98 / 129
6章
110話 ヴェネルレイク
しおりを挟む
僕たちがレストラリアを出てから数日。
道中では何事もなく、次の街であるヴェネルレイクに到着していた。
「あれがヴェネルレイク……」
御者が教えてくれたので、僕たちの進む先には次の街ヴェネルレイクがある。
街の向こうには湖が広がっていて、名前の通り湖が関係している街らしい。
「ヴェネルレイクはどんな街なんですか?」
僕は一緒に乗っている師匠、特級回復術師のジェラルド・グランマール伯爵に聞く。
「ヴェネルレイクか? 入ってみれば分かる」
「入ってみれば……ですか?」
「ああ、口で説明することも出来るが、その目で見た方が何倍もいいだろう。その方が分かりやすいからな」
「分かりました」
師匠がそんな風に言うなんてどんなにすごいのだろう。
僕は胸を高鳴らせて馬車を街に進めた。
「サシャはこの街について何か知ってるの?」
「え……私……ですか?」
「うん。そうだよ?」
「私は……特には知らない……です」
「そっか……サシャ。最近……体調悪くない? 大丈夫?」
「え、ええ。私は問題ありません」
サシャはそう言ってどこか遠い空を見上げる。
「……」
「……」
僕と師匠は視線を合わせる。
サシャはレストラリアから出てきてからずっとこうなっていて、声をかけても大丈夫としか言わないし、メイドとしての仕事もミスがない。
本当に彼女がサシャであるのか不思議に思ってしまう。
でも、師匠にそれを聞いた時も、そういう事はあると言って今はそっとしておこうということになった。
なので、彼女がこうしてほしい。
そうなった時に力になろうということで話は終わった。
そんなことがありつつも、僕達の馬車はヴェネルレイクの中に入って行く。
街の外をまだかまだかと見ていると、すごいモノが見えてきた。
「これ……すごい……本当に……?」
街に入ってすぐに窓から見える景色、それは桁違いに派手な店がこれでもかと並んでいた。
「このドレスはいくらかしら?」
「そちらは金貨10枚になります」
「まぁ安い。今夜の舞踏会にいいかもしれないわね。もらいましょう」
「ありがとうございます! 夫人にしか似合わないと思っておりました」
「ええ、あたくしもそう思うわ」
店頭に並んでいる高価な服を即決で買う貴族の夫人がいたり。
「この宝石とか指輪。ここからここまでもらおうか」
「はい! ありがとうございます!」
「選ぶのは妻がドレスを決めてからでも問題ないからな」
「はい! 奥様と相談してよく似合うモノを選んでいただかれるのが素晴らしいかと思います!」
「ああ、それで失敗したからな……」
高価な服を買っていると思ったら、指輪やネックレス等の装飾品をたくさん買っている貴族の人もいた。
そんな風にたくさんの高価な物を販売している店がこれでもかと並んでいるのだ。
服飾店、装飾品店、本屋等々、本当に色々な店がある。
服飾店といっても、それは服だけを扱っている店や、靴だけを扱っている店、他にもドレスだけを扱っている店だったり、そもそもオーダーメイドしか作っていない店もあるようだった。
「師匠……これ……どういうことなんですか!?」
僕達が進んでいる間、目につく店は全て貴族用、そう言われても何もおかしくないような店しかない。
食事の為の店もあるけれど、それも全て貴族が来るための店。
そうだと確信できるような店にしか見えない。
というか店員さん以外、街を歩いている人は貴族とそのお付きの人間しか目に入らないのだ。
僕の疑問に対する答えは師匠が教えてくれる。
「これがこの街。ヴェネルレイクの特徴だな」
「この街の特徴……ですか?」
「そうだ。この街は訪れる貴族がとても多い。特に今の様な冬。そんな時はより多くの貴族が来ることになる」
「冬に……ですか?」
「ああ、ここヴェネルレイクは名前の通り湖の畔に作られた街。だから冬の間の移動は船で移動し、ここで時間を潰すという貴族も多い。冬は備えさえしっかりとしておけばそこまで問題が起きることは少ないし、そもそも代官をおいている者も多いからな」
