2 / 8
ビッチ(処女)、騎士様の屋敷に行く
しおりを挟む
王都アディントンは秩序の保たれた大きな街だ。当たり前だ、ここに王様がいるんだから。無秩序な王都なんてあってたまっか。
しかし、俺はここに来るのは初めてだ。ずっと魔王城にいたし、遊びに行くのも魔界のどっかか、魔王城から近い寂れた村ばかり……しかもそこの村人、やたら強いんだよな。まぁ、すぐ近くに魔王城があるし、武具屋には購入層が勇者様御一行くらいしかいないような、強くて高価な武器ばっかだったし。
ここは平和だ。人間の街も悪くない。通りは行き交う人で賑やかだし、屋台からは美味そうな匂いが漂っている。馬上から眺める人の営みは、なかなか悪くないものだった。
「さぁ、もうすぐ私の屋敷に着くよ」
甘い囁きに、俺は顔を騎士へと向けた。こいつはいつまで俺を抱っこしてるつもりなんだろう。確かに俺はお姫様みたいに可愛いけど、ずっとこんな抱き方をされていると照れる。あと尻の尻尾がちょっと痛い。
おむつ一丁の使い魔赤ちゃんたちは、小さな羽をパタパタさせて追い掛けて来ていた。馬の歩みが少し遅いのは、あいつらを気遣ってのものなのかもしれない。
「屋敷に着いたら、まず脱いでもらわねばな」
ナニソレ大胆!いくら俺が可愛くて体もエロいからって……騎士様マジけだもの。
「まずは風呂に浸かって寛ぎなさい。体を綺麗にしたいだろう? その後に、君に良い思いをしてもらいたいからね……」
「で、でも……心の準備とか……初めてだから、その……」
「そうか、君はアディントン名物の料理は初めてなのか。安心したまえ。うちにいる料理人はとても腕が良いのだ」
そっちかい。なんだよ、違うのかよ。そんな眩しい輝くような笑顔を見せないでくれ。闇属性だから滅しちゃう。
天井のシミを数えることまで覚悟した自分が恥ずかしくなった。
街の奥にある坂を上り、貴族たちの居住区へと入る。大きく品の良い屋敷ばかりが建ち並び、そのどれもが俺には新鮮だった。キョロキョロしたいけど、そんなことしたら田舎者みたいだから我慢する。でも、時折擦れ違う上流階級らしき人々は、俺とセオドアを珍しそうに目で追っていた。
そりゃそうだ。悪魔族の美少年をお姫様みたいに抱っこして使い魔赤ちゃん引き連れてる騎士様なんて……どうかしてる。
そうこうしているうちに、馬はある屋敷の前で立ち止まる。
「さぁ、到着だ。ここが私の屋敷だよ」
そこは他の屋敷と比べれば少し小さなものだった。壁や屋根の色にも派手さはない。それでも上品と思えたのは、手入れの行き届いた庭と門構えのせいだろう。
セオドアと共に馬を降りる。屋敷の扉が開き、二人の中年夫婦が姿を現した。
「おかえりなさいませ、セオドア様。お務めはいかがでしたか?」
「ただいま、ハンナ。問題なく終わったよ。あぁ、マシュー、馬を頼む」
「はい、旦那様」
この太った……いや、肉付きの良い中年女はハンナというらしい。そして馬を引き取った男はマシュー。体型はハンナの半分くらいだ、痩せている。妻に栄養を搾り取られたのか?
俺がぼけっとしていると、セオドアがハンナの前に俺を突き出した。
「この子は帰りに拾ったのだ。行く宛がなく困っているらしい。しばらく私の屋敷に置いてやろうと思うのだが、どうだろうか?」
「い、いいよ! そこまでしなくても……!」
こんな美丈夫と一つ屋根の下とか、俺の心臓がもたない。
中年女は俺をじいっと見下ろし、ゆっくりと庭へと目を向けた。使い魔赤ちゃんたちがペタペタ走り回っている。
「……あの赤ちゃんたちは?」
「お、俺の使い魔……」
「まァ! まァまァまァ! 赤ちゃんだなんて久しぶりだよぉ! おばちゃんがお世話してあげますからねぇ! さぁさ、いらっしゃいな。まずはお風呂を入れなきゃいけませんねぇ!」
満面の笑顔でハンナは甲高い声を上げた。どうやら置いてもらえるらしい。
小さく息をついた俺に、セオドアは耳元で囁いた。
「これで安心だね。ハンナは使用人だけど、この屋敷で一番怖いんだ。怒らせちゃいけないよ?」
駄目だ、話が頭に入ってこない。吐息混じりの美声で囁くなよ、腰に来る。半ズボンから出た尻尾が無意識で揺れる。ちょっと喜んでるのがバレちゃう。
「早くお風呂に入っておいで……私は部屋で待っていよう」
「は、はひ……綺麗な体になってきましゅ……」
人間相手にこの俺様が蕩けるなんて。
これから大丈夫だろうか……。
しかし、俺はここに来るのは初めてだ。ずっと魔王城にいたし、遊びに行くのも魔界のどっかか、魔王城から近い寂れた村ばかり……しかもそこの村人、やたら強いんだよな。まぁ、すぐ近くに魔王城があるし、武具屋には購入層が勇者様御一行くらいしかいないような、強くて高価な武器ばっかだったし。
ここは平和だ。人間の街も悪くない。通りは行き交う人で賑やかだし、屋台からは美味そうな匂いが漂っている。馬上から眺める人の営みは、なかなか悪くないものだった。
「さぁ、もうすぐ私の屋敷に着くよ」
甘い囁きに、俺は顔を騎士へと向けた。こいつはいつまで俺を抱っこしてるつもりなんだろう。確かに俺はお姫様みたいに可愛いけど、ずっとこんな抱き方をされていると照れる。あと尻の尻尾がちょっと痛い。
おむつ一丁の使い魔赤ちゃんたちは、小さな羽をパタパタさせて追い掛けて来ていた。馬の歩みが少し遅いのは、あいつらを気遣ってのものなのかもしれない。
「屋敷に着いたら、まず脱いでもらわねばな」
ナニソレ大胆!いくら俺が可愛くて体もエロいからって……騎士様マジけだもの。
「まずは風呂に浸かって寛ぎなさい。体を綺麗にしたいだろう? その後に、君に良い思いをしてもらいたいからね……」
「で、でも……心の準備とか……初めてだから、その……」
「そうか、君はアディントン名物の料理は初めてなのか。安心したまえ。うちにいる料理人はとても腕が良いのだ」
そっちかい。なんだよ、違うのかよ。そんな眩しい輝くような笑顔を見せないでくれ。闇属性だから滅しちゃう。
天井のシミを数えることまで覚悟した自分が恥ずかしくなった。
街の奥にある坂を上り、貴族たちの居住区へと入る。大きく品の良い屋敷ばかりが建ち並び、そのどれもが俺には新鮮だった。キョロキョロしたいけど、そんなことしたら田舎者みたいだから我慢する。でも、時折擦れ違う上流階級らしき人々は、俺とセオドアを珍しそうに目で追っていた。
そりゃそうだ。悪魔族の美少年をお姫様みたいに抱っこして使い魔赤ちゃん引き連れてる騎士様なんて……どうかしてる。
そうこうしているうちに、馬はある屋敷の前で立ち止まる。
「さぁ、到着だ。ここが私の屋敷だよ」
そこは他の屋敷と比べれば少し小さなものだった。壁や屋根の色にも派手さはない。それでも上品と思えたのは、手入れの行き届いた庭と門構えのせいだろう。
セオドアと共に馬を降りる。屋敷の扉が開き、二人の中年夫婦が姿を現した。
「おかえりなさいませ、セオドア様。お務めはいかがでしたか?」
「ただいま、ハンナ。問題なく終わったよ。あぁ、マシュー、馬を頼む」
「はい、旦那様」
この太った……いや、肉付きの良い中年女はハンナというらしい。そして馬を引き取った男はマシュー。体型はハンナの半分くらいだ、痩せている。妻に栄養を搾り取られたのか?
俺がぼけっとしていると、セオドアがハンナの前に俺を突き出した。
「この子は帰りに拾ったのだ。行く宛がなく困っているらしい。しばらく私の屋敷に置いてやろうと思うのだが、どうだろうか?」
「い、いいよ! そこまでしなくても……!」
こんな美丈夫と一つ屋根の下とか、俺の心臓がもたない。
中年女は俺をじいっと見下ろし、ゆっくりと庭へと目を向けた。使い魔赤ちゃんたちがペタペタ走り回っている。
「……あの赤ちゃんたちは?」
「お、俺の使い魔……」
「まァ! まァまァまァ! 赤ちゃんだなんて久しぶりだよぉ! おばちゃんがお世話してあげますからねぇ! さぁさ、いらっしゃいな。まずはお風呂を入れなきゃいけませんねぇ!」
満面の笑顔でハンナは甲高い声を上げた。どうやら置いてもらえるらしい。
小さく息をついた俺に、セオドアは耳元で囁いた。
「これで安心だね。ハンナは使用人だけど、この屋敷で一番怖いんだ。怒らせちゃいけないよ?」
駄目だ、話が頭に入ってこない。吐息混じりの美声で囁くなよ、腰に来る。半ズボンから出た尻尾が無意識で揺れる。ちょっと喜んでるのがバレちゃう。
「早くお風呂に入っておいで……私は部屋で待っていよう」
「は、はひ……綺麗な体になってきましゅ……」
人間相手にこの俺様が蕩けるなんて。
これから大丈夫だろうか……。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
どうやら生まれる世界を間違えた~異世界で人生やり直し?~
黒飴細工
BL
京 凛太郎は突然異世界に飛ばされたと思ったら、そこで出会った超絶イケメンに「この世界は本来、君が生まれるべき世界だ」と言われ……?どうやら生まれる世界を間違えたらしい。幼い頃よりあまりいい人生を歩んでこれなかった凛太郎は心機一転。人生やり直し、自分探しの旅に出てみることに。しかし、次から次に出会う人々は一癖も二癖もある人物ばかり、それが見た目が良いほど変わった人物が多いのだから困りもの。「でたよ!ファンタジー!」が口癖になってしまう凛太郎がこれまでと違った濃ゆい人生を送っていくことに。
※こちらの作品第10回BL小説大賞にエントリーしてます。応援していただけましたら幸いです。
※こちらの作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しております。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる