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恋人バリバリ最高貴方が世界で一番好きよ好きよ好きよハートフルエキセントリックシャイニングゴールデンボンバー明日の風は明日吹く恋人仕様パフェ

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「キュル! キュルル!」
「え? ちょっと! どこに入ってるのよ!」
「お前、何てうらやまけしからん場所に!」
「もう、懐かれてるのは嬉しいけど……」

 リスは何と彼女の胸元に入り込んだのだ。そしてその感触を味わうかのようにもぞもぞしたあと頭だけど胸元から出した。

 そしてその視線は『あーこの場所最高。この世の天国なんじゃないかな? あれ? アンタ、この天国に近いけど来なくていいの? 気持ちいいのになー? あ、そっか、アンタじゃ来れないんだ。はは! ざまあないねえ!』みたいな事を考えている時の顔だ。絶対そうに違いない。

 リス風情が、何て事を考えてやがる。しかし、今の俺に奴と同じことなど出来はしない。やろうとすることは出来るかもしれないが、やった瞬間豚箱行きは免れないだろう。

 ならばどうする。どうする? 奴に一泡吹かせてやりたい。そうだ、こうしてやるのがいいかもしれない。

「なぁ」
「何? ちょっとこの感じ恥ずかしいんだけど」
「ちょっとそっち行っていい?」
「このタイミングで!? 何で!? 唐突過ぎない?」
「大丈夫。何もしないから。そっちに行きたくなっただけだから」
「聞いてもないのにそんなこと言ってくるなんて、ほんとに大丈夫なの?」
「大丈夫。俺を信じてくれ。俺の目的は君というよりもそのにくきネズ公、いや、リスを撫でたいからなんだ」
「ちょっと不穏な言葉が聞こえた気がするけど……。酷いことしちゃだめだよ?」
「分かってる。ちょっと仲良くするだけさ」

 俺は彼女に許可を取ったので彼女の隣へと向かう。彼女は俺が入りやすいように荷物を奥に置いて、自身も少しずれてくれた。

「ありがとう」
「いいけど、そんなに触りたかったの?」
「ああ、とっても……」

 俺は奴に手を伸ばす。そのそして奴をひっとらえてそこからぶっこ抜くのだ。そんな最高の場所に居座ることは仏が許しても俺が許さん。

「ほら、仲直りしようぜ。ヒマワリの種もやるからさ」

 かと言って、ここで奴に鬼気迫る顔で近づいても警戒されるだけ、それに彼女にも酷いことはしないと言ってしまった。だから表面上は仲良くする気ですよと言った風を装って笑顔で奴に近づく。この表情を浮かべていれば彼女は当然のこと、獣畜生なんて餌に釣られてころりよ。

「いて!」
「大丈夫?」

 俺はヒマワリの種をあげようと伸ばした指からブツだけ奪われて、指を引っかかれてしまった。クソ、ネズミ風情が見破るとはやるじゃないか。

 俺は奴を睨みつけていたが、それを遮る物があった。

「ちょっと、何でそんな危ない目を向けてるのよ。いつ喧嘩してたか知らないけど、酷いことはしないって言ったじゃない」

 彼女がジト目で俺のことを見ていた。

 違う、違うんだ。俺は悪しきネズミから君を助けようとしている言わば騎士、そう、騎士なんだ。だから信じてくれ。……そう言っても君はネズミに魔法にかけられていて気付いてはくれないだろう。ああ、何てことだろうか。

「そ、そんなことはしないよ。ただ、ちょっと引っかかれて顔に出ちゃっただけさ」
「それだったらいいけど」

 彼女が信じてくれたのかは分からないが手は降ろしてくれた。これで奴までは一直線。何か出来そうな気もするが、流石にやることはしない。

 しかしいい案は思いつかない。代わりに少し負けた気がするが次の作戦だ。

「それでどうする? ここのケーキ美味しかったし、もう一個くらい食べる?」
「え? いきなりだね。でもどうしよう、確かに美味しかったけど……。結構お腹は膨れてるのよね」
「じゃあ夕飯をちょっと遅くしてさ。この後、運動とかしてもいいんじゃないかな?」
「運動? 家の手伝いで運動はしてるのにな……」
「それでもスポーツとかとは違うからさ。一度やってみよう」
「そこまで言うなら……まぁ」
「だったら、ケーキ選ばないとね。どれがいい?」

 俺は机の奥にあるメニューを取り、それを彼女に拡がるように見せる。その時に俺はリスに口パクでこう言ってやる。

『お前は蚊帳の外なんだよ。所詮はネズミもどき。一生巣穴で引きこもってな!』

 奴に通じたかどうかは分からないが、奴は目の色を変えた。

 彼女はメニューを見てどれにしようか真剣に悩んでいる。

「キュル! キュルル!」
「え? ちょっと痛いってば!」
「キュルル!?」

 は、自爆ったな愚か者めが、彼女のそんなデリケートな場所で暴れればどうなるか分かるだろうに!