「なるほど……だからこんなに多くの貴族がいるんですね……」
「そうだ。行ってみたい店はあるか?」
「僕ですか? そうですね……本屋にはやっぱり行ってみたいです! ヴィーと行った時にとっても楽しかったですし、ここにしかない本とかあるのなら読んでみたいです!」
「そうだな。ここは貴族が多く来るから、レストラリアよりも種類が多いだろう。魔法に関する本の種類もあるかもしれないな」
「そうなんですか!? というか、魔法を習う……という本があるんですか?」
「まぁな。普通は人に習って魔法を習得するのが普通だが、欲しい魔法を覚えている相手を探す、そして、その者が教えてくれる。ということ等考えて行くと難しいだろう?」
「確かに、誰でも魔法を使える訳ではないですもんね……」
「そういうことだ。だからこそ魔導書、と言われる魔法の覚え方を記した本を作るんだ」
「すごい! それならもっと多くの人が魔法を覚えたり出来るんじゃないですか!?」
僕の考えとしては、そういった魔法の本をたくさん作って、配ったりしたら魔法使いを増やすことができるんじゃないのか。
ということを思ったのだ。
そうしたら、もっと多くの回復術師が出てきて、たくさんの人を救えるようになるかもしれない。
でも、師匠は首を振る。
「エミリオ。お前の考えは素晴らしいが、それは難しい」
「どうして……でしょうか」
「まず、本の制作コストは高い。なので本……それも、魔法ということについて書かれた本が高くなるのは分かるな?」
「はい。わかります」
「では、本を買うことが出来る者は大抵が貴族だ。そして、貴族であれば、そんな高価な本を買うくらいであれば、他の貴族と交渉するなりして、魔法使いを雇うとは思わないか?」
「あ……なるほど……」
「それに、あまり魔法を平民に教えるべきではない。とする貴族も多くいる。だからそもそも魔導書を作ろうとする者が少ない。難しいところなんだ」
「そうだったのですね……」
「ああ、だが、エミリオ。お前の気持ちは素晴らしい物だぞ」
「そう……でしょうか?」
多くの人がやめるべき。
そう思っているのであれば、それは……やってはいけないような気持ちもする。
しかし、師匠は笑いながら話す。
「当然だ。魔法はようは道具と一緒だ。良い者が使えばいい方向に、悪い者が使えば悪い方向に。何でもそうではないか? この街の特産品である化粧品ですらそうなのだからな」
「はい。ありがとうございます! というか、この街の特産品が化粧品……ですか?」
「ああ、それは……」
師匠がそう言おうとした時、切り裂くような悲鳴が僕達の耳に届く。
「きゃあああああああ!!!」
「あの子! マーキュリーよ!」
「なんだと!? 誰か! 兵士を呼べ!!!」
外では誰かが叫び、兵士を呼ぶ声が聞こえてくる。
僕は何が起きたのかとそちらの方を見ると、フラフラとした女性が裏路地から出てくるところだった。
「だいじょ……ぐふっ!?」
僕はとりあえず助けに入ろうとしたら、思い切り首根っこを掴まれた。
掴んできた相手は、まさかのサシャだった。
「エミリオ様! 何があるか分かりません! 出るべきではありませんよ!」
「サシャ! でも、助けがいるかもしれないのに!」
「それはエミリオ様の仕事ではありません! 相手は何か病を持っているのかもしれないのですよ!? それ以外にも暗殺者の可能性もあるんです! レストラリアでは問題ありませんでしたが……ここではまだ分からないのです! だから気を付けて下さい!」
「ご、ごめん……」
サシャがあまりの剣幕で言って来るので思わず頷いてしまった。
「あ……す、すいません。エミリオ様。でも……もっとご自身の体を大事にしてください」
「は、はい……」
サシャにそこまで言われてしまえば、僕は出るべきではないのか。
そう思ったところに、師匠が口を開く。
「エミリオ。お前のやろうとしている気持ちはいいが、勢いだけで行くのは良くない。まずは仮面を被れ。それからおれの前には出ないこと。いいな?」
