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2章
37話 アルマ
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***アルマ視点***
信じられない!
なんでこいつが入ってきている?
何でアタシがシャワーから出たタイミングで来る?
まさか本当にアタシの体狙い?
側につけているエルフの子もアタシと似たような体型だ。
もしかして……このシュタルという男はそっち系なのだろうか。
でも、こんな夜に堂々と侵入して来るとは思っていなかった。
だから、アタシの愛用の武器も今はおいていない。
ただ……アタシには……この力がある!
「記憶を飛ばせええええええええ!!!」
アタシは振りかぶり、思い切り奴のほほに向かって拳を放つ。
「落ち着け」
パシ。
しかし、そんなアタシの本気の拳は奴に止められてしまった。
「ふざけ! 見んな! っていうか何で入ってきた! というかどうやって知った!」
「別に見る気はない。さっさと着替えて来い。急ぎ話す事があったから入って来た。魔法でお前の位置を探知してきた」
「人様の裸を見て冷静でいるんじゃねぇ!」
興奮されたらされたで最悪だが、何も抱かれないのはそれはそれで大人として腹が立つ。
「いいからこれを着ろ」
ファサ
奴が来ていたマントを脱ぐと私の肩からかけてくれる。
え? 何これ。
さっきの行動は殺してやろうかと思ったけれど、この感じは嫌いではない。
なぜだろうか。
「な……こんなことされても許さないよ」
「別に許さなくてもいい。それよりも、魔族の事で話がある。急いで着替えろ」
「魔族……魔族!?」
「ああ、そうだ。王都の緊急事態だ。急げ」
「わ、分かった」
アタシはさっきまで考えていたことを一度切り離す。
オンとオフの切り替えは冒険者をやっていたアタシにとっては大事な事だ。
戦闘中とそうでない時、しっかりと分けておかないと大変なことになるからだ。
アタシは急いで自室に行き、服を着替えた。
リビングに行くと、そこではシュタルとラジェル公爵に寝ているリュミエール、それと黒ずくめの人達がいた。
なんで一人寝ているのだろうか。
「とりあえず……色々と聞きたい事があるけれど、貴方が来た理由を話してくれる?」
アタシは彼らが座る反対側に座り、彼らの話を聞くことにした。
その内容は、アタシが想像できないものだった。
「アタシが信頼している情報筋が……魔族サイド?」
「そうだ。ワシが舞踏会や他の貴族達と話し、情報を交換する中で得た情報だ。器用に隠しておるが、隠せてはおらんよ」
「嘘……」
アタシは絶望したくなる。
これまでずっと信頼を寄せていた。
腹芸の苦手なアタシに、それなりの生き抜き方を教えてくれて助けてくれた人。
その人が……魔族サイドの人間だった。
その人に言われるままに、依頼を斡旋して失敗したことがあったけれど、まさか……。
「おい。目を覚ませ」
「あ……」
そんなアタシを現実に引き戻す人がいた。
シュタルだ。
「ギルドマスター……いや、アルマ。絶望している暇など無いぞ。お前が絶望している間に、より多くの者が被害者が出る。そんな事をしている暇はない。貴様が信頼していた情報筋とは誰の事だ?」
「あ……そ、それは……。レイリー子爵です」
「レイリー子爵? 子爵なのか? そこまで大きくないな?」
シュタルはラジェル公爵に問う。
「そうだな。そ奴自身もそこまで優秀か、と聞かれるとそうではない。だが、腹の中に何かを隠して色々と行動しているのが奴だ」
「狡猾だな」
「多かれ少なかれ貴族とはそういうものだ。そんな腹芸が出来ん者は食われていくしかない」
「怖い世界だ」
「口だけで生き残れる分、冒険者よりはマシだと思うがね」
「そういう考え方もあるか」
「そうだな。それでギルドマスターよ。魔族側の貴族の所に冒険者派遣して欲しいのだ」
「え……冒険者を……派遣? なぜ?」
「決まっている。奴らの所に魔族が出入りしているからだ。どうしてかは知らないが、魔族を匿っている家がある。ワシがその情報を出す。しかし、ワシの所の力だけでは足らぬ。それに協力しろ。ギルドマスター」
「あ……え……」
アタシは先ほどのショックから、中々頭が回らない。
