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3章

66話 追いかけっこ

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「死んで」

 受付はそう言いながら、俺に刃を突き刺した。

「嘘……」

 しかし、俺は当たる前に指でつまんで止める。
 別に体は問題ないだろうけれど、服が破れるのは止めたかったからだ。

「さて、お前が抵抗しても無駄だ。行くぞ、メディ」
「逃げて! アタシが時間を稼ぐから! 早く!」
「っ!」

 受付がそう言うや否や、メディらしき人物はダッシュで走り出す。

「おいおい、逃げるなよ。お前に用があってきたんだぞ?」
「ダメ! あの子は大切な子なの! たとえチケットがあっても!」
「そうか……なら仕方ないな」

 俺はそう言うと、受付をケガさせないように引きがしてメディを追う。

「ダメ!」

 飛びかかってくる彼女をかわし、俺はメディを追いかけた。

 メディが逃げた方は用務員の部屋らしく、掃除用具や何に使うのか分からない長い道具が置かれていた。

 俺は『広域探知サーチ』を使ってメディを探すと、彼女は下に向かって階段を降りて行っている。

「逃がさんぞ」

 俺はハッキリと言って彼女を追いかける。

「貴方こそ追わせないわ!」

 追いかけようとすると、またしても受付が飛びかかってくる。
 そして、俺の首を締めて来た。
 中々にいい力をしている。
 ただ、どうやら俺から離れたくないらしい。
 折角なので連れて行こう。

「ええ!? このまま行くの!?」
「引き剥がすのも気を遣うからな」
「ふざけないで!」

 彼女は怒って首を締める力を強めるけれど、背中に柔らかい感触が来ることくらいしか感じられない。

「しっかりと抱きついておけよ」
「は!? アンタ何言ってっきゃ!!!???」

 俺は加速して、メディを急いで追いかける。
 こんな所でのんびりとしている場合ではないのだ。

「見付けた」
「ひぃ! 来ないで!」
「そうは行かない。お前にはやってもらうことがある」

 俺はそう言って、メディの腕を掴む。

「いや! 離して! 誰か! 誰か!」
「うるさいのは良くないな。少し静かにしろ」

 俺はそう言って彼女の口を塞ぐ。

「ちょっと……! メディに手を出したら容赦ようしゃしないよ!」
「別にそんなつもりはない。面倒だな……一度上に行くか」

 なんだか勘違いされているような気がしたので、最上階に戻る。

「アンタ……本当に何者なんだ。アタシがこれだけ首を締めているっていうのに……」
「俺は最強の男シュタルだ。今回はシビラに頼まれてきた」
「ふふん!? ふふんふんふん!?」

 俺が抑えているのに、メディは何か言いたいらしい。

「叫ばないか?」
「ふんふん」

 うんうんだと仮定して手を取ると、彼女は凄い勢いで食いついてきた。

「ちょっと! シビラに何かしていないでしょうね!」
「……」

 俺は面倒なので口を抑えて先ほどの部屋に戻る。



 最上階の部屋に行き、2人を降ろしてこれまであったことを説明する。
 最初は何とかして逃げ出そうとしていたけれど、話が進むにつれて大人しくなった。

「という訳なんだ。だからミネスト湖まで一緒に来てくれ」
「……」
「……」
「どうした?」

 2人は大きなベッドに腰かけ、俺を見上げている。
 それから、タイミングを合わせたかのように叫んだ。

「「最初にそう言ってよ!」」
「話を聞かないから」
「だってあの時の貴方、完璧にさらいにきた人の感じだったわよ!? 最初から守り神様の為って言いなさいよ!」
「メディがここにいるのかは分からなかったからな。違った奴だったら簡単には言えないだろう」
「だからって……」
「それにしても、何で巫女の一族であるお前がこんな所で掃除をしているんだ? そっちの方が気になるんだが」

 俺がそう言うと、メディはゆっくりと口を開いた。

「私は……狙われていたから……。屋敷が襲われたっていう時も、私は外で遊んでて……。それで、その話を聞いて、どうしようかっていうので迷っていたら、助けられたの。ここならリート一族がいるって思われないでしょ? そういう場所の方が安全だからって」
「なるほどな。そういう理由だったのか」
「ええ、その……一つだけ聞いてもいいかしら」
「なんだ?」
「あの……その……。守り神様を倒したって……本当?」
「ああ、今は大人しくさせている。だが、急いで戻らないとまた暴れるかもしれない。だから早く向かいたい所だな」

 まぁ、氷でガチガチに固めてあるので大丈夫だとは思うが、急いだ方がいいと思う。

「それなら早く言って下さい!」
「だから早く行こうと言っただろう。すぐに行けるな?」
「はい! あ、とりあえず私は行ってきます!」
「ええ、気を付けるのよ。メディ」
「うん……ありがとう」

 彼女は受付に感謝すると、急いで店から出た。

 俺は彼女の後を追いかけて店の外に出る。

 受付の女はついて来なかった。

「それで、どうやって行くの? 馬? 走り?」
「いいや、空からだ」
「空……?」

 彼女は空を見上げて首を傾げている。

「行くぞ。『飛行魔法フライ』」

 俺は彼女を抱えて、空に飛び立った。

「いぃ!?」
「どうだ。気持ちいいだろう?」

 俺はかなりの速度を出し、ミネスト湖へと向かう。

「はやぃぃぃぃぃ!!!!」
「そうかそうか。早くて楽しいか」
「ちがぅぅぅぅぅ!!!」
「そうなのか? まぁ何でもいい。急いでいるから我慢しろ」
「おにぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「鬼じゃない。最強だ」

 そんな事を話しながら、俺達はミネスト湖に到着した。
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