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第二章

夢のなかの夢

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それからというもの俺はあの店のことがずっと気になり何をしても上の空だった。そういえば今日朝飯何食べたっけ?そんなことすら忘れてしまうほど過集中していたみたいだ。
このことは誰にも打ち明けていない。というか打ち明けるつもりはない。何故なら高卒で居酒屋のバイトだなんて世間から見たら将来の需要があまりにも無さすぎるからであり絶対バカにされたり、諦めろと諭されるのがオチであると分かりきっていたからこそである。
でもどうしてあの一瞬の雰囲気最悪の店にこだわりを持っているのだろうか?普通癒しを求めるならもっと人情深い店主の店の方が絶対いいに決まっている。だかあの店はまるで真逆であった。でも頑固店主の作る料理ほど美味しいものはないとネットの記事で見たことがあるからそういう興味本位で行く人が多いのかもしれない。はたまた一元さんお断りなだけあって初めての客に対しては愛想が悪いだけなのかもしれない。いずれにしてもその真相を確かめないことには俺の中に宿る情熱は消えることはないだろう。
そう思い早速ネットで調べてみると驚くべき事実が発覚したのである。それはいくら店の名前を入力してもいくら店の住所を入力してもヒットしないのである。あの頑固な店主ならホームページを作成しないことくらいわけないなと容易に想像はつくがだとしてもレビューが一件くらいあってもいいと思うのにそれすらないのである。
明らかにおかしいし、怪しい。
コレは何か秘密があるに違いないと思い、だったらと街頭インタビューにすることにした。するとそこでも「そんな店は知らない」という声しか上がらずまるであの店が存在していないかのようだった。
まさか俺にだけ見えている幻の店?そんなバカな話があるわけないだろう。そう思い日を改めて店の開店時間の17時に店の前で張り込みを開始したが案の定全員素通りである。それも興味がないというより見えていないという表現の方が正しいかもしれない。何なんだこの気色の悪い感じは。
でも俺には明らかに見えているし店の中にも入れた訳だから存在しないなんてあり得ない。そう信じたくて店の前に近づきあの時のように引き戸に手をかけようとしたその瞬間目の前にあった店の姿が一瞬にして消え去りそれと同時に俺の頭の中にモヤがかかり気づいたら病院のベッドで横になっていた。後で聞いた話だが俺が見つけた居酒屋は実在していたらしいがそれはもう何十年も前の話だそうである。ある時火災が発生し店が全焼と同時に店主と若い女の子が亡くなり以来成仏できずに店と共にその魂が生き続けていたのだとか。実際に店の所在地へ行くと何もなかった。ただ跡地としてだけのスペースが綺麗に残されていた。ふと大切なことに気がついた。それは「夢」と関係することである。俺は正直「夢」など無いと決めつけていたが人の温もりが大好きで小さい頃から周りの人たちから優しくしてもらいその素晴らしさを十分知っていた。だから、人情が発揮できる仕事に就き自分がしてもらって嬉しかったように自分も1人でも多く誰かを幸せにしたいそう心の奥底で思っていたことが、居酒屋が健在していた頃の店主と若い女の子の人情深い接客とリンクし、成仏できていなかった魂が蘇ったのだと考えられる。しかし噂に聞くにはとても人情深いはずなのに何故俺が店に入った時はあんなに冷たい態度を取ったのか、答えはシンプル。あのまま店に入ってしまったら俺も死んでしまうから意地でも阻止しようと突き放したのである。店主たちの優しさである。そして何故2回目に店に入ろうとして消えてしまったのかそれについてはいまだに謎であるがおそらく事故が起こったあの日からずっと叶えたかったユ「夢」を達成することができず成仏できずにいたがそこに同じ志をもつ俺が通りがかったことで運命の歯車が動き出したのだろう。自分たちがいなくてもこの「夢」を叶えてくれる人は必ず現れるそう信じて成仏していったのかもしれない。人には夢は無限大にありそれをどこまでいったら叶えたと認識するかはその人次第である。だが、「夢」は1人で達成するものではなく必ず誰かの協力があって初めて成立するものである。俺は「夢」とは人と人を繋ぐバトンのようなものだと今回の一件から強く思い、それからというもの大学で調理師免許を取得し居酒屋の跡地で新たな居酒屋を建て俺が店主として経営をしあの店主と若い女の子の「夢」を引き継ぐことを誓い今宵も現代社会でお疲れの皆様を癒すことに喜びを覚えて生きているのでした。
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