ギルドマスターになってからこんな腑抜けた声を出すのは何時ぶりだろうか……。
そこで、シュタルがアタシの顔を両手で掴む。
「へ……」
「アルマ。貴様、本当にギルドマスターか?」
「え……そ、そう……よ」
「ではなぜこんな大事な話の時に凹んでいる? 今貴様がやらなければならない事はなんだ?」
「で、でも……」
「でもではない。ここで貴様が凹み、正常な判断を下せず、後手に回る。ただでさえミリアムはかなりこの王都に根を張っているようだ。その王都が陥落しようとしている。それでいいのか? そんな状態でこの危機を乗り切れるのか? ここで落ちこんでいて、全てが終わった後に、貴様は……何であの時に対応しなかったのかと、後悔はしないか?」
「……」
アタシは震えていた。
シュタルの怒りがアタシまで伝わって来るようで、彼が……アタシに言っているように見えて、実は自分に言っている様な感じがしていて。
それでも、アタシにも……その何か……過去にあったのかもしれない。
後悔が伝わってきて……。
アタシは立たなければならないと思った。
ここで欲しいのは慰めでも、支えてくれる言葉でもない。
アタシに立つまで本気の言葉を投げつけてくれる、彼の事だと心が理解した。
「アタシ……アタシ……に出来ることは……何がある?」
アタシは頭を切り替える。
今度こそ、しっかりと、ギルドマスターの役職を全うするために。
この大事な……王都を守るために。
「さっきラジェル公爵が言っていただろう。信頼出来る強い冒険者を動かし、魔族がいるであろう屋敷の襲撃に手を貸す。これしかない」
「……分かった。今からギルドに行くよ」
アタシは言われた通りにしようと立ち上がると、シュタルにがっと手を掴まれる。
「きゃ!」
そのままアタシは彼のひざの上に乗せられる。
「な、何をするの。これからギルドに行かなくちゃならないのに」
折角ギルドマスターの気持ちに切り替えたのに、どうしてこんなことに……。
風呂に入ったせいか、顔から日が出そうな程に熱くなる。
「アルマ」
「な、何よ……」
心臓が破裂するのではないかという程に高鳴っているのが分かる。
「これから……真実を確かめにいかないか?」
「真実?」
アタシは、いきなり現実に引き戻された気がした。
信じられない!
なんでこいつが入ってきている?
何でアタシがシャワーから出たタイミングで来る?
まさか本当にアタシの体狙い?
側につけているエルフの子もアタシと似たような体型だ。
もしかして……このシュタルという男はそっち系なのだろうか。
でも、こんな夜に堂々と侵入して来るとは思っていなかった。
だから、アタシの愛用の武器も今はおいていない。
ただ……アタシには……この力がある!
「記憶を飛ばせええええええええ!!!」
アタシは振りかぶり、思い切り奴のほほに向かって拳を放つ。
「落ち着け」
パシ。
しかし、そんなアタシの本気の拳は奴に止められてしまった。
「ふざけ! 見んな! っていうか何で入ってきた! というかどうやって知った!」
「別に見る気はない。さっさと着替えて来い。急ぎ話す事があったから入って来た。魔法でお前の位置を探知してきた」
「人様の裸を見て冷静でいるんじゃねぇ!」
興奮されたらされたで最悪だが、何も抱かれないのはそれはそれで大人として腹が立つ。
「いいからこれを着ろ」
ファサ
奴が来ていたマントを脱ぐと私の肩からかけてくれる。
え? 何これ。
さっきの行動は殺してやろうかと思ったけれど、この感じは嫌いではない。
なぜだろうか。
「な……こんなことされても許さないよ」
「別に許さなくてもいい。それよりも、魔族の事で話がある。急いで着替えろ」
「魔族……魔族!?」
「ああ、そうだ。王都の緊急事態だ。急げ」
「わ、分かった」
アタシはさっきまで考えていたことを一度切り離す。
オンとオフの切り替えは冒険者をやっていたアタシにとっては大事な事だ。
戦闘中とそうでない時、しっかりと分けておかないと大変なことになるからだ。
アタシは急いで自室に行き、服を着替えた。
リビングに行くと、そこではシュタルとラジェル公爵に寝ているリュミエール、それと黒ずくめの人達がいた。
なんで一人寝ているのだろうか。
「とりあえず……色々と聞きたい事があるけれど、貴方が来た理由を話してくれる?」
