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48 【おまけ番外編】ネーミングセンス
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私とルークが初夜を迎えて、二ヶ月が経過していた。
先日、ルークに動物を飼いたいとお願いした。本当は騎士団にいる三尾が飼いたいと言ってみたけれど、やはり三尾は難しいと言われたので、犬か猫か鳥を飼いたいと言った。そしたら、今日、なんと知り合いから生まれたばかりの子猫を貰ってきてくれた。
「か、可愛いっ!!」
まだ生まれて十日くらいらしい。静電気に勝てていない真っ白のぱやぱやした毛、やっと開いたばかりと思われる青い目が特徴の、とっても可愛い子猫だった。
私の片手に乗るくらいの小ささで、愛らしくミーミー鳴いていて、夢中になる可愛さ。
「ありがとうございます、ルーク!」
「どういたしまして」
それから私は毎日子猫と過ごす。屋敷を管理する仕事の時間も、一緒に連れていって傍で見守る。
それから五日後。
ソファーにて、ルークの膝の上でルークに抱かれながら、私は私で膝に子猫を乗せている。子猫を撫でて癒されていると、ルークが口を開いた。
「猫の名前は決めたのか?」
「二つ候補を決めて、迷っています」
「二つの候補は?」
「『狼』と『わんちゃん』です」
「……は? 猫だぞ?」
「そうですよ」
まだ毛がぱやぱやしている子猫は、犬のような狼の三尾に色が似ている。そこから連想した。
「『狼』と『わんちゃん』はないだろう……」
「……? 似ていると思うのですが、変でしょうか」
私の前世の実家では、犬と猫を飼っていた。犬は『獅子』で猫は『トラ』という名前だったのだけれど。何かのアニメに出てくる『獅子』と『トラ』に似ていたのだ。
「その名前は、かなりややこしいと思うぞ」
「そうでしょうか……。では、『羊』はどうですか?」
「いったん、動物から離れろ」
駄目ですか。もこもこ感が似ているのに。
他に白くて連想されるものって何だろう。
「『泡』」
「消えそうな名だな」
「『雪』」
「今は夏だぞ」
「『わたあめ』」
「ワタアメ? 何だそれは」
うーん、わたあめ、現世にはないものね。作れそうだけれど。
白い、というところから連想するのは止めた方がいいだろうか。
「……『ミミ』はどうですか?」
「ミミ?」
「ミィミィ、と鳴いて、可愛いのですよ」
「……可愛いのはアリスだろう?」
いきなりキスをしてくるルークに、驚く。唇を離したルークは、再び軽く口づけする。
「アリスは鳴くのも可愛い」
「……」
なんだか、別の意味で言われているような気がして、返答したくない。
「ミミで決まりですね! ミミ、これからよろしくね」
私がミミを撫でて愛でている間、ルークが私とミミを見ながら、将来生まれてくるであろう私たちの子の名前は、私に付けさせないでおこう、と思っていたとは、私は知らない。
番外編おわり
------------
『おまけ番外編』はこちらで最終話です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
先日、ルークに動物を飼いたいとお願いした。本当は騎士団にいる三尾が飼いたいと言ってみたけれど、やはり三尾は難しいと言われたので、犬か猫か鳥を飼いたいと言った。そしたら、今日、なんと知り合いから生まれたばかりの子猫を貰ってきてくれた。
「か、可愛いっ!!」
まだ生まれて十日くらいらしい。静電気に勝てていない真っ白のぱやぱやした毛、やっと開いたばかりと思われる青い目が特徴の、とっても可愛い子猫だった。
私の片手に乗るくらいの小ささで、愛らしくミーミー鳴いていて、夢中になる可愛さ。
「ありがとうございます、ルーク!」
「どういたしまして」
それから私は毎日子猫と過ごす。屋敷を管理する仕事の時間も、一緒に連れていって傍で見守る。
それから五日後。
ソファーにて、ルークの膝の上でルークに抱かれながら、私は私で膝に子猫を乗せている。子猫を撫でて癒されていると、ルークが口を開いた。
「猫の名前は決めたのか?」
「二つ候補を決めて、迷っています」
「二つの候補は?」
「『狼』と『わんちゃん』です」
「……は? 猫だぞ?」
「そうですよ」
まだ毛がぱやぱやしている子猫は、犬のような狼の三尾に色が似ている。そこから連想した。
「『狼』と『わんちゃん』はないだろう……」
「……? 似ていると思うのですが、変でしょうか」
私の前世の実家では、犬と猫を飼っていた。犬は『獅子』で猫は『トラ』という名前だったのだけれど。何かのアニメに出てくる『獅子』と『トラ』に似ていたのだ。
「その名前は、かなりややこしいと思うぞ」
「そうでしょうか……。では、『羊』はどうですか?」
「いったん、動物から離れろ」
駄目ですか。もこもこ感が似ているのに。
他に白くて連想されるものって何だろう。
「『泡』」
「消えそうな名だな」
「『雪』」
「今は夏だぞ」
「『わたあめ』」
「ワタアメ? 何だそれは」
うーん、わたあめ、現世にはないものね。作れそうだけれど。
白い、というところから連想するのは止めた方がいいだろうか。
「……『ミミ』はどうですか?」
「ミミ?」
「ミィミィ、と鳴いて、可愛いのですよ」
「……可愛いのはアリスだろう?」
いきなりキスをしてくるルークに、驚く。唇を離したルークは、再び軽く口づけする。
「アリスは鳴くのも可愛い」
「……」
なんだか、別の意味で言われているような気がして、返答したくない。
「ミミで決まりですね! ミミ、これからよろしくね」
私がミミを撫でて愛でている間、ルークが私とミミを見ながら、将来生まれてくるであろう私たちの子の名前は、私に付けさせないでおこう、と思っていたとは、私は知らない。
番外編おわり
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『おまけ番外編』はこちらで最終話です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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