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第壱章 天才刀鍛冶ノ譚
第2話 セカンドライフ
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世界史上最高の天才刀鍛冶が、その日亡くなった。
羅刀毘沙門天を置いて、天に昇っていってしまった。
しかし、それを哀れに思ったお方がいた。
そのお方は、刀壱郎をもう一度その世界に還すことのできる存在。
生物だったり、地球だったり、宇宙だったり。世界の全ての頂点に立つ存在。
何を隠そう、最高神全皇崇様であった。
刀逸郎の才能や、その努力等を、天界からご覧になっていたため、そのようにお考えなさったのだ。
更には、刀壱郎のような天才を、下界にお送りになったのも、全皇崇様直々にしてくださったのだ。
つまり刀壱郎は、全皇崇様の下界への使者のような存在であったのだ。
そして、この男にもう一度チャンスを与えると、ご判断なさったのだ。
そして、時は過ぎていった。
刀壱郎の魂は、大事に保管され、更に高みへと育て上げられていった。
全皇崇様は、刀壱郎の能力を高めてくれたし、恵んだ配偶を用意してくれた。
至れり尽くせりではないか。
何十年も、天界で大事に保管された刀壱郎の魂が、ようやく下界へ降ろされる。
前世より遥かに強くなって、刀壱郎はこの惑星に帰ってくる。
おぞましく、憎き獣を殲滅するために。
「オギャーオギャー、」
鮮明な誕生だった。
五感が全て冴え渡っている。
赤ちゃんだという感覚が、一切ない。
強いて言うなら、「オギャーオギャー」しか声を出せないことだ。
「お母さん、よく頑張りましたね。元気な女の子ですよ。」
これが、感動のシーンてやつか。
「元気な女の子ですよ」とか、ドラマでよく聞く台詞だ。
ん?
ちょっと待て。今、重要なことをさらりと言った気がする。
元気な、...女の子?
おい、待てよ、そんなの聞いてないぞ?
第2の人生って、女に生まれ変わるのかよ!
「セレナ、好き嫌いしないで、なんでも食べるのよ。」
「分かってるわ、お母様。」
はい、誕生から5年が経ちました。
5年もの歳月を、三行のスペースで飛ばしてしまったことは、心から謝罪いたします。
ということで、今は5才なわけだが、どうやら刀壱郎のころより数世紀も時代が過ぎているらしい。
もう漢字を使った名前は、この世から跡形もなく消えていた。
というか、私がどうして女に生まれ変わったか何となくわかった気がする。
女の方が、魔法に向いているから。
だと思う。もはや、刀の才能は前世の才能を満遍なく遺伝しているため、文句無し。
そうとなると、やはり魔法を極めるしかないだろう。
「スープ溢してるスープ溢してる!」
「ひえぇっ!」
タラタラと溢したスープを指摘されたのだが、それが仇となってしまった。
声に驚いて、皿ごと上空にぶん投げてしまった。
なんでか知らないけど、皿はジャストに私の頭にはまってしまった。
当然、頭からスープを浴びて、体からコンソメの匂いを醸している。
「あ、ごめん。」
「いえ、大丈夫よ。」
正直母を責めたい気分だが、従順な娘を演じる他なかった。
いつかは、この実力を表沙汰にして、獣を殲滅するために戦わなければならない。
めんどくさいぃ~。
まだ、女でいることに慣れていない。
いっそ、男っぽい気の強い女っていう設定でいった方が楽かも。
いや、絶対その方が楽だ。
よし、いずれそうしよう。
「ごめんね、セレナ。」
「全然大丈夫。」
確かに、体からスープを浴びるのはいい気はしない。
私がビックリしてしまったことも悪いわけだし。
どっちもどっちってやつだよね。
お風呂に入って、体を流したら、自分の部屋で魔法の勉強をした。
今度は、全皇崇様をガッカリさせるような真似はできない。
相当な努力が必要なことは、既に分かっている。
ていうか、今更だけど、女子の体ってすんごい軽やかに動くんだな。
男のゴツい体とは、全くの別物のようだ。同じ人間だというのに。
そして、生まれ変わったときから気づいてはいた。
気づいてはいたけど、敢えて触れてこなかったのだが、
なんで、心は男のままなのに、自らの女子の体に興奮しないんだ?
前世だったら、絶対一物がいきり立っていたに違いない。
貧相な体ではあるが、双丘の頂点は確認できるし、下半身の方も言わずもながだ。
いや、今じゃ、どんな女にも興奮しない気がする。
自分が、生物学的に、女だからだ...!
もう完全に、自分は女になっている。
前世は刀鍛冶で世界的に有名で、名を馳せた真光刀逸郎は、既に女になって第2の人生を廻っちゃってるって訳か。
ほーほー、これは面白いな。
てか、そんなことより...
「魔法って、意外に簡単?」
前世は一ミリも触れてこなかったせいで、魔法は難しいという謎の固定観念があったけど、こうやって実際に学んでみると、意外に簡単だったりしちゃう?
魔法も刀も使える、最強の戦士になれたりしちゃう?
ひょっとして、獣とかって余裕で狩れたりしちゃう?
なんだ、意外といける気がしてきた。
今まで、ずっと上手くいくか不安だったけど、陽気に考えてみれば気が楽になった。
ずっと肩にのし掛かってた、プレッシャーだとか不安だとかが、一気に崩れた気がした。
よし、やって見せるぜ。
この世の獣は、全部俺が殲滅してやる!
羅刀毘沙門天を置いて、天に昇っていってしまった。
しかし、それを哀れに思ったお方がいた。
そのお方は、刀壱郎をもう一度その世界に還すことのできる存在。
生物だったり、地球だったり、宇宙だったり。世界の全ての頂点に立つ存在。
何を隠そう、最高神全皇崇様であった。
刀逸郎の才能や、その努力等を、天界からご覧になっていたため、そのようにお考えなさったのだ。
更には、刀壱郎のような天才を、下界にお送りになったのも、全皇崇様直々にしてくださったのだ。
つまり刀壱郎は、全皇崇様の下界への使者のような存在であったのだ。
そして、この男にもう一度チャンスを与えると、ご判断なさったのだ。
そして、時は過ぎていった。
刀壱郎の魂は、大事に保管され、更に高みへと育て上げられていった。
全皇崇様は、刀壱郎の能力を高めてくれたし、恵んだ配偶を用意してくれた。
至れり尽くせりではないか。
何十年も、天界で大事に保管された刀壱郎の魂が、ようやく下界へ降ろされる。
前世より遥かに強くなって、刀壱郎はこの惑星に帰ってくる。
おぞましく、憎き獣を殲滅するために。
「オギャーオギャー、」
鮮明な誕生だった。
五感が全て冴え渡っている。
赤ちゃんだという感覚が、一切ない。
強いて言うなら、「オギャーオギャー」しか声を出せないことだ。
「お母さん、よく頑張りましたね。元気な女の子ですよ。」
これが、感動のシーンてやつか。
「元気な女の子ですよ」とか、ドラマでよく聞く台詞だ。
ん?
ちょっと待て。今、重要なことをさらりと言った気がする。
元気な、...女の子?
おい、待てよ、そんなの聞いてないぞ?
第2の人生って、女に生まれ変わるのかよ!
「セレナ、好き嫌いしないで、なんでも食べるのよ。」
「分かってるわ、お母様。」
はい、誕生から5年が経ちました。
5年もの歳月を、三行のスペースで飛ばしてしまったことは、心から謝罪いたします。
ということで、今は5才なわけだが、どうやら刀壱郎のころより数世紀も時代が過ぎているらしい。
もう漢字を使った名前は、この世から跡形もなく消えていた。
というか、私がどうして女に生まれ変わったか何となくわかった気がする。
女の方が、魔法に向いているから。
だと思う。もはや、刀の才能は前世の才能を満遍なく遺伝しているため、文句無し。
そうとなると、やはり魔法を極めるしかないだろう。
「スープ溢してるスープ溢してる!」
「ひえぇっ!」
タラタラと溢したスープを指摘されたのだが、それが仇となってしまった。
声に驚いて、皿ごと上空にぶん投げてしまった。
なんでか知らないけど、皿はジャストに私の頭にはまってしまった。
当然、頭からスープを浴びて、体からコンソメの匂いを醸している。
「あ、ごめん。」
「いえ、大丈夫よ。」
正直母を責めたい気分だが、従順な娘を演じる他なかった。
いつかは、この実力を表沙汰にして、獣を殲滅するために戦わなければならない。
めんどくさいぃ~。
まだ、女でいることに慣れていない。
いっそ、男っぽい気の強い女っていう設定でいった方が楽かも。
いや、絶対その方が楽だ。
よし、いずれそうしよう。
「ごめんね、セレナ。」
「全然大丈夫。」
確かに、体からスープを浴びるのはいい気はしない。
私がビックリしてしまったことも悪いわけだし。
どっちもどっちってやつだよね。
お風呂に入って、体を流したら、自分の部屋で魔法の勉強をした。
今度は、全皇崇様をガッカリさせるような真似はできない。
相当な努力が必要なことは、既に分かっている。
ていうか、今更だけど、女子の体ってすんごい軽やかに動くんだな。
男のゴツい体とは、全くの別物のようだ。同じ人間だというのに。
そして、生まれ変わったときから気づいてはいた。
気づいてはいたけど、敢えて触れてこなかったのだが、
なんで、心は男のままなのに、自らの女子の体に興奮しないんだ?
前世だったら、絶対一物がいきり立っていたに違いない。
貧相な体ではあるが、双丘の頂点は確認できるし、下半身の方も言わずもながだ。
いや、今じゃ、どんな女にも興奮しない気がする。
自分が、生物学的に、女だからだ...!
もう完全に、自分は女になっている。
前世は刀鍛冶で世界的に有名で、名を馳せた真光刀逸郎は、既に女になって第2の人生を廻っちゃってるって訳か。
ほーほー、これは面白いな。
てか、そんなことより...
「魔法って、意外に簡単?」
前世は一ミリも触れてこなかったせいで、魔法は難しいという謎の固定観念があったけど、こうやって実際に学んでみると、意外に簡単だったりしちゃう?
魔法も刀も使える、最強の戦士になれたりしちゃう?
ひょっとして、獣とかって余裕で狩れたりしちゃう?
なんだ、意外といける気がしてきた。
今まで、ずっと上手くいくか不安だったけど、陽気に考えてみれば気が楽になった。
ずっと肩にのし掛かってた、プレッシャーだとか不安だとかが、一気に崩れた気がした。
よし、やって見せるぜ。
この世の獣は、全部俺が殲滅してやる!
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