 彼女は自身の胸元をひっかくエロリスを引っこ抜きテーブルの上に置く。

「もう、痛いじゃない」
「キュルル……。キュル」
「そんな顔してももう入れません。恥ずかしいんだから」

 リスは反省した顔を浮かべて頭を彼女に向かって下げている。

 しかし俺には分かる。奴はその下げた顔の下で復讐を誓っているであろうことを。

 俺は油断しない。これは男と男、オスとオスの尊厳をかけた戦いなのだ。

「大変だったね。他にいいリスは居ないのかな?」

 俺はそう言って周囲を探す。そこには数匹俺達の事を見つめているリスたちがいた。ただし、そのリスたちはさっき俺から餌を持っていったやつではなさそうだ。

 俺がそう言ったのを気にしているのか、リスは思いのほかショックを受けた顔をして彼女を見つめている。

「そんな顔しないでよ。大丈夫。これだけで嫌いになったりしないから」
「キュルル……」
「もう、次からは変なことしちゃダメだよ?」
「キュルルルル!」

 そう言ってリスは彼女の手のひらの上に載って、彼女に頬刷りをされている。そしてしっかりと視線で、『アンタにはこんなこと出来んやろ? いやー申し訳ないなあ。こんなことさせてもらって。あー、彼女のお肌ツルツルー!』って顔をしてやがる。マジでこいつしばき倒してやりたい。毛皮でわかんねえだろうが。

 だが、それを俺が邪魔するのは流石にタイミングが悪すぎる。ちょっと空気読もうって言われることが目に見えているからな。

 俺は大人しく、メニューに目を落として1人と1匹が落ち着くのを待った。

「それで、どれがいい?」

 もうそろそろいいだろうと思って俺は彼女にメニューを差し出す。

 彼女も同様にもういいかなと思っていたのか、リスから離れてテーブルの上に戻した。

「うーん。どれも美味しそうなんだよね」
「だよな。いっそのこと目を瞑って指さした所でいいかもしれない」
「それ面白そう。やってみる?」
「いいぞ。じゃあ呼ぶか」
「うん、あ、でも同じ商品だったらやり直しね」
「分かった」

 ボタンを押して店員さんを呼ぶ。

「いかがいたしましたか?」
「注文をしたいんですが」
「はい。何になさいますか?」
「私は……これ」
「畏まりました」

 彼女は目を閉じて指を指したのはスフレだった。なるほど、その選択肢もあるのか。

 今度は俺の番だな。俺が目を閉じて彼女が目の前にメニューを持ってきてくれる。

「じゃあ俺は……これ」
「流石にやめた方がいいんじゃ……」
「男に二言はありません。これで」
「畏まりました。それでは少々お待ちください」

 そして店員さんは帰っていく。俺はその姿を見送った。

「俺は何を頼んだんだ?」

 確認する前に指を放してしまったから見えなかった。

「来たらわかるよ。まさかあれを選ぶなんて……」
「?」

 彼女がリスと突き合って遊んでいる。クソ。ケーキが来るまではこのままか。

「ていうか餌がないのに本当に懐かれてるんだな」
「そう? そうかもね。他の人達もサービスで遊んでもらってるんじゃない?」
「そうなのか?」

 周りのリスたちを見回すが、大抵餌を上げて喜んでいるか、撫でて貰って喜んだりしている。

 大抵のリスは上に登ったりしているので、テーブルの上にいるやつばかりではないらしい。

 じゃあ飯を食ったのにここにいるこいつは意外といいやつなのか? と思って奴を見ると、奴は俺を見て、『せやろ? 本来ならもう巣に帰ったりすんのをサービスでここに居てるんやで? 感謝しや?』と言っている感じがする。

 しかしこいつは彼女の側から離れる感じもなく、俺が手を伸ばせば警戒して彼女の肩に乗っていた。

 こいつ……と思っていたところでケーキが、いや、ケーキだと思っていた別の物が届く。

「こちらがスフレと恋人バリバリ最高貴方が世界で一番好きよ好きよ好きよハートフルエキセントリックシャイニングゴールデンボンバー明日の風は明日吹く恋人仕様パフェです」
「何て?」
「こちらがスフレで恋人バリバリ最高貴方が世界で一番好きよ好きよ好きよハートフルエキセントリックシャイニングゴールデンボンバー明日の風は明日吹く恋人仕様パフェです」
「……」

 店員さんはさも当然といったように言っているが、その意味が分かっているんだろうか。意味というか……よく覚えたなこの名前。

「ここに入ってこの名前を覚えるまではフロアに出られませんので」
「マジかよ。どこに力入れてるんだ」

 リスの教育とか他にやることがあるんじゃないのか。

「そういう趣旨のお店ですので」
「ああ、そうだったの……」
「それでは失礼いたします」
「あ、はい」

 店員さんは颯爽と帰っていく。流石だ。あんな恥ずかしそうな名前、俺なら絶対に言えない。言えないどころか覚える前にやめてしまうかもしれなかった。

「これは凄いな」
「だね。量もかなりあるんじゃない?」
「名前の感じからして2人用なのかもな」

 恋人バリバリ最高……まぁいい。パフェと言われていたが、見た目は本当にパフェその物だった。器はおしゃれなジョッキに入っていて、薄っすらとピンク色になっている。その中には下からゼリー、クリーム、コーン、クリーム、様々なフルーツが層になっていて、その上に色んな種類のフルーツやクッキー等が載っていて、量も一人で食べるには過剰だ。ご丁寧にスプーンも2つついているのでそう言うことなのだろう。

「なぁ」
「何?」
「手伝ってくれないか?」
「いいよ。時間もあるからね……それまでに食べないと」
「そう言えば時間制限もあったんだな」
「そうだよ。それじゃあ食べようか」
「助かる」

 味はめっちゃおいしかった。
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