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7章 スウォーティーの村

126話 体の柔らかさ

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「外は久しぶりですね~!」
「そうなのかい?」
「はい! ずっと王都の城壁に囲まれていましたから!」

 わたし達はいつものメンバー……わたしと従魔達、それに先生で王都の外に来ていた。

 院長やボルツさん達との別れは先生が済ませてくれたので、10人の道案内をつける必要はなくなった。
 デル君達には、院長が後で説明するからすぐに行っていいと言ってくれた。
 もしもあいさつをしていたら、半日は潰れるだろうから……と。
 後は宿の人にクロノさん達への伝言も残してあるので完璧だ。

 わたしは城壁に囲まれていない、遠くまで見ることができる景色を久しぶりに楽しんで進む。
 そして、わたしは今ウィンの背から降りていた。

「ウィン様の背には乗らなくてもいいのかい?」
「はい。王都にいる時本当にずっと乗っていて、ちょっと階段を試しに登ったら息が上がってしまったので、少しは運動をしないとな……と」

 ウィンは少し残念そうだったけれど、わたしが寝たきりになってもいいのかと聞いたら納得してくれた。
 それに、これ自体には他に意味もないこともない。
 これから甘い物をいっぱい食べるのだ、動いておいた方が絶対にいいからだ。

「そうだね。確かに自分の足で歩くことも重要だと思う」
「はい!」
「だけど、危ないと思ったらウィン様を頼るっていうことは忘れないでね? サクヤ君に何かあったらみんな悲しむから」
「分かりました!」

 わたしはそう彼に返事をしてトテトテと歩く。

 ウィンと先生はわたしの歩く歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれる。
 ヴァイスとルビーはわたし達の周りで追いかけっこをしていて、楽しそうにはしゃいでいた。

「サクヤ君達は王都でどんなことをしていたんだい?」

 先生がそう聞いてくれたので、わたしは王都であったことを先生に話す。

「すごいね! 問題を解決したのはサクヤ君か」
「いえ、わたしは特に……クロノさん達が今も頑張ってくれていますから!」
「それもだけどね。君の働きが無かったら、本当に大変なことになっていただろうねぇ」
「そ、そんな……というか、先生の方はどうだったんですか!?」

 なんかわたしの手柄とかの話になりそうだったので、ちょっと強引に変える。

「ああ、こちらは特に問題はなかったけど……」
「けど……?」
「みんなサクヤ君に会いたがっていたよ。また遊びに来てほしいとね」
「みんな……」
「うん。クー・シーやアベルとか……皆だよ」
「そうですね……どこかのタイミングでまた遊びにいきたいです!」

 今は王都を出るので面倒だけれど、転移魔法を覚えられれば……と思わないでもない。
 魔法都市とか……そこに行ったら覚えられるのかな。
 正直そのためだけにも行ってみたいと思う。

「うん。いつでも待っているからね」

 そんな事を話していると、あっという間に夜になる。

 途中からは足が疲れてしまったので、ウィンが強引にわたしを背に乗せて進むことになった。

 野営の準備は先生がやってくれて、長年フィールドワークをやっているからか、その手つきは手馴れていた。

「さ、ご飯もできたよ」
「ありがとうございます……」

 わたしはなんとか鍛えようと思って歩き詰め過ぎて、軽く筋肉痛である。
 ヴァイスやルビーはずっと走り回っていたのに……羨ましい。

「ヴァイス……おいで」
「ウビャゥ? ウビャ!」

 わたしは座ったままヴァイスを呼んで抱っこしようとする。
 すると、ヴァイスが伸びた。

「ん!?」
「ウビャ?」
「ねぇ……ヴァイス……成長した?」
「ウビャゥ?」

 何……? と首をかしげるヴァイス。

 わたしは彼を持ち上げようとしたんだけれど、後ろ脚はわたしのひざの上に乗っていて、上半身はいつものままだ。
 これはまごうことなき猫科のあれ! 抱っこしたら伸びると思うあれだ!

「すごい……やっぱりヴァイスは聖獣でも猫科なんだね……」
「ウビャゥ……? ウビャ!」
「キュキュイ!」

 わたしがヴァイスを伸ばして遊んでいると、自分もとルビーが出てくる。

 なので、わたしはヴァイスをそっとひざの上に戻し、今度はルビーを抱っこする。

「キュキュイ!」
「うそ、ルビーもこんなに伸びるの!? 知らなかった……」

 擬音にするとニョーンという感じでルビーが伸びた。
 今までは全身で抱っこしていたため、半身だけでやるとこんなことになるとは……。
 ちょっと楽しい。

「……」

 わたしはヴァイスとルビーを伸ばしたり、彼らに舐められたりしながら遊んだ。

 そして、後は眠りにつくだけ……という時に、ウィンがいつもの違った行動を取る。

「ウィン? いつもの……丸くなってうずくまる感じじゃないの?」
「今回はこれだ。いいから乗ってみろ」
「う、うん」

 いつものわたしがもたれかかる感じではない。
 ウィンは猫がニャンモナイトする時のように柔らかく丸まっている。
 犬なのにニャンモナイト……ならワンモナイト? をしているウィンの上にわたしは登り寝転がる。

「おお! すごい! すごいよウィン!」
「ふふん。だろう? 俺だって伸びることはできる」

 そう言って自慢そうに口元を歪ませる。

 ワンモナイトの姿で笑うのはちょっとおかしかったけれど、わたしにとってこの柔らかさは違っていた。
 今まではもたれかかって包まれていたけれど、今度の包まれ方はまるで違う。
 例えると、今までは高反発マットの上で寝て、ウィンの毛に包まれているような感じだった。
 でも今のは、低反発マット……いやウォーターベットに包まれて、更にその上から毛で包まれている。
 そんな状態なのだ。

「すごい! こんなこと出来たんだね!?」
「当然だ。俺は聖獣、できないことはない」
「それを今使うのはどうなんだっていう気持ちもするけれど……」

 もっとかっこいい時の使い道はなかったのだろうか。

「サクヤを驚かせる以上の使い道などない」
「さいですか……でもすごい!」

 ということで、わたしはウィンの体に潜り込み、素晴らしい寝心地を体験する。



 翌朝、わたしが目を覚ましたのは、日が高くなってからだった。

「ウィン……これは……本当にじっくり寝てもいい時だけにしよう。じゃないとずっと寝ていちゃう……」
「そうかもしれないな」
「先生。すいませんでした……」
「良い子は寝るものだ。寝なくては育たないからね。気にしなくてもいいよ」

 先生はこう言ってくれているけれど、わたしはこれを頼むのは時間が余っていて、翌日に用事がない時だけにしようと誓う。

 そして、それから半日ほどして、夕方になったくらいでわたし達はスウォーティーの村に到着した。
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