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8章 王都ファラミシア2
153話 奴隷からの脱却
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「モルドさん?」
「サクヤ様。あなたはこんな者の下にいていい人物ではありません」
モルドさんは辺境伯を見てそう言う。
辺境伯は表情こそ変わらないが、雰囲気はとても重たくなった気がする。
「もう一度言ってみろ」
辺境伯はじっとモルドさんをにらみつけ、淡々と言う。
「サクヤ様は、あなたのような小物の下につくべき人物ではないと申し上げました」
「………………」
辺境伯は無表情のままで、その後ろにいる側近は冷汗を流して目をキョロキョロさせている。
「そうか……」
辺境伯はそう言ってわたし達に背を向け、部屋から出て行く。
意外と拍子抜けするな……と思っていたら、彼はケルベロスに向かって言う。
「その男を殺せ」
「ガロロロロロ!!!」
辺境伯が言うや否や、ケルベロスはモルドさんに襲いかかる。
「くっ!」
「ガロロロロロォォォ!!!」
モルドさんはその強さに見合うように、ケルベロスの攻撃を何とかしのぐ。
幸いなことなのか、ケルベロスの体は大きい、なので、この部屋に全てを入れることはできないようだった。
しかも、頭が3つもあるけれど、その大きさの所為で中央の1つしか部屋の中に入れられない。
モルドさんが必死にしのいでくれているけれど、ケルベロスが中に入って来れるようになったら……。
「甘い!」
「ガロロロロォォォ!!!???」
モルドさんの掌底がケルベロスの顎を捉え、思い切りのけ反って壁に頭をぶつける。
「これでも鍛えているので。犬程度には負けません。サクヤ様に手出しできるとは思わないことです」
「ガロロロロロロロロロロ!!!」
モルドさんが煽っているのが伝わったのか、ケルベロスはよだれを撒き散らし、目を充血させてモルドさんに向かってくる。
速度はさっきよりもあがった気がする。
わたしの目には見えないけれど、モルドさんはしのいでいた。
でも、このままではいずれモルドさんは……。
わたしが隙を見て外に出られたら魔法で何かできないだろうか。
でも、その入り口はケルベロスに封鎖されているので、出られない。
なんとか隙を見つけて……。
「下がっていてください!」
「すいません!」
どうにか出ようと思ったけれど、モルドさんに声で止められてしまった。
ならなんとかできないかと思って思考を巡らせる。
そう思ったら、ここからなら魔法を使えるのではないだろうか。
今まではモルドさんと文字の勉強ができるということで、それが楽しみでもあった。
それで文字を覚えることが優先だと思っていたから。
でも、空いている今なら……。
わたしは少しでも扉近くにいて、モルドさんに怒られないような距離で魔法を唱える。
「〈結界の創生〉」
でも、魔法は使えなかった。
わたしの中の魔力も動かせなかったからだ。
「ダメ……か」
「ほう、小娘、結界魔法が使えるのか。やはり貴様は吾輩の部下にせねばな」
「……」
「ケルベロス。その小娘は決して殺すなよ」
わたしが隠している魔法もあの男にバレてしまった。
なんとか……。
わたしはそう思ってアイテムボックスに手を入れる。
どうせバレるとしても、このままではモルドさんが死んでしまう。
そうさせないためにわたしができることをしないと。
そう思っているけれど、アイテムボックスの中には食べ物と、ケンリス周辺でしか使えない結界の魔道具くらいしかない。
今のわたしに……できることはなにもない。
「はぁっ!」
モルドさんは頭1つだけとはいえ、ケルベロスと互角に戦っている。
相手の噛みつきを避け、牙に拳を叩き込む、牙を掴んで頭を扉にぶつけるといったことをしてダメージを稼いでいた。
「ケルベロス! Sランクの魔物がそんな奴隷風情に負ける等許さんぞ!」
「ガロロロロロロロ!!!」
辺境伯の言葉に、ケルベロスは大口を開けてモルドさんに向かう。
「大振りが過ぎる」
ゴン!
モルドさんがその行動を咎めるように拳をケルベロスの目に打ち込む。
「ガロロロロロロロ!!!???」
「すごい……」
ケルベロスは後ろに下がり、モルドさんを警戒しているのか前に出てこようとしない。
これなら……モルドさんならもしかして……。
「ガロロロロ!!!!」
そう思った次の瞬間、ケルベロスは右の頭をこちらの中に入れてきた。
「速い!?」
ケルベロスは頭によって素早さが違うのか、モルドさんは反撃できずに回避で精一杯だ。
そんな時、強い衝撃がわたし達を揺らす。
ドゴオン!
「っ!」
戦っている最中、ほんの一瞬、その衝撃でモルドさんの注意がケルベロスから外れた時に、彼の左腕にケルベロスに食いつかれる。
彼はそのまま部屋の外に引き釣り出された。
「モルドさん!」
わたしは彼の後を追いかけ、部屋から飛び出る。
モルドさんは部屋のすぐ側、わたしの隣に倒れていた。
わたしの目の前では、ケルベロスの頭が3体ともモルドさんを凝視している。
「やれ」
辺境伯の言葉に、わたしは飛び出した。
「待って!」
わたしはモルドさんに覆いかぶさるように体を投げだす。
そして、ケルベロスの爪が……。
「サクヤ様。あなたはこんな者の下にいていい人物ではありません」
モルドさんは辺境伯を見てそう言う。
辺境伯は表情こそ変わらないが、雰囲気はとても重たくなった気がする。
「もう一度言ってみろ」
辺境伯はじっとモルドさんをにらみつけ、淡々と言う。
「サクヤ様は、あなたのような小物の下につくべき人物ではないと申し上げました」
「………………」
辺境伯は無表情のままで、その後ろにいる側近は冷汗を流して目をキョロキョロさせている。
「そうか……」
辺境伯はそう言ってわたし達に背を向け、部屋から出て行く。
意外と拍子抜けするな……と思っていたら、彼はケルベロスに向かって言う。
「その男を殺せ」
「ガロロロロロ!!!」
辺境伯が言うや否や、ケルベロスはモルドさんに襲いかかる。
「くっ!」
「ガロロロロロォォォ!!!」
モルドさんはその強さに見合うように、ケルベロスの攻撃を何とかしのぐ。
幸いなことなのか、ケルベロスの体は大きい、なので、この部屋に全てを入れることはできないようだった。
しかも、頭が3つもあるけれど、その大きさの所為で中央の1つしか部屋の中に入れられない。
モルドさんが必死にしのいでくれているけれど、ケルベロスが中に入って来れるようになったら……。
「甘い!」
「ガロロロロォォォ!!!???」
モルドさんの掌底がケルベロスの顎を捉え、思い切りのけ反って壁に頭をぶつける。
「これでも鍛えているので。犬程度には負けません。サクヤ様に手出しできるとは思わないことです」
「ガロロロロロロロロロロ!!!」
モルドさんが煽っているのが伝わったのか、ケルベロスはよだれを撒き散らし、目を充血させてモルドさんに向かってくる。
速度はさっきよりもあがった気がする。
わたしの目には見えないけれど、モルドさんはしのいでいた。
でも、このままではいずれモルドさんは……。
わたしが隙を見て外に出られたら魔法で何かできないだろうか。
でも、その入り口はケルベロスに封鎖されているので、出られない。
なんとか隙を見つけて……。
「下がっていてください!」
「すいません!」
どうにか出ようと思ったけれど、モルドさんに声で止められてしまった。
ならなんとかできないかと思って思考を巡らせる。
そう思ったら、ここからなら魔法を使えるのではないだろうか。
今まではモルドさんと文字の勉強ができるということで、それが楽しみでもあった。
それで文字を覚えることが優先だと思っていたから。
でも、空いている今なら……。
わたしは少しでも扉近くにいて、モルドさんに怒られないような距離で魔法を唱える。
「〈結界の創生〉」
でも、魔法は使えなかった。
わたしの中の魔力も動かせなかったからだ。
「ダメ……か」
「ほう、小娘、結界魔法が使えるのか。やはり貴様は吾輩の部下にせねばな」
「……」
「ケルベロス。その小娘は決して殺すなよ」
わたしが隠している魔法もあの男にバレてしまった。
なんとか……。
わたしはそう思ってアイテムボックスに手を入れる。
どうせバレるとしても、このままではモルドさんが死んでしまう。
そうさせないためにわたしができることをしないと。
そう思っているけれど、アイテムボックスの中には食べ物と、ケンリス周辺でしか使えない結界の魔道具くらいしかない。
今のわたしに……できることはなにもない。
「はぁっ!」
モルドさんは頭1つだけとはいえ、ケルベロスと互角に戦っている。
相手の噛みつきを避け、牙に拳を叩き込む、牙を掴んで頭を扉にぶつけるといったことをしてダメージを稼いでいた。
「ケルベロス! Sランクの魔物がそんな奴隷風情に負ける等許さんぞ!」
「ガロロロロロロロ!!!」
辺境伯の言葉に、ケルベロスは大口を開けてモルドさんに向かう。
「大振りが過ぎる」
ゴン!
モルドさんがその行動を咎めるように拳をケルベロスの目に打ち込む。
「ガロロロロロロロ!!!???」
「すごい……」
ケルベロスは後ろに下がり、モルドさんを警戒しているのか前に出てこようとしない。
これなら……モルドさんならもしかして……。
「ガロロロロ!!!!」
そう思った次の瞬間、ケルベロスは右の頭をこちらの中に入れてきた。
「速い!?」
ケルベロスは頭によって素早さが違うのか、モルドさんは反撃できずに回避で精一杯だ。
そんな時、強い衝撃がわたし達を揺らす。
ドゴオン!
「っ!」
戦っている最中、ほんの一瞬、その衝撃でモルドさんの注意がケルベロスから外れた時に、彼の左腕にケルベロスに食いつかれる。
彼はそのまま部屋の外に引き釣り出された。
「モルドさん!」
わたしは彼の後を追いかけ、部屋から飛び出る。
モルドさんは部屋のすぐ側、わたしの隣に倒れていた。
わたしの目の前では、ケルベロスの頭が3体ともモルドさんを凝視している。
「やれ」
辺境伯の言葉に、わたしは飛び出した。
「待って!」
わたしはモルドさんに覆いかぶさるように体を投げだす。
そして、ケルベロスの爪が……。
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