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第3章 動乱
67話 贈り物
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俺は列に並ぶが、いつも通りのアイシャと秘書の間を選ぶ。
こっちにこいという視線が前回よりも遥かに強かった気がするのが怖かったからだ。
(あの人達の圧力ってどうにかならないのかな……)
「それでは今回の報奨は終了とする」
皇帝がそう宣言すると、雰囲気がガラリと変わる。
先ほどまでは報奨の席。故に優しいという訳ではないが、ここにいる者達を労うというような雰囲気はあった。
しかし、今はその雰囲気など微塵もなく、肌はひりつき冷汗が浮かんでくる。
「次の議題は反乱を起こしたグレゴール・グラディウス侯爵。いや、反逆者にその様な物言いはせぬ。これよりグレゴールを反逆者と定め、鉄槌を下す。異論のある者は」
「……」
皇帝の言葉には誰も遮らない。
「オルドア!」
「は!」
オルドアが呼ばれ、立ち上がる。
「私兵を連れて反逆者グレゴールを討ち取れ。生死は問わぬ」
「畏まりました」
皇帝とオルドアのやり取りを見て、周囲が少しざわつく。
「幾らなんでも少なすぎでは……?」
「オルドア様の私兵と言ってもそこまで数はいないと思ったが」
「何か秘策があるのですかな?」
オルドア様だけの兵力ではやはり少ないらしい。
「オルドア」
「は!」
「グレゴールの領地までの道中、必要であれば兵士は集めてよい。許す」
「必ずや反逆者グレゴールを討ってご覧に入れます」
「期待している。話は以上だ」
そう言って皇帝は圧力を放ち続けたまま退出した。
俺達も、謁見の間から退出し、ロネ姫の控室に集まる。その際、アイシャと秘書にも来てもらった。
その場には俺やロネ姫、ウテナ、アイシャ、秘書にオリーブとメイドの2人がいる。パルマは特訓があるということで大過の龍脈に帰った。
「お集まり頂きありがとうございます」
ロネ姫が皆を見渡して話す。
「今回の事件。我が陣営からはセレットを送り出すことが決まっています」
「セレットを!?」
「大丈夫なんですか~?」
アイシャと秘書には伝えていなかったので、この場で話してもらう。色々訓練をしていて話す時間が無かったと言ってもいい。本当は引き留められるかもしれないと思ったからだけど。
「俺は問題ない。というよりも、俺からお願いしてついて行くことになった」
「セレット。貴方、どうしたの? 今まで進んで行こうなんてしたこと無かったじゃない」
「アイシャ。俺も主君というものを持ってみて少し分かったことがある」
「?」
「自分の事をバカにされたりするのはどうでもいいが、俺の周りをバカにされるのはどうにも我慢ならない事が分かった」
「セレット……?」
俺は少しアイシャを見る目が真剣な物になっていて、アイシャが怖がっていた。いけない。向ける相手が違う。
「すまん。悪い。少し高ぶってしまった」
「いいけど……。それで?」
「ああ、グレゴールもライアットも、ロネ姫を侮辱したし、何よりアイシャ、お前に手を出してきた。それは少し、いや、大分俺の中では許せない事らしい」
今でも思う。あの時にもしもアイシャが死んでいたらどうなっていたのか。考えるだけでも震えが止まらなくなる。
「だから、手を出して来たやつにはどうなるかをハッキリと教えたい」
「セレット……」
アイシャがため息をつき、俺の方に近づいてくる。そして、そっと抱きしめてくれた。
「セレット、貴方が私たちの事を思うように、私たちも貴方の事を大切に思っていることを忘れないでね?」
「アイシャ……」
「ここまで黙ってたのは私が貴方を引き留めると思っていたから?」
「それもある……」
「全く、私だって子供じゃないんだから。止めたりしないわよ。それに、助けて貰ったのに文句を言うような事もしない。だけど、力にはならせて」
「?」
アイシャはそう言うと俺から離れて、秘書の方を向く。
「出して頂戴」
「はい~」
秘書は懐から何かを取り出した。
アイシャが受けとり、俺に差し出す。それは、7色、いや、光の加減でみれば8色に光るブローチだった。金色の枠に、中には様々な色の宝石が砕かれた後にくっつけらたのか、1つにまとまっていた。
「これは……」
「ジュエルドラゴンを倒して貰ったでしょう? その時の素材を使って作ったの」
「綺麗だ」
「あ、でも結構目立つから、普段は隠しておいた方がいいわ。敵に見つかりやすくなるし」
「分かった」
「その道具の効果は1つ。龍力を貯めること。ただそれだけよ」
「本当か!?」
今までだったら龍力は2,3日もすれば消えていた。アスカロードの場合少量なら貯められたが、それでも少しずつ減っていった。
「しかも、1か月は貯めたままに出来るわ」
「そんな……これもアーティファクト級の代物じゃないのか?」
「私もそうだと言いたいんだけど……実はね」
アイシャがさっきまでは胸を張っていたのに、少し気落ちしたように言ってくる。
