邪神の恩返し

白南井 誰方

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第0章 破壊神 爬沼蛭(はぬま ひる)編

儀式 【R15】

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 学校が終わって、ぼくは、友達のカイン君と別れて家に帰ってきました。

「ただいま帰りました、お父様」
「地下室に来なさい」
「はい……」

 お父様が階段を先に降りていくので、それに着いて行きます。その先にあるのは地下室。
 四方の壁、天井、床までもが無機質なコンクリートで固められた部屋。
 お父様がこの部屋の鍵を閉めました。

 ぼくは、この部屋を拷問部屋って呼んでいます。

 お父様にお腹を殴られました。ぼくは立っていられずに倒れこんでしまいます。
 蹴られ、罵声を浴びせられ、また殴られ、気絶して水をかけられ、目が覚めればまた殴られる。倒れこみ、嘔吐し、また蹴られ、殴られる。

 その、繰り返し。

 痣が増えていく、痛覚が死んでいく。自分の体を他人事のように眺めながら、幸せだった頃を思い出します。
 お父さんは、ぼくが十歳になるまでは、とても優しかったんです。そんなお父さんが大好きでした。お父様による暴力が始まったのは一ヶ月前、ぼくの十歳の誕生日でした。あんなに優しかったお父さんが……。

 そういえばこの頃に、カイン君が転校してきたんでした。カイン君と遊んでいる時は、嫌な事全部忘れる事が出来ました。カイン君は日本語が本当に上手で、もうクラスになじんでしまいました。

 苦しい、息が出来ない……! 気が付いたらお父様に首を絞められていました。ぼくの気が反れた時、お父様はいつもこうします。それで、今の自分の状況を思い出してしまいました。顔は、胃から吐き出した物でぐちゃぐちゃでした。気持ち悪い……。

 ぼくは抵抗しません。抵抗しようともがく方が疲れちゃうと分かっていたからです。

 解放されたのは、表の世界ちきゅうの時間で一時間後。ぼくは疲労困憊でした。
 姿見で自分の体を確認したけれど、体中にあったはずの痣はいつの間にか消えていました。いつもこうなので、驚きは有りません。お父様は、そういうなのだ、と言っていました。よく分からなかったけど、カイン君とかクラスの皆に心配かけなくても済むし、そういうものだと思っておくことにしました。
 でも体についた血とか汚れはそのままです。地下室から出た僕は、シャワーを浴びたくてお風呂場に向かいます。
 ぼろきれになってしまった服をゴミ箱に放り込み、火傷しそうな位に熱くしたシャワーで、全身を洗い流します。さっきのことを思い出してしまうと気分が悪くなっちゃうので、熱いシャワーに紛らわせる。

 さっきの記憶も封印しておかなくちゃね。
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