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5章

108話 救出

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「奴には……死ぬまで……いや、死ぬほどの思いをしても苦しみ続ける呪いをかけた」
「どういうことですか!?」

 彼女は俺に詰め寄らんばかりの勢いで近寄ってくる。

 俺は彼女に安心させるように説明した。

「さっきグンドラに会ってきてな。呪いの首輪をつけておいた」
「呪いの首輪?」
「ああ、奴自身の部下を全て殺すまで首を締めつけられる首輪だ。首輪がついている間は他の者を傷つけることは決して出来ない。そうなる命令も付け加えている」
「でも……それだと……全ての部下を殺したら解き放たれるんじゃ……」
「問題ない」
「?」
「全ての部下。それを奴が殺さなければならない。つまり、俺が殺した奴の部下も、もう一度殺さなければ奴が解放されることはないんだよ」
「そんな……こと……」
「という訳だ。いいから他の者達も助けて一度魔族領に戻るぞ」
「あ、は、はい!」

 それから俺達はこの砦にいる魔族の者達を全員助け出し、先ほどまでいた村に戻る。
 戻る時はかなり多かったので、『結界魔法シールド』で囲んで戻った。

 時間にして夜の10時くらいにはなっているだろうか。
 しかし、宴を開いているからか村はまだ明るかった。

「あ! シュタル! どこ行ってたの!?」
「シュタルさん!? やっと帰って来ましたか!?」

 俺が村に戻ると、アストリアとリュミエールが気付いて駆け寄ってきた。

「少し野暮用が出来てな。彼女たちを助けてきた」

 俺は『収納』に入っていた服を着せてあるので寒くはないはずだ。

「助けてきたって……そんなにたくさん……?」
「しかも……女性ばかりですが……」
「後で説明する。今は……外の方がいいな」
「あ!」
「ちょっと!?」

 俺は村の外に行く。
 そして『結界魔法シールド』を降ろし、女性たちを解放する。

「とりあえずこの村で一泊するぞ。部屋が無ければ適当に魔法で……今からやるか」

 俺はいちいち許可を取るのが面倒だったので、村の外。
 畑のない所で魔法を使った。

「『土創造魔法クリエイトアース

 そこまでは大きくないけれど、多くの者が寝られる建物を作った。

「お前達。今日はここに泊まれ」
「え……こんな……私の家よりもいいんですが……」
「とりあえずは今日はここに泊まるといい。食料はおいておく」

 俺は『収納』から出して、そこら辺においておく。

「よし。これくらいやっておけばいいか?」
「あ、あの……一体何があったのでしょうか……?」
「ん?」

 俺は振り向いて相手を確認すると、この村の村長だった。

「ああ、ちょっと国境第4警備部隊を潰してきてな。そこに囚われていた者達を救ってきた。だから今夜はここに泊まらせてくれ」
「そ、それは……もちろん問題ありませんが……本当に……そんな事が出来るのですか?」
「たった今やってきたところだ。砦にはもう誰もいない」
「そんな事が……」
「ああ、だからもう襲われる事はないだろう。安心しろ」
「嘘……でしょう……?」
「本当ですよ」
「貴方は?」

 俺の後ろから答えてくれたのは、砦で助けた女性だった。

「私はペルナー。森の調査をしていたら人間に捕まって……そこで捕らえられていたの。この他の者達も同様よ。だからそれは本当。必要があれば砦の場所に行ってもいいわ」
「それでは……」
「ああ、だから安心するといい」
「救世主様……」
「ん? いや、俺は最強の魔剣士シュタル。救世主ではないぞ」
「そう……なのですね。最強……」
「ああ、だからその行いを広めろ。俺はそれ以上は求めないからな」
「そんな……ことは……」

 村長達がそんな事を言っていると、アストリアとリュミエールがおいついてきた。

「何でおいて行くの!?」
「他の人に変わってもらったんですからね!?」
「ああ、2人には……後で説明すると言っただろう?」
「今説明して!」
「そうですよ! 一緒についていく。そう言ったばっかりじゃありませんか!」
「ああ、では宿に戻っておいてくれ。俺は彼らの為にやるべきことがある」
「なにをするのですか?」
「食事だ。それを用意しなければな」
「……それでしたら私がやりますよ」

 リュミエールが仕方ない。
 そんな表情を浮かべながらも言ってくる。

「しかし、もう……今日は朝からずっとやっているだろう? 疲れていないのか?」

 俺がリュミエールに聞くと、彼女は答えてくれる。

「任せて下さい! シュタルさんがやっているのであれば、とっても大事な事なんですよね? それを行うくらいの体力はありますよ!」
「ぼ、ボクも手伝う! だから、何かあったら言って!」
「お前達……」

 2人は助けた魔族の力になってくれると言う。
 素晴らしい2人だ。

 それからリュミエールの協力や、村の人々の協力もあり、助け出した女性達に食事を配っていく。

「美味しい……」
「あたたかい……」
「こんな……こんなにホッと出来るなんて……」
「生きてて良かった……」

 助け出された女性たちは口々に言い、ゆっくりと眠りに落ちていった。

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