「それ、実は龍力を出す時に魔力が必要になるのよ……。それも、結構繊細な力加減にしないと想像以上の龍力が出てきちゃうから、扱いも難しいの」
「それでも十分だ。後で龍力を少し貰って試してみる」
「ええ、出発は3日後でしょう? それまでにやっておくといいわ」
「分かった」
「こほん」
咳をした方を見ると、そこにはロネ姫がいた。彼女の周囲の人々は少し苦笑しているようだ。
まずい。彼らの存在をすっかり忘れていた。
「それで、セレットとアイシャさんのお話は終わりですか?」
「ああ、俺は元々説明するだけだったしな」
「私も必要な物は渡せたし、後はちゃんと龍力を保存出来るかを確認したいくらいですね」
「分かりました。アイシャさん。この後少しよろしいですか?」
「私ですか? はい。大丈夫ですが」
「それでは皆さん退出をお願いします」
「え? そんな秘密の話何ですか?」
アイシャが戸惑っている。
「姫様?」
俺はロネ姫に聞こうとする。
「ほらほら、主君が出ろと言ってるんだ。行くぞ」
「え? ちょっと、ウテナ!?」
「さぁさぁ行った行った」
俺はウテナに押される形で退出することになった。中で何が行なわれているのか耳を済まそうとしたけど、ウテナの妨害で聞くことが出来なかったのが悔やまれる。
「セレット、姫様を信じろ。アイシャ殿には悪い話ではない」
「そうなのか?」
「当然だ。アイシャ殿と敵対するメリット等何もないからな。それよりも今は暇か?」
「え……。アイシャから貰ったこれを試してしたいんだが……」
俺がそう言うと、ウテナはにっこりと笑顔になる。
「よし、暇だな。3日間あるんだ。私はそれについて行くことができない。だから、今日から3日間たっぷりと稽古をつけて貰うぞ」
「いやいや、俺はこれから」
「何、セレットは寝ないでも問題ないことが分かったからな。それだけの体力があるんだ。我々の相手もしてもらおうか」
ウテナはロネ姫の護衛の時の話をしているのかもしれない。
「そんな、あれは仕事で」
「私との関係は仕事だけだったのか?」
「そ、そんな言い方は」
「では行こう。さあ行こう。まさか我々の前で見せつけて来るとはな。なぁ秘書殿」
「私まで巻き込まないで貰えますかー!?」
話をしながら俺はウテナに訓練場まで引き連れられて行った。
****************
大変勝手ながら、少しお休みをいただきたいです。
3章はこれで終了になるのですが、続きが中々書けていない状況です。
申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
こっちにこいという視線が前回よりも遥かに強かった気がするのが怖かったからだ。
(あの人達の圧力ってどうにかならないのかな……)
「それでは今回の報奨は終了とする」
皇帝がそう宣言すると、雰囲気がガラリと変わる。
先ほどまでは報奨の席。故に優しいという訳ではないが、ここにいる者達を労うというような雰囲気はあった。
しかし、今はその雰囲気など微塵もなく、肌はひりつき冷汗が浮かんでくる。
「次の議題は反乱を起こしたグレゴール・グラディウス侯爵。いや、反逆者にその様な物言いはせぬ。これよりグレゴールを反逆者と定め、鉄槌を下す。異論のある者は」
「……」
皇帝の言葉には誰も遮らない。
「オルドア!」
「は!」
オルドアが呼ばれ、立ち上がる。
「私兵を連れて反逆者グレゴールを討ち取れ。生死は問わぬ」
「畏まりました」
皇帝とオルドアのやり取りを見て、周囲が少しざわつく。
「幾らなんでも少なすぎでは……?」
「オルドア様の私兵と言ってもそこまで数はいないと思ったが」
「何か秘策があるのですかな?」
オルドア様だけの兵力ではやはり少ないらしい。
「オルドア」
「は!」
「グレゴールの領地までの道中、必要であれば兵士は集めてよい。許す」
「必ずや反逆者グレゴールを討ってご覧に入れます」
「期待している。話は以上だ」
そう言って皇帝は圧力を放ち続けたまま退出した。
俺達も、謁見の間から退出し、ロネ姫の控室に集まる。その際、アイシャと秘書にも来てもらった。
その場には俺やロネ姫、ウテナ、アイシャ、秘書にオリーブとメイドの2人がいる。パルマは特訓があるということで大過の龍脈に帰った。
「お集まり頂きありがとうございます」
ロネ姫が皆を見渡して話す。
「今回の事件。我が陣営からはセレットを送り出すことが決まっています」
「セレットを!?」
「大丈夫なんですか~?」
アイシャと秘書には伝えていなかったので、この場で話してもらう。色々訓練をしていて話す時間が無かったと言ってもいい。本当は引き留められるかもしれないと思ったからだけど。
「俺は問題ない。というよりも、俺からお願いしてついて行くことになった」
「セレット。貴方、どうしたの? 今まで進んで行こうなんてしたこと無かったじゃない」
「アイシャ。俺も主君というものを持ってみて少し分かったことがある」
「?」