「いい……んですか?」
「ああ、サシャ。それならば問題あるまい?」
「……はい」
サシャはそれでも不安そうな顔色はしているけれど、それ以上は言ってこない。
それから急いで支度を整えると、僕たちは外に出る。
「エミリオ。近付き過ぎるな。そのことは忘れるなよ」
「はい。師匠」
今にも倒れそうな女性は、長袖のドレスを着ている。
顔も俯いていて、綺麗な金髪を伸ばしているので彼女の表情は伺えない。
周囲の人達は遠巻きに眺めるばかりで、誰も近寄ろうとはしなかった。
なので簡単に近寄ることができた。
「大丈夫か?」
「大丈夫ですか!?」
師匠と僕は近付き、彼女に問いかける。
「あぁ……誰か……ちょう……だい……」
「何をだ?」
「マー……キュリー……私に……私に……頂戴……」
「おれたちはそんな物持っていない。いいから一度横に……」
そう言って師匠が気をつけながら彼女に近付いて行くと止められた。
止めてきたのは兵士2人だ。
「おい待て。そいつに近付くな」
「何? 回復術師であるおれにそう言うのか?」
師匠がちょっとだけイラっとしたように言うと、兵士は慌てた様に頭を下げる。
「も、申し訳ありません。ですが、あなたが治療する必要はありません。我々に彼女の身柄を渡してください」
「なぜだ? 治療が必要だろう?」
「その必要はありません。彼女は……犯罪者なのですから」
「犯罪……者?」
師匠と僕は兵士の人が何を言っているのか理解できず、問いただすと女性が大声をあげた。
「私に! マーキュリーを! 頂戴!」
「おい!?」
彼女はそう言って師匠に襲い掛かる。
その顔は……顔の半分以上が真っ黒になり、歯も半分ほどが抜け落ちていた。
***************
大変長らくお待たせしました。
その分面白く書けているので、お楽しみください。
投稿ペースは以前と同じように3日に1話のペースになります。
道中では何事もなく、次の街であるヴェネルレイクに到着していた。
「あれがヴェネルレイク……」
御者が教えてくれたので、僕たちの進む先には次の街ヴェネルレイクがある。
街の向こうには湖が広がっていて、名前の通り湖が関係している街らしい。
「ヴェネルレイクはどんな街なんですか?」
僕は一緒に乗っている師匠、特級回復術師のジェラルド・グランマール伯爵に聞く。
「ヴェネルレイクか? 入ってみれば分かる」
「入ってみれば……ですか?」
「ああ、口で説明することも出来るが、その目で見た方が何倍もいいだろう。その方が分かりやすいからな」
「分かりました」
師匠がそんな風に言うなんてどんなにすごいのだろう。
僕は胸を高鳴らせて馬車を街に進めた。
「サシャはこの街について何か知ってるの?」
「え……私……ですか?」
「うん。そうだよ?」
「私は……特には知らない……です」
「そっか……サシャ。最近……体調悪くない? 大丈夫?」
「え、ええ。私は問題ありません」
サシャはそう言ってどこか遠い空を見上げる。
「……」
「……」
僕と師匠は視線を合わせる。
サシャはレストラリアから出てきてからずっとこうなっていて、声をかけても大丈夫としか言わないし、メイドとしての仕事もミスがない。
本当に彼女がサシャであるのか不思議に思ってしまう。
でも、師匠にそれを聞いた時も、そういう事はあると言って今はそっとしておこうということになった。
なので、彼女がこうしてほしい。
そうなった時に力になろうということで話は終わった。
そんなことがありつつも、僕達の馬車はヴェネルレイクの中に入って行く。
街の外をまだかまだかと見ていると、すごいモノが見えてきた。
「これ……すごい……本当に……?」
街に入ってすぐに窓から見える景色、それは桁違いに派手な店がこれでもかと並んでいた。
「このドレスはいくらかしら?」
「そちらは金貨10枚になります」
「まぁ安い。今夜の舞踏会にいいかもしれないわね。もらいましょう」
