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1章

第6話 街道封鎖

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「危険だから行くの禁止ですの!?」

 わたくし達はカレドニアに向かおうと思っていたのですが、そちらの方の衛兵に止められてしまいました。

 衛兵さんは詳しい話を教えてくれる。

「そうなんだよ。こっちの方で危険な魔物が出たんだ。その魔物を討伐をするために村一番の冒険者を派遣したんだが、撃退されてな。それで急いで近隣の街に冒険者を募っているところなんだ。だから待っていてくれ」
「どれくらい待つのですか?」
「さぁなぁ……主要街道じゃないから、そこまで急がないはず。前の時は1か月くらいかかったかな」
「1か月……」

 どうしましょうか、そんなことをしている時間は……。
 と思いつつも、移動にかかる時間を考えても仕方ないかしら。
 でも……。

「それは……困っていらっしゃる方が結構おられるのでしょうか?」
「? 当然だ。主要じゃないと言っても、王都とカレドニアを結ぶ途中の村だからな。魔物は倒さないといけないし、柵を直したり村の警備も強化しないといけないんだ。特に少し離れた所にある見張り台の修理をしないといけない」
「見張り台の修理……ですか」
「ああ、魔物は森にいるんだが、近づいて来た時にそこで見つけないと村が危ない。その修理のために木材を取りに行きたいところだが、その森の近くに魔物が潜んでいてな。こちらから向かって討伐をするのか、見張り台や柵の修理を無理くりしてして、この村で耐えるのか、村長達は話しているよ」
「急がないと被害が増えるのでは? 耐えられるんですの?」

 わたくしが聞くと、衛兵さんは悲しそうな顔で頷く。

「そうだけど、それで冒険者が怪我をして、この村を守ることができなくなるかもしれない。戦力も資金も足りないこの状況で、簡単には選べないんだ」
「なるほど」
「ああ、まぁ、村の中に居れば外よりは安全だから、それは気にしないでくれ。俺達が守るからな」
「……ありがとうございますわ」

 わたくしは衛兵さんに一礼をして、それから来た道を戻って2人と話す。

「ティエラ、マーレ。護衛の冒険者を雇えないでしょうか?」
「クレア。いきなり過ぎるぞ」
「どうしてそう思ったのか話して欲しいな」
「ええ、わたくしは今、それなりにお金を持っていますわ。なら、そのお金を使って冒険者を雇い、伐採に行きます。そして、戻ってきて、見張り台の強化をわたくしのスキルでできないかな……と思ったのです」
「どうして君がそこまでするの?」

 マーレは優しく聞いてくる。

「困っている人がいるからですわ。わたくしは貴族……元ですが、困っている人々に手を伸ばす。それをすることは優雅なことだと思います。だから、わたくしはそうしたいのです」

 わたくしの言葉に、ティエラとマーレが答える。

「クレアは優しいな」
「だね。こんな途中で寄っただけの村を身銭を切って助けようだなんて、素敵だ」
「褒めても何も出ませんわよ?」
「違うぞ。俺達は心の底から思っているんだ」
「だね。だから、そうだね……クレア。僕達だけでいかない?」
「行くとは?」
「伐採にだよ」

 マーレの言葉に、わたくしは目が飛び出そうになる。

「駄目ですわ。それは危険です。ティエラとマーレはわたくしの大事な家族ですわ。危険な目に遭って欲しくありません」
「俺達は強いぞ?」
「でも、もしもがあるかもしれませんし、傷付いた2人の姿は見たくありません」

 わたくしはそう言って視線を地面に落とす。
 小さな頃からずっと一緒にいた。
 家族同然の2人。
 その2人が怪我をする所なんて絶対に嫌だ。

 それくらいなら、持っているこの金貨を全て失った方がいい。

 ペロ。

 温かい何かが頬を舐める。

「ティエラ……」
「心配そうな顔をしないでくれ」
「でも……」
「俺の足の速さを知っているだろう? 今までクレアは一度も追いつけていないっていうことは忘れたのか?」
「覚えていますわ」
「今回、王都からここまで徒歩で1か月の距離を走りきったんだぞ? だから危ない魔物が出たら逃げる。それでいいだろう?」
「確かに……」

 昔から良く遊んでいたけれど、ティエラに追いつけたことは一度もなかった。

 その足の速さであれば……大丈夫……か。
 むしろ、こうやって言ってくれているのに、それを信じないこともきっと問題だと思う。

 わたくしは顔をあげ、ティエラの顔を抱きしめる。

「分かりました。ティエラがそう言って下さるのであれば、信じます。早速行きましょう!」
「ああ!」
「うん」
「え? マーレは足の速度的に無理なのでは……」
「大丈夫。僕も本気を出したら速いから。安心して」
「分かりましたわ。早速行きましょう」

 ということで、わたくし達はこそこそっと、バレないように村から脱出した。
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