「自分の事をバカにされたりするのはどうでもいいが、俺の周りをバカにされるのはどうにも我慢ならない事が分かった」
「セレット……?」
俺は少しアイシャを見る目が真剣な物になっていて、アイシャが怖がっていた。いけない。向ける相手が違う。
「すまん。悪い。少し高ぶってしまった」
「いいけど……。それで?」
「ああ、グレゴールもライアットも、ロネ姫を侮辱したし、何よりアイシャ、お前に手を出してきた。それは少し、いや、大分俺の中では許せない事らしい」
今でも思う。あの時にもしもアイシャが死んでいたらどうなっていたのか。考えるだけでも震えが止まらなくなる。
「だから、手を出して来たやつにはどうなるかをハッキリと教えたい」
「セレット……」
アイシャがため息をつき、俺の方に近づいてくる。そして、そっと抱きしめてくれた。
「セレット、貴方が私たちの事を思うように、私たちも貴方の事を大切に思っていることを忘れないでね?」
「アイシャ……」
「ここまで黙ってたのは私が貴方を引き留めると思っていたから?」
「それもある……」
「全く、私だって子供じゃないんだから。止めたりしないわよ。それに、助けて貰ったのに文句を言うような事もしない。だけど、力にはならせて」
「?」
アイシャはそう言うと俺から離れて、秘書の方を向く。
「出して頂戴」
「はい~」
秘書は懐から何かを取り出した。
アイシャが受けとり、俺に差し出す。それは、7色、いや、光の加減でみれば8色に光るブローチだった。金色の枠に、中には様々な色の宝石が砕かれた後にくっつけらたのか、1つにまとまっていた。
「これは……」
「ジュエルドラゴンを倒して貰ったでしょう? その時の素材を使って作ったの」
「綺麗だ」
「あ、でも結構目立つから、普段は隠しておいた方がいいわ。敵に見つかりやすくなるし」
「分かった」
「その道具の効果は1つ。龍力を貯めること。ただそれだけよ」
「本当か!?」
今までだったら龍力は2,3日もすれば消えていた。アスカロードの場合少量なら貯められたが、それでも少しずつ減っていった。
「しかも、1か月は貯めたままに出来るわ」
「そんな……これもアーティファクト級の代物じゃないのか?」
「私もそうだと言いたいんだけど……実はね」
アイシャがさっきまでは胸を張っていたのに、少し気落ちしたように言ってくる。
「それ、実は龍力を出す時に魔力が必要になるのよ……。それも、結構繊細な力加減にしないと想像以上の龍力が出てきちゃうから、扱いも難しいの」
「それでも十分だ。後で龍力を少し貰って試してみる」
「ええ、出発は3日後でしょう? それまでにやっておくといいわ」
「分かった」
「こほん」
咳をした方を見ると、そこにはロネ姫がいた。彼女の周囲の人々は少し苦笑しているようだ。
まずい。彼らの存在をすっかり忘れていた。
「それで、セレットとアイシャさんのお話は終わりですか?」
「ああ、俺は元々説明するだけだったしな」
「私も必要な物は渡せたし、後はちゃんと龍力を保存出来るかを確認したいくらいですね」
「分かりました。アイシャさん。この後少しよろしいですか?」
「私ですか? はい。大丈夫ですが」
「それでは皆さん退出をお願いします」
「え? そんな秘密の話何ですか?」
アイシャが戸惑っている。
「姫様?」
俺はロネ姫に聞こうとする。
「ほらほら、主君が出ろと言ってるんだ。行くぞ」
「え? ちょっと、ウテナ!?」
「さぁさぁ行った行った」
俺はウテナに押される形で退出することになった。中で何が行なわれているのか耳を済まそうとしたけど、ウテナの妨害で聞くことが出来なかったのが悔やまれる。
「セレット、姫様を信じろ。アイシャ殿には悪い話ではない」
「そうなのか?」
「当然だ。アイシャ殿と敵対するメリット等何もないからな。それよりも今は暇か?」
「え……。アイシャから貰ったこれを試してしたいんだが……」
俺がそう言うと、ウテナはにっこりと笑顔になる。
「よし、暇だな。3日間あるんだ。私はそれについて行くことができない。だから、今日から3日間たっぷりと稽古をつけて貰うぞ」
「いやいや、俺はこれから」
「何、セレットは寝ないでも問題ないことが分かったからな。それだけの体力があるんだ。我々の相手もしてもらおうか」
ウテナはロネ姫の護衛の時の話をしているのかもしれない。
「そんな、あれは仕事で」
「私との関係は仕事だけだったのか?」
「そ、そんな言い方は」
「では行こう。さあ行こう。まさか我々の前で見せつけて来るとはな。なぁ秘書殿」
「私まで巻き込まないで貰えますかー!?」
話をしながら俺はウテナに訓練場まで引き連れられて行った。
****************
大変勝手ながら、少しお休みをいただきたいです。
3章はこれで終了になるのですが、続きが中々書けていない状況です。
申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
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