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2章

24話 救出

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「そんなことあるか~~~~~~!!!!!?????」

 トレントの叫び声が山中に轟く。

「うるさいぞ。黙れ」
「だ、黙れって……貴様……何者なのだ」
「最初に言っただろう。俺は最強の魔剣士シュタル。俺に勝つことが出来る者はいない。そして、己がやったこと……後悔は済んだか?」

 俺は斧を抜き放ち、奴に一歩ずつ近付いて行く。

 奴は怯えた表情で下がりながらも、俺を脅迫してくる。

「く、来るな! それ以上来るどうなるか分かっているのか!」
「どうなるんだ?」
「操っている奴らに殺し合いをさせる!」
「なるほど、それは困った」

 俺がそう言うと、奴は勝ち誇った様に笑う。

「ふん! そうだろう! そうだろう! 俺様を生かしてくれればそんな事はしない」
「なるほどな。だが、ダメだ」
「は?」
「『植物固定魔法プラントロック』」

 俺は奴の動きを魔法で止め、そのまま近付き銀の斧を振り切る。

 その瞬間に魔法を解除した。

 スコン

「何……が……」
「じゃあな」
「そん……な……こ……と……」

 奴はそれから質のいい丸太になり、動かなくなった。

「終わったか」
「シュタルさん! ここから出してくれませんか?」
「ああ、いいぞ」

 俺は彼女を守らせていた魔法も解除し、自由にさせる。

 そんな彼女は勢いよく俺に飛びついて来た。

「シュタルさん!」
「どうした急に」
「今回もありがとうございます。セントロで問題があったばかりなのに……。こんなすぐに問題が起きてしまうなんて……」
「そういう事もあるだろう。それよりも、操られていたやつらの回収を……」
「シュタルさん?」
「……」

 俺は感覚を研ぎ澄ませ、何が起きているのかを把握しようとする。
 さっきまで沈黙していた地面に埋め込んでいた人達の気配が動いていた。
 それ以外にも、もっと遠くにいる人達も……。きっと、操られていた人達の動きもおかしい気がする。

「『広域探知サーチ』」

 俺は魔法を使い、より遠くまで情報を集める事が出来る。
 今使った魔法であれば、半径50km以内にいる存在の状態等を全て理解出来た。

 ただし、これを使うとちょっとだけ疲れるので、あまりやりたくはない。
 それに、知りたくもない情報もある。糞とか。

「シュタルさん? 何をしているんですか?」

 リュミエールは俺から離れ、下から伺うように聞いて来る。

「ちょっと待っていろ」

 俺は彼女を止め、走り出す。

「あ、やっぱ連れていくか」
「え? きゃあああああ!!!」

 俺はおいて行くのは不味いかと考えて、リュミエールを肩に担いで多くの者達を助けに回る。

 操草そうそうで奴に操られていた奴らは、先ほど奴がやっていた事を行ない始めようとしていた。
 ただ、幸いなことに、お互いがそれなりに強いのでまだ死んだ者はいない。
 けれど、それも時間の問題。
 すぐにでも行って止めなければ、俺は先ほどの魔法で探知した場所に向かう。

 それから1分。
 俺はリュミエールの体を気遣いながら、それなりの速度で到着する。

 場所はベルセルの町外壁の辺り、そこに10代から40代の男たちが集まっていた。
 操られたままなのか、お互いに剣を振り合っている。

 ただ、トレントの命令が途中でだったのか、その動きは酷く遅い。

「助けるぞ」
「はい!」

 俺はそんな彼らを救うべく動く。

 まずは奴らの動きを拘束する。
 ただ、流石にこの数は厳しい。優に1000人は超えているのだ。

 少し、力を出してみせるとしよう。
 俺は目を閉じて魔力をいつもより多く引っ張り出し、詠唱を始める。

「我が前から逃れえぬ牢を作れ『水牢魔法アクアジェイル』」
「わわ!」

 目の前に作り出すだけでは足りない。
 この場にいる俺とリュミエール以外の全ての人を閉じ込める為に、人数分の水牢を作り出した。

「いけ」

 俺が指示をすると、それらは全て全員を水の牢に閉じ込めていく。
 よし。

 閉じ込められた者達は、もがいて暴れるけれど、脱出できるほど強い者はいないようだ。

「楽勝だったな」
「流石シュタルさん。こんな簡単に全員を拘束できるなんて」
「任せろ」
「でも……この人達全員の状態を回復させて行かないといけないんですよね……」

 リュミエールはそう言って少し遠い目をしている。

 彼女の言葉を聞き、俺も少し気持ちが落ちこむ。

「このまま無かったことにでききないか?」
「流石にそれは……」
「言ってみただけだ」

 助けないつもりであれば、最初に全員の首をねている。
 でも、操られているだけの奴らに罪はない。
 彼らは……悪人ではないのだ。

「リュミエールは俺が焼いた奴らの回復を頼む」
「え……私……そこまで魔力多くないですよ?」
「足りなくなったら俺が魔力を渡してやる。今晩中に終わらせるぞ」
「しょ……正気ですか? シュタルさん」
「正気だ。急いで王都にも行かねばならんからな」
「……分かりました! 頑張ります!」
「よし! やるぞ!」
「はい!」

 そう元気に返事をするリュミエールだったが、12時間後には大分ヤバい顔つきになっていた。
 何もない所で回復魔法を唱えようとしている姿を見て俺も反省する。

 ただ、その甲斐あって全員を元に戻すことに成功した。
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