アタシは彼らが座る反対側に座り、彼らの話を聞くことにした。
その内容は、アタシが想像できないものだった。
「アタシが信頼している情報筋が……魔族サイド?」
「そうだ。ワシが舞踏会や他の貴族達と話し、情報を交換する中で得た情報だ。器用に隠しておるが、隠せてはおらんよ」
「嘘……」
アタシは絶望したくなる。
これまでずっと信頼を寄せていた。
腹芸の苦手なアタシに、それなりの生き抜き方を教えてくれて助けてくれた人。
その人が……魔族サイドの人間だった。
その人に言われるままに、依頼を斡旋して失敗したことがあったけれど、まさか……。
「おい。目を覚ませ」
「あ……」
そんなアタシを現実に引き戻す人がいた。
シュタルだ。
「ギルドマスター……いや、アルマ。絶望している暇など無いぞ。お前が絶望している間に、より多くの者が被害者が出る。そんな事をしている暇はない。貴様が信頼していた情報筋とは誰の事だ?」
「あ……そ、それは……。レイリー子爵です」
「レイリー子爵? 子爵なのか? そこまで大きくないな?」
シュタルはラジェル公爵に問う。
「そうだな。そ奴自身もそこまで優秀か、と聞かれるとそうではない。だが、腹の中に何かを隠して色々と行動しているのが奴だ」
「狡猾だな」
「多かれ少なかれ貴族とはそういうものだ。そんな腹芸が出来ん者は食われていくしかない」
「怖い世界だ」
「口だけで生き残れる分、冒険者よりはマシだと思うがね」
「そういう考え方もあるか」
「そうだな。それでギルドマスターよ。魔族側の貴族の所に冒険者派遣して欲しいのだ」
「え……冒険者を……派遣? なぜ?」
「決まっている。奴らの所に魔族が出入りしているからだ。どうしてかは知らないが、魔族を匿っている家がある。ワシがその情報を出す。しかし、ワシの所の力だけでは足らぬ。それに協力しろ。ギルドマスター」
「あ……え……」
アタシは先ほどのショックから、中々頭が回らない。
ギルドマスターになってからこんな腑抜けた声を出すのは何時ぶりだろうか……。
そこで、シュタルがアタシの顔を両手で掴む。
「へ……」
「アルマ。貴様、本当にギルドマスターか?」
「え……そ、そう……よ」
「ではなぜこんな大事な話の時に凹んでいる? 今貴様がやらなければならない事はなんだ?」
「で、でも……」
「でもではない。ここで貴様が凹み、正常な判断を下せず、後手に回る。ただでさえミリアムはかなりこの王都に根を張っているようだ。その王都が陥落しようとしている。それでいいのか? そんな状態でこの危機を乗り切れるのか? ここで落ちこんでいて、全てが終わった後に、貴様は……何であの時に対応しなかったのかと、後悔はしないか?」
「……」
アタシは震えていた。
シュタルの怒りがアタシまで伝わって来るようで、彼が……アタシに言っているように見えて、実は自分に言っている様な感じがしていて。
それでも、アタシにも……その何か……過去にあったのかもしれない。
後悔が伝わってきて……。
アタシは立たなければならないと思った。
ここで欲しいのは慰めでも、支えてくれる言葉でもない。
アタシに立つまで本気の言葉を投げつけてくれる、彼の事だと心が理解した。
「アタシ……アタシ……に出来ることは……何がある?」
アタシは頭を切り替える。
今度こそ、しっかりと、ギルドマスターの役職を全うするために。
この大事な……王都を守るために。
「さっきラジェル公爵が言っていただろう。信頼出来る強い冒険者を動かし、魔族がいるであろう屋敷の襲撃に手を貸す。これしかない」
「……分かった。今からギルドに行くよ」
アタシは言われた通りにしようと立ち上がると、シュタルにがっと手を掴まれる。
「きゃ!」
そのままアタシは彼のひざの上に乗せられる。
「な、何をするの。これからギルドに行かなくちゃならないのに」
折角ギルドマスターの気持ちに切り替えたのに、どうしてこんなことに……。
風呂に入ったせいか、顔から日が出そうな程に熱くなる。
「アルマ」
「な、何よ……」
心臓が破裂するのではないかという程に高鳴っているのが分かる。
「これから……真実を確かめにいかないか?」
「真実?」
アタシは、いきなり現実に引き戻された気がした。
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