「ありがとうございます! 夫人にしか似合わないと思っておりました」
「ええ、あたくしもそう思うわ」
店頭に並んでいる高価な服を即決で買う貴族の夫人がいたり。
「この宝石とか指輪。ここからここまでもらおうか」
「はい! ありがとうございます!」
「選ぶのは妻がドレスを決めてからでも問題ないからな」
「はい! 奥様と相談してよく似合うモノを選んでいただかれるのが素晴らしいかと思います!」
「ああ、それで失敗したからな……」
高価な服を買っていると思ったら、指輪やネックレス等の装飾品をたくさん買っている貴族の人もいた。
そんな風にたくさんの高価な物を販売している店がこれでもかと並んでいるのだ。
服飾店、装飾品店、本屋等々、本当に色々な店がある。
服飾店といっても、それは服だけを扱っている店や、靴だけを扱っている店、他にもドレスだけを扱っている店だったり、そもそもオーダーメイドしか作っていない店もあるようだった。
「師匠……これ……どういうことなんですか!?」
僕達が進んでいる間、目につく店は全て貴族用、そう言われても何もおかしくないような店しかない。
食事の為の店もあるけれど、それも全て貴族が来るための店。
そうだと確信できるような店にしか見えない。
というか店員さん以外、街を歩いている人は貴族とそのお付きの人間しか目に入らないのだ。
僕の疑問に対する答えは師匠が教えてくれる。
「これがこの街。ヴェネルレイクの特徴だな」
「この街の特徴……ですか?」
「そうだ。この街は訪れる貴族がとても多い。特に今の様な冬。そんな時はより多くの貴族が来ることになる」
「冬に……ですか?」
「ああ、ここヴェネルレイクは名前の通り湖の畔に作られた街。だから冬の間の移動は船で移動し、ここで時間を潰すという貴族も多い。冬は備えさえしっかりとしておけばそこまで問題が起きることは少ないし、そもそも代官をおいている者も多いからな」
「なるほど……だからこんなに多くの貴族がいるんですね……」
「そうだ。行ってみたい店はあるか?」
「僕ですか? そうですね……本屋にはやっぱり行ってみたいです! ヴィーと行った時にとっても楽しかったですし、ここにしかない本とかあるのなら読んでみたいです!」
「そうだな。ここは貴族が多く来るから、レストラリアよりも種類が多いだろう。魔法に関する本の種類もあるかもしれないな」
「そうなんですか!? というか、魔法を習う……という本があるんですか?」
「まぁな。普通は人に習って魔法を習得するのが普通だが、欲しい魔法を覚えている相手を探す、そして、その者が教えてくれる。ということ等考えて行くと難しいだろう?」
「確かに、誰でも魔法を使える訳ではないですもんね……」
「そういうことだ。だからこそ魔導書、と言われる魔法の覚え方を記した本を作るんだ」
「すごい! それならもっと多くの人が魔法を覚えたり出来るんじゃないですか!?」
僕の考えとしては、そういった魔法の本をたくさん作って、配ったりしたら魔法使いを増やすことができるんじゃないのか。
ということを思ったのだ。
そうしたら、もっと多くの回復術師が出てきて、たくさんの人を救えるようになるかもしれない。
でも、師匠は首を振る。
「エミリオ。お前の考えは素晴らしいが、それは難しい」
「どうして……でしょうか」
「まず、本の制作コストは高い。なので本……それも、魔法ということについて書かれた本が高くなるのは分かるな?」
「はい。わかります」
「では、本を買うことが出来る者は大抵が貴族だ。そして、貴族であれば、そんな高価な本を買うくらいであれば、他の貴族と交渉するなりして、魔法使いを雇うとは思わないか?」
「あ……なるほど……」
「それに、あまり魔法を平民に教えるべきではない。とする貴族も多くいる。だからそもそも魔導書を作ろうとする者が少ない。難しいところなんだ」
「そうだったのですね……」
「ああ、だが、エミリオ。お前の気持ちは素晴らしい物だぞ」
「そう……でしょうか?」
