは、過去を見ても私のみだろう。
「ロウスの導きのままに」
 私は手を合わせ、頭の中で呪文を唱える。
 一瞬にして彼が消えたのは言うまでもないことだ。
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