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ビッチ(処女)、騎士様の屋敷に行く

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 王都アディントンは秩序の保たれた大きな街だ。当たり前だ、ここに王様がいるんだから。無秩序な王都なんてあってたまっか。
 しかし、俺はここに来るのは初めてだ。ずっと魔王城にいたし、遊びに行くのも魔界のどっかか、魔王城から近い寂れた村ばかり……しかもそこの村人、やたら強いんだよな。まぁ、すぐ近くに魔王城があるし、武具屋には購入層が勇者様御一行くらいしかいないような、強くて高価な武器ばっかだったし。
 ここは平和だ。人間の街も悪くない。通りは行き交う人で賑やかだし、屋台からは美味そうな匂いが漂っている。馬上から眺める人の営みは、なかなか悪くないものだった。

「さぁ、もうすぐ私の屋敷に着くよ」

 甘い囁きに、俺は顔を騎士へと向けた。こいつはいつまで俺を抱っこしてるつもりなんだろう。確かに俺はお姫様みたいに可愛いけど、ずっとこんな抱き方をされていると照れる。あと尻の尻尾がちょっと痛い。
 おむつ一丁の使い魔赤ちゃんたちは、小さな羽をパタパタさせて追い掛けて来ていた。馬の歩みが少し遅いのは、あいつらを気遣ってのものなのかもしれない。

「屋敷に着いたら、まず脱いでもらわねばな」

 ナニソレ大胆!いくら俺が可愛くて体もエロいからって……騎士様マジけだもの。

「まずは風呂に浸かって寛ぎなさい。体を綺麗にしたいだろう? その後に、君に良い思いをしてもらいたいからね……」
「で、でも……心の準備とか……初めてだから、その……」
「そうか、君はアディントン名物の料理は初めてなのか。安心したまえ。うちにいる料理人はとても腕が良いのだ」

 そっちかい。なんだよ、違うのかよ。そんな眩しい輝くような笑顔を見せないでくれ。闇属性だから滅しちゃう。
 天井のシミを数えることまで覚悟した自分が恥ずかしくなった。
 街の奥にある坂を上り、貴族たちの居住区へと入る。大きく品の良い屋敷ばかりが建ち並び、そのどれもが俺には新鮮だった。キョロキョロしたいけど、そんなことしたら田舎者みたいだから我慢する。でも、時折擦れ違う上流階級らしき人々は、俺とセオドアを珍しそうに目で追っていた。
 そりゃそうだ。悪魔族の美少年をお姫様みたいに抱っこして使い魔赤ちゃん引き連れてる騎士様なんて……どうかしてる。
 そうこうしているうちに、馬はある屋敷の前で立ち止まる。

「さぁ、到着だ。ここが私の屋敷だよ」

 そこは他の屋敷と比べれば少し小さなものだった。壁や屋根の色にも派手さはない。それでも上品と思えたのは、手入れの行き届いた庭と門構えのせいだろう。
 セオドアと共に馬を降りる。屋敷の扉が開き、二人の中年夫婦が姿を現した。

「おかえりなさいませ、セオドア様。お務めはいかがでしたか?」
「ただいま、ハンナ。問題なく終わったよ。あぁ、マシュー、馬を頼む」
「はい、旦那様」

 この太った……いや、肉付きの良い中年女はハンナというらしい。そして馬を引き取った男はマシュー。体型はハンナの半分くらいだ、痩せている。妻に栄養を搾り取られたのか?
 俺がぼけっとしていると、セオドアがハンナの前に俺を突き出した。

「この子は帰りに拾ったのだ。行く宛がなく困っているらしい。しばらく私の屋敷に置いてやろうと思うのだが、どうだろうか?」
「い、いいよ! そこまでしなくても……!」

 こんな美丈夫と一つ屋根の下とか、俺の心臓がもたない。
 中年女は俺をじいっと見下ろし、ゆっくりと庭へと目を向けた。使い魔赤ちゃんたちがペタペタ走り回っている。

「……あの赤ちゃんたちは?」
「お、俺の使い魔……」
「まァ! まァまァまァ! 赤ちゃんだなんて久しぶりだよぉ! おばちゃんがお世話してあげますからねぇ! さぁさ、いらっしゃいな。まずはお風呂を入れなきゃいけませんねぇ!」

 満面の笑顔でハンナは甲高い声を上げた。どうやら置いてもらえるらしい。
 小さく息をついた俺に、セオドアは耳元で囁いた。

「これで安心だね。ハンナは使用人だけど、この屋敷で一番怖いんだ。怒らせちゃいけないよ?」

 駄目だ、話が頭に入ってこない。吐息混じりの美声で囁くなよ、腰に来る。半ズボンから出た尻尾が無意識で揺れる。ちょっと喜んでるのがバレちゃう。

「早くお風呂に入っておいで……私は部屋で待っていよう」
「は、はひ……綺麗な体になってきましゅ……」

 人間相手にこの俺様が蕩けるなんて。
 これから大丈夫だろうか……。
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