多くの人がやめるべき。
そう思っているのであれば、それは……やってはいけないような気持ちもする。
しかし、師匠は笑いながら話す。
「当然だ。魔法はようは道具と一緒だ。良い者が使えばいい方向に、悪い者が使えば悪い方向に。何でもそうではないか? この街の特産品である化粧品ですらそうなのだからな」
「はい。ありがとうございます! というか、この街の特産品が化粧品……ですか?」
「ああ、それは……」
師匠がそう言おうとした時、切り裂くような悲鳴が僕達の耳に届く。
「きゃあああああああ!!!」
「あの子! マーキュリーよ!」
「なんだと!? 誰か! 兵士を呼べ!!!」
外では誰かが叫び、兵士を呼ぶ声が聞こえてくる。
僕は何が起きたのかとそちらの方を見ると、フラフラとした女性が裏路地から出てくるところだった。
「だいじょ……ぐふっ!?」
僕はとりあえず助けに入ろうとしたら、思い切り首根っこを掴まれた。
掴んできた相手は、まさかのサシャだった。
「エミリオ様! 何があるか分かりません! 出るべきではありませんよ!」
「サシャ! でも、助けがいるかもしれないのに!」
「それはエミリオ様の仕事ではありません! 相手は何か病を持っているのかもしれないのですよ!? それ以外にも暗殺者の可能性もあるんです! レストラリアでは問題ありませんでしたが……ここではまだ分からないのです! だから気を付けて下さい!」
「ご、ごめん……」
サシャがあまりの剣幕で言って来るので思わず頷いてしまった。
「あ……す、すいません。エミリオ様。でも……もっとご自身の体を大事にしてください」
「は、はい……」
サシャにそこまで言われてしまえば、僕は出るべきではないのか。
そう思ったところに、師匠が口を開く。
「エミリオ。お前のやろうとしている気持ちはいいが、勢いだけで行くのは良くない。まずは仮面を被れ。それからおれの前には出ないこと。いいな?」
「いい……んですか?」
「ああ、サシャ。それならば問題あるまい?」
「……はい」
サシャはそれでも不安そうな顔色はしているけれど、それ以上は言ってこない。
それから急いで支度を整えると、僕たちは外に出る。
「エミリオ。近付き過ぎるな。そのことは忘れるなよ」
「はい。師匠」
今にも倒れそうな女性は、長袖のドレスを着ている。
顔も俯いていて、綺麗な金髪を伸ばしているので彼女の表情は伺えない。
周囲の人達は遠巻きに眺めるばかりで、誰も近寄ろうとはしなかった。
なので簡単に近寄ることができた。
「大丈夫か?」
「大丈夫ですか!?」
師匠と僕は近付き、彼女に問いかける。
「あぁ……誰か……ちょう……だい……」
「何をだ?」
「マー……キュリー……私に……私に……頂戴……」
「おれたちはそんな物持っていない。いいから一度横に……」
そう言って師匠が気をつけながら彼女に近付いて行くと止められた。
止めてきたのは兵士2人だ。
「おい待て。そいつに近付くな」
「何? 回復術師であるおれにそう言うのか?」
師匠がちょっとだけイラっとしたように言うと、兵士は慌てた様に頭を下げる。
「も、申し訳ありません。ですが、あなたが治療する必要はありません。我々に彼女の身柄を渡してください」
「なぜだ? 治療が必要だろう?」
「その必要はありません。彼女は……犯罪者なのですから」
「犯罪……者?」
師匠と僕は兵士の人が何を言っているのか理解できず、問いただすと女性が大声をあげた。
「私に! マーキュリーを! 頂戴!」
「おい!?」
彼女はそう言って師匠に襲い掛かる。
その顔は……顔の半分以上が真っ黒になり、歯も半分ほどが抜け落ちていた。
***************
大変長らくお待たせしました。
その分面白く書けているので、お楽しみください。
投稿ペースは以前と同じように3日に1話のペースになります。
1
お気に入りに追加
3,829
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。