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7章 スウォーティーの村

135話 小麦畑

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「もうちょっと詳しく教えて!?」

 わたしは木像になった青龍を手に持ち、揺すって話をしてくれるように求める。

 青龍はスッと再び元の姿になって、宙に浮く。

「教えろと言ってもな。そう感じるとしか言いようがない」
「理由があるんじゃなくって、なんとなくそう感じる……ってこと?」
「そうだ。だから一度本当かどうか調べるように言うのがいいだろう」
「なるほど……」
「では」

 シュン。

 青龍はまたしても木像に戻ってしまった。
 やっぱりこれでいるのが好きなんだろうか。
 よくわからない。

「先生、とりあえず、村に戻って報告が先ですかね?」
「そうだね……これは……ちょっとぼくらの手だけには追えないかな」
「ですよね……」

 ということで、わたし達は急いで村に戻って報告をすることになった。


「それは本当ですか!?」
「ええ、本当です。至急、王都に早馬を送ってください」
「かしこまりました! 急げ! この村の危機だぞ!」

 先生が村長さんに言うと、すぐに行動に移してくれた。

 こういう時は流石先生の知名度だと思う。

「さて、村や王都にはこれでいい。後は原因となっている魔物、おそらく新種のビーバーの魔物が原因だと思う」
「はい」
「なのでここは……」

 先生ならきっとすごい解決策を出してくれるに違いない。
 そんな期待を込めた目でみていると、先生は苦笑いする。

「期待してくれている所悪いけど、人海戦術だよ」



 ということで、養蜂園の従業員を最低人数だけ残し、それ以外の人を捜索に当てることなった。
 魔力での捜索ができないということで、人数を集めてビーバーを発見するという本当の人海戦術だ。

 ほぼ全員が集まると、意外と数がいたらしく、100人近くの大所帯になっている。

「すごい……こんなにも従業員の方っていたんですね」
「まぁね。ハニーキラービーのはちみつは絶品だから、結構費用をかけて維持しているんだ。はちみつの収穫に花や木々の手入れもある。まぁ、それに足る収入も得ているしね」
「流石先生、すごいです」
「長く生きているだけさ。それよりも、ぼくも捜索するんだけど、サクヤ君も来てくれるの?」

 わたしとしては当然そのつもりだったのだけれど、先生はどうやらそれが不思議だったようだ。

「もちろんですが……」
「そうか、ありがとう。捜索なんてつまらないことがほとんどだからね。君が手伝ってくれて嬉しいよ」
「この村のためですからね! 手伝いますとも!」

 甘くて美味しい物がいっぱいあるこの村にはなくなって欲しくないと強く思う。
 それに、ミエーレさんの作るお菓子ももっと食べてみたい。

 わたしが笑顔でそう返すと、先生は優しく微笑んで頭を撫でてくる。

「君がいてくれたら、つまらない時間ではなくなるかもしれないね」

 ということで、わたし達は例のビーバー探しが始まった。


「見つかりませんねぇ……」

 わたし達が森で捜索を始めて2時間、ヴァイスとルビーはとっくのとうに飽きてウィンの上で気持ちよさそうにお眠りしている。
 正直羨ましい。

 わたしがそんな目を向けていると、ウィンが念話で話しかけてくる。

『サクヤも乗るか?』
『ううん。わたしも探すからいいよ。ありがとう』
『だが、俺の上から探した方が見つかりやすいのではないか?』
『そういうのは先生とか、他の人に任せるから大丈夫。わたしは下の目線から見つけてみせるよ』
『そうか、いつでも待っているからな』

 わたしはありがとうの意味を込めてウィンの背中を撫でる。
 ウィンの背中はサラサラしていて、スッと毛に手が入っていく。
 こんなことをもっとしたい……とも思うけど、今はビーバーを見つけなければ。
 そう思って探すのだけれど、全然見つからない。

「にしても見つかりませんねぇ」
「そうだね……これなら川に見張りを立てておいた方がいいかもしれない」
「川にですか?」
「うん。もしかしたら今は森にいなくて、川に逃げている可能性もあるからね。さっきサクヤ君に見つかってしまったから、一度巣に逃げ帰った……ということはあるように思う」
「では……そちらを探す感じですかね?」
「うーん……でも、ただじっと川を見つめるのも辛いと思うけど……。水の中を探せたらまた話は違ったのかもしれないんだけどね」

 うーん。
 魔法で見えない相手っていうのはすごく厄介だな。
 なんとかならないかと思うけれど、別に魔法で探すだけが全てではないんじゃないのだろうか。

 例えば、

「ウィン、魔法を使って川の中に入って探す……っていうことはできる?」
「川の中に……どうやってだ?」
「わたし達の周りを風の結界で囲って、空気で壁を作るの。それで、上から時々酸素を持ってきてくれれば、安全に探せないかな?」
「やったことはないが、できる……と思う」
「なら、それはどうですか?」

 わたしは確認のために、先生に向かう。

「おお、ウィン様だからできることだね」
「はい! それなら、水の中を目視で探せるんじゃないですか?」
「サクヤ君は天才だな!」
「そ、そうでしょうか……」
「ああ、君なら学院にも入学できるだろう。口添くちぞえをしてもいい」

 先生は笑顔で言ってくるけれど、わたしにはその学院のことはよくわからない。

「そ、それはいいので……探しに行きませんか?」
「おっと、そうだったね。ぼく達だけでいいかな? 従業員全員等ということになったら、絶対にそんな凄まじい魔法の持ち主は誰だという話になるからね」
「そうですか……なら、今回の潜るのも黙っていた方がいいですか?」
「いや、今回はたまたまそういう魔道具をぼくが持っていた。ということにしよう。それなら説明してからやれると思う」
「なるほど」

 流石先生だ。
 しっかりとそういう所にも気を回してくれる。

 それから、わたし達は他の従業員の人達に説明して、川に潜ることになった。

『では行くぞ』
「うん」
「いつでもどうぞ」
『〈風の結界〉』

 ウィンが魔法でわたし達を包んでくれて、そのまま川の中に入っていく。

******

***???視点***

 まずい……まずいまずいまずい。
 このままではあれば見つかってしまうかもしれない。
 ただでさえ、小麦のことが見つかってしまったのに……。

 なんとかしなければ……。

 幸い、今回の原因を探るなら、奴らはあそこに辿りつくはずだ。
 それなら……。

「消えてもらうしかない」
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