勝負如此ニ御座候(しょうぶかくのごとくにござそうろう)

元禄の頃の尾張、柳生家の次代当主である柳生厳延(としのぶ)は、正月の稽古始に登城した折り、見るからに只者ではない老人とすれ違う。いかにも剣の達人らしき様子に、丸に三つ柏の家紋を入れた裃……そして以前にも一度この老人を見たことがあったことを思い出し、厳延は追いかけて話を聞く。
その老人こそは嶋清秀。剣聖・一刀斎の薫陶を受け、新陰流きっての名人、柳生如雲斎にも認められながら、かつてただ一度の敗北で全てを失ったのだと自らを語った。

〝宮本武蔵がなごやへ来りしを召され、於御前兵法つかひ仕合せし時、相手すつと立合と、武蔵くみたる二刀のまゝ、大の切先を相手の鼻のさきへつけて、一間のうちを一ぺんまわしあるきて、勝負如此ニ御座候と申上し〟

伝説に語られる勝負に、しかし名を遺すことなく歴史の闇へと消えた剣士の、無念と悔悟の物語。
24h.ポイント 0pt
0
小説 193,553 位 / 193,553件 歴史・時代 2,395 位 / 2,395件

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

晩夏の蝉

紫乃森統子
歴史・時代
当たり前の日々が崩れた、その日があった──。 まだほんの14歳の少年たちの日常を変えたのは、戊辰の戦火であった。 後に二本松少年隊と呼ばれた二本松藩の幼年兵、堀良輔と成田才次郎、木村丈太郎の三人の終着点。 ※本作品は昭和16年発行の「二本松少年隊秘話」を主な参考にした史実ベースの創作作品です。  

ダリルの剣 ~バスク人剣士が見た日本の剣流~

mizuno sei
歴史・時代
 ダリル・バスケスは傭兵を生業とするバスク人の剣士だった。  彼は雇われたジャカルタ行きのオランダ商船で、一人の日本人奴隷の若者トウジと知り合う。  彼の剣技に魅せられたダリルは、彼と剣の練習に励み、友情を育んでいった。  しかし、インドを経由して間もなく、トウジはマラリヤを患い、あっけなく死んでしまう。  ダリルはトウジの遺品である日本刀を携え、彼の遺族に会うため、そして、日本の剣術を知るために、長崎へと向かうのだった。

幕末群狼伝~時代を駆け抜けた若き長州侍たち

KASPIAN
歴史・時代
「動けば雷電の如く、発すれば風雨の如し。衆目駭然として敢えて正視する者なし、これ我が東行高杉君に非ずや」 明治四十二(一九〇九)年、伊藤博文はこの一文で始まる高杉晋作の碑文を、遂に完成させることに成功した。 晋作のかつての同志である井上馨や山県有朋、そして伊藤博文等が晋作の碑文の作成をすることを決意してから、まる二年の月日が流れていた。 碑文完成の報を聞きつけ、喜びのあまり伊藤の元に駆けつけた井上馨が碑文を全て読み終えると、長年の疑問であった晋作と伊藤の出会いについて尋ねて…… この小説は二十九歳の若さでこの世を去った高杉晋作の短くも濃い人生にスポットライトを当てつつも、久坂玄瑞や吉田松陰、桂小五郎、伊藤博文、吉田稔麿などの長州の志士達、さらには近藤勇や土方歳三といった幕府方の人物の活躍にもスポットをあてた群像劇です!

錦濤宮物語 女武人ノ宮仕ヘ或ハ近衛大将ノ大詐術

washusatomi
歴史・時代
訳あって港街・錦濤で育った十歳の姫宮が新東宮として京の都に上る。護衛の女武人・翠令も同行するが、途中で盗賊の白狼に襲われる。そこに近衛大将・佳卓が助けに来た…のだが…。 才色兼備で身分も高いがアクも強い上官・佳卓のもと、傲岸不遜な白狼とともに宮仕えに馴染んでいく翠令。しかし、佳卓と双璧と称される文官随一の能力者・円偉の影がちらつくようになる。 京の都を追われた元野盗の白狼が、やんごとない悲劇の姫君につきつけた要求とは? 円偉が愛しているのは、男か女か、それともそれを問うても無駄なのか? そして、追い詰められた皆を救うため佳卓が講じた奇策とは? 平安時代を舞台に、恋と友情と主従愛、そして政争とがダイナミックにからむファンタジー。人間ドラマをお楽しみください! 完結済みの草稿があり、定期的に推敲の上で投稿しています。完結するのは確かですので、その点についてはご安心下さい。 カテゴリーを「歴史」にしていいのかかなり悩みましたが、転生するなど物理的にあり得ない要素は拙作には無く、実在しないキャラとはいえ、地に足のついた戦いをするので「架空戦記」に近いのかな……と今のところ解しております。運営様が異なる判断をなさいましたらもちろんそちらに従います。

女髪結い唄の恋物語

恵美須 一二三
歴史・時代
今は昔、江戸の時代。唄という女髪結いがおりました。 ある日、唄は自分に知らない間に実は許嫁がいたことを知ります。一体、唄の許嫁はどこの誰なのでしょう? これは、女髪結いの唄にまつわる恋の物語です。 (実際の史実と多少異なる部分があっても、フィクションとしてお許し下さい)

背徳者  暴君と呼ばれた皇帝

月島 成生
歴史・時代
 ローマの五代皇帝、ネロ。  後に暴君とされた彼の治世は、晩年こそ荒れはしたが、最初期の5年はローマにおいてもっとも平和と評されることもあった。  十七歳で帝位についた、美貌の少年皇帝。  聡明なネロを壊れさせたもの、それはなにがあっても隠さなくてはならない、自身の秘密にあった――

柳生十兵衛の娘

戸部家尊
歴史・時代
史実では、剣豪・柳生十兵衛三厳には松と竹という二人の娘がいたという。 柳生十兵衛の娘、竹(たけ)はある日、父への果たし状を受け取る。 だが父が不在のため、代わりに自らが決闘に挑む。 【こんな方にオススメの小説です】 ■剣豪ものの時代小説が読みたい。 ■本格的なチャンバラが読みたい。 ■女性剣士の活躍が見たい。 ■柳生十兵衛の出る小説が好きで今まで他の作品も読んできた。 ※ノベルアッププラスにも掲載しています。 ※表紙画像はイラストACのフリー素材を使用しています。

処理中です...