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第3章 マリア・ダ・ネーク編 side Matthew
32 暗鬼
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十分ほど地下の穴を進むと、チビ共とマリアと合流できた。チビ共も毒ガスのダメージから回復したようで顔色も悪くなくて一安心した。
「マリアさん、それと皆! 無事で良かった!」
マリア達は反応していない。
「ウィンドコントロールの範囲にマリア達を含めないと声が届かないぞ」
「あっ」
セルシウスは、チビ達へと走っていき、再会を泣いて喜んでいた。俺はそれを眺めつつ、ホッとため息を吐く。
「なんにせよ、早い内に合流できて良かった。後は獣人に見つからないように脱出するだけだな」
あの家は放棄せざるを得ないだろうが、学園に入れば寮生活だから問題ないだろ。あぁ、ちび達は寮に住めないだろうから、その場合は俺たちが預かってやろう。
それ自体はまぁ良い。問題はこの一連の事件だ。
ビルドはこの襲撃のタイミングを知っていたようだ。一体どうやって?
そして襲撃のタイミングを知っていたのなら尚更、今回の襲撃の回避の仕方に他のやり方があっただろうと思う。
例えば今回の襲撃でセルシウスが死んだことにして、別人としてほとぼりが覚めるのを待つとかな。なんなら今回の件で獣人に報復して、完全に後顧の憂いを断つことだってできたはずだ。このままだと学園の中でもセルシウスが狙われることになってしまうし、マリアがそれに巻き込まれる可能性も十分にある。
と、それは後付けの理由だ。結局俺は違和感を拭えずにいるのだ。なぜならビルドのやってることは、セルシウスを助けたいのか助けたくないのかはっきりしないから。それに加えて何かが引っかかっているんだ。だが、何が引っかかっているのか分からない……。
「マシューさんマリアさん、本当にありがとうございます。もし貴方達が居なければ、俺と皆が全員無事ではいられなかったかも知れない」
「まだ獣人が追ってくるかもしれないんだから、ちゃんと外に出られるまでお礼なんて受け取れないよ!」
「そうだな」
思考を切り替えよう。これはあとでも考えられる事だ。今は俺たちが全員無事に脱出することを考えなくては。
今まで気が散っていて気付かなかったが、ボースの顔色がこの暗闇の中でも分かるくらいに悪くなっていた。毒ガスがまだ完全には抜けてないからだろうか? 真人族は