上 下
64 / 137
3章

64話 シビラ

しおりを挟む
 助け出した人質が集められている船。
 その中のかなり豪華な一室に、俺はいた。

 俺は少年の正面に座って、彼に話しかける。

「さて、それで少年よ。話を聞こうか」
「な、何を話せばいいんでしょうか」
「まずはそうだな。君の名前は?」
「ぼ、僕はシビラです」
「シビラ?」
「はい。シビラ・リート。リート一族の1人です」
「リート一族とは?」
「僕達は守り神様と対話し、この近辺の安全を守る一族です」
「それがどうして水賊達の力に?」
「それが……最初……」

 彼の話を聞くとこういう事らしい。

 まず最初に、水賊等が現れる前、守り神の様子がおかしくなった。
 なので、その様子を聞きに行くために彼の母が行くことになる。
 そして彼もまた、巫女の一族として一緒に行くことになった。
 が、そこで問題が起きたのだ。
 守り神は既におかしくなっていて、水賊達の襲撃には戦力が足りなかった。
 一応護衛を連れて来てはいたけれど、多勢に無勢、あっという間に制圧されてしまった。
 その際に母は守り神を使って水賊達を攻撃出来るかもしれない。
 ということで殺されてしまったそうだ。
 残された彼は多少の指示なら出来るし、護衛達の事を人質に取られていたので、言うことを聞かされていたということになる。

「なるほど。では……これでならもう守り神を助けることが出来るのか?」

 俺がそう聞くと、彼は視線を落として首を振った。

「出来ません」
「なぜだ?」
「僕は正式な後継者ではないからです。守り神様と会話出来るのは代々女性の選ばれた者のみ。僕はあくまでサポートする事しか出来ないんです」
「だが、先ほどは指示をしていたと聞いたぞ?」
「それは、何か魔法陣の様なモノを介して出来ただけです」
「なら……」
「その魔法陣はもうありません。先日の戦闘で壊れてしまったようです」
「そうか……」

 ということは俺の攻撃で壊れてしまったのだろう。
 全く、そんな弱い魔法陣は張るなと言いたい。

「なので、姉が……必要なのです。どうか……どうか姉を探して下さいませんか?」
「そうは言ってもな……。確かお前の一族は襲われてほとんど生きているのか分からないのだろう?」

 俺がそう言うと、彼は少し悲しそうな表情になる。

「……はい。その通りです。でも、姉なら……お姉ちゃんならきっと生きています! どうしてかは分かりません。でも……きっと生きていると思うんです!」

 そう話す彼の瞳はそうなるといいと願っている様だった。

「そうか。では貴様の姉の特徴は?」
「! 探して……もらえるんですか?」
「それ以外にどんな可能性がある」
「え……あ、いや……」
「いいから話せ」
「はい! 姉の名前はメディ、メディ・リートと言います。白髪を肩口で切っていて、とても凛々りりしくて、かっこいい人です。他にも……」

 それからシビラから姉の凄い所をたっぷりと1時間に渡って聞かされ続けた。

 一応何か情報があるかと思って聞いていたけれど、正直ほとんど最初に聞いた情報から増える事は無かった。
 ただまぁ、本人確認の情報はもらえたからいいのかもしれない。

「よし。では俺はそろそろ行くとする」
「え? もう行ってしまうんですか?」
「ああ、姉には早く会いたいだろう? それが出来るようにとりあえず街に行く」
「分かりました! お姉ちゃんをよろしくお願いします!」
「任せろ。ただ……『看破かんぱ』」

 一応このシビラと同じという事で、血の繋がり等を見抜くために彼を 『看破かんぱ』で調べる。
 すると、情報には<守り神の話し手>と出て来た。
 ということは、これと同じ物を持っている人を探せばいいのかもしれない。
 後は、普通に彼ら巫女の一族の血は少し特徴的なので、そちらの方で考えて行くとよりいいのかもしれない。

「ではな」

 俺はそう言って、船から街に戻る。

******

「1週間ぶりだが……何だか綺麗になったな」

 1週間ぶりの街は正直別物と言っても良かった。
 今までは道にはゴミが落ちていたのに、今は綺麗だ。

 歩いている人の顔には笑顔がそれなりに浮かんでいて、ケンカを吹っ掛けようとする連中はいない。
 これは、水賊達を捕らえたお陰だった。
 街でくだを巻いていたのは漁師達が主で、湖で漁が出来ないストレスをぶつけていたらしい。
 今では少し凍っている部分はあるけれど、それ以外の部分では普通に漁ができる。
 なので、今は漁に精を出していた。

「さて……そんなことはいいか。『広域探知サーチ』」

 俺は魔法を使って、一応シビラと似た感覚はないのかと調べると、何かとても濃い反応が見つかった。

「嘘だろ……」

 確かに巫女の血は特別なのかもしれない。
 だからって、こんなすぐに見つかることがあるのだろうか?

 疑いつつも、その反応がある元に向かう。
 そうして辿り着いた場所は……。

『ヴェリザード娼館』と書かれた建物の中にその反応はあった。

「は……? 巫女……なんだよな? なんでこんな所から……?」

 俺は意味が分からなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

最強魔獣使いとなった俺、全ての魔獣の能力を使えるようになる〜最強魔獣使いになったんで元ギルドを潰してやろうと思います〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
俺は、一緒に育ってきた親友と同じギルドに所属していた。 しかしある日、親友が俺が達成したクエストを自分が達成したと偽り、全ての報酬を奪われてしまう。 それが原因で俺はギルド長を激怒させてしまい、 「無能は邪魔」 と言われて言い放たれてしまい、ギルドを追放させられた。 行く場所もなく、途方に暮れていると一匹の犬が近づいてきた。 そいつと暫く戯れた後、カロスと名付け行動を共にすることにした。 お金を稼ぐ為、俺は簡単な採取クエストを受注し、森の中でクエストを遂行していた。 だが、不運にも魔獣に遭遇してしまう。 無数の魔獣に囲まれ、俺は死を覚悟した。 その時だった。 地面を揺らし、俺の体の芯まで響いてくる何かの咆哮。 そして、その方向にいたのはーー。 これは、俺が弱者から魔獣使いとして成長していく物語である。 ※小説家になろう、カクヨミで掲載しています 現在連載中の別小説、『最強聖剣使いが魔王と手を組むのはダメですか?〜俺は魔王と手を組んで、お前らがしたことを後悔させてやるからな〜』もよろしくお願いします。

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

処理中です...