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5章
132話 ヴァニラの真の姿
しおりを挟む「さぁ……ヴァニラ。まだまだ勝負はついていないぞ」
「そんな……確実に入っていたはず……。それどころか死んでいてもおかしくはないんだぞ……?」
「俺は……最強だ。あの程度では死なん」
「バカな……」
ヴァニラは驚いているが、しっかりと警戒はしている。
「行くぞ」
俺は拳を握りしめ、彼女に向かって突撃していく。
「おらぁ!」
「はっ! 力が籠っていないぞ!」
「ぐぅ!」
しかし、まだ力が足りないのか、彼女に俺の攻撃は当たらず、あちらの攻撃は俺に致命傷を与える。
地面を何度か転がり、俺は立ち上がった。
「貴様……死ぬ気か?」
「ふ……俺は死なん。俺が最強だと言っただろうが」
「【最強】はあたしが持っている。既にお前のものではない」
「くくく、未だにその考えから抜け出せんとは……まぁいい。その考えでは俺には勝てんさ」
「今の状況を見てよく言えるな!」
彼女はそう言って俺を殴り飛ばしてくるが、俺は空中で姿勢を整えて着地する。
「なに!? どこにそんな力が!?」
「何を驚く? 最強の俺があの程度受けきれないとでも?」
俺は自分でそう言いつつ、体に力を入れて魔力を回す。
魔法を使ったところで今の彼女にはほとんど効かないだろう。
ならば、体を強化して殴る方が可能性がある。
「ああ、いいなぁ……やはりいい。こうやって……強い敵と戦うからこそ、俺は最強になれる! 最強になる道が開けるんだよなぁ!」
「ぐぅ!」
俺はさっきまでとは比べ物にならない速度を出して、彼女を殴りつけた。
彼女は俺の攻撃を防ぎきれないのかダメージを負いながら吹き飛ぶ。
「クソがぁ! あたしは最強になったんだ! あたしが……あたしが最強なんだ!」
「甘いわ。小娘が」
ただ考えもなしに突っ込んで来るとは、【最強】のスキルに飲まれかけているのかもしれないな。
俺は彼女の攻撃をかわし、そのまま腕をとって地面に叩きつける。
「かっひゅ!」
「そら、止まっている時間はあるのか?」
ズン!
俺は彼女の顔を思い切り踏みつける。
女だからとか、そんなことは言っていられない。
最強とは勝つために全力を尽くすものだから。
しかし、俺の踏みつけはそこまで効いていないのか、彼女は起き上がってくる。
そして、顔を踏まれたのが許せないのか、俺の袖をつかみに来た。
どうやら彼女は俺を地面に叩きつけ、同じようにしたいらしい。
「本当に……魔王か? 貴様。子供の間違いじゃないのか?」
俺はそう言いながら、掴みかかってくる彼女の無防備なアゴに蹴りを入れる。
「ごふ!」
「ほら、目を回している場合じゃないぞ?」
俺は彼女が意識を飛ばしている隙に、拳を彼女の顔に打ち込んだ。
「うぅ!」
彼女はうずくまるようにして、俺から逃げるように飛んだ。
そして、十分な距離をとってから、俺をにらみつける。
「どうなっている!? あたしは貴様のスキルを奪った! あたしは【最強】だ!」
「何度この問答をさせる気だ。だが……そろそろいいか。お前……本当に今……最強か?」
「何?」
彼女は俺の言葉に怪訝な顔をすると、スキルに意識を向ける。
そして、目を見開いて驚いた。
「ない!? なぜだ!? 確かに奪ったはず!」
「それはな……お前が自分が最強ではないと……いや、俺に勝てないと思ってしまったからなんだよ。【最強】は最強でないものの元にはいない。この世でもっとも強い者のところにいく」
「そんな……スキル等……」
「あるんだ。まぁ……貴様がしらないのも無理はないだろうが……。それよりも、これからどうする」
「どうする……とは?」
「俺に降伏するのか……それとも、ここで死ぬか……だ」
「死……ぬ?」
「ああ、魔王としての誇りもあるだろう? 魔王としての権威は確かに欲しいが……お前のような小娘ではそれが出来るか怪しいからな」
「貴様……確かにあたしから最強は無くなった。だが、貴様はなんのスキルもない。あたしは……これまで奪い取ってきたスキルは無限にある!」
彼女はそう言って、様々な力を見せつけるようにしてきた。
そこで、俺は1つ訂正する。
「俺は今【最強】のスキルを持っているぞ」
「へ……うそ……でしょ?」
「本当だ。俺は【最強】だと言っただろう? 最強はかならず俺の元に帰ってくる。わかったか?」
「あ……あ、あぁ……本当なの?」
彼女は上目使いでうかがうように見てくる。
俺はこんなことで嘘は言わない。
正直に彼女に話した。
「ああ、証明する方法はないが……。戻ってきているさ」
先ほどまでのだるさは一瞬にして消え、いつもの調子に戻っている。
ない方がより強くなれるはずだったが……。
まぁ、今はこの方が話は早いだろう。
「……」
「……」
「もう……やだなぁ。ちょっと試しただけじゃないですかぁ」
「誰だお前」
魔王が下っ端のような声色で話し始めた。
「あたし……やっぱりシュタルについて行くしかないって思ってたんだよね」
「いいぞ、ではお前の本当の姿をみせろ」
「え?」
「分かっているんだ。スキルを使って姿を変えているんだろう?」
「……バレちゃってたのかぁ……しょうがない。解除」
彼女はそう言うと、姿が煙に包まれて本物の彼女が姿を現す。
その姿は……。
「子供?」
「子供ゆーな!」
リュミエールやアストリアと同じくらいの、ちんちくりんでぺったんこの少女が現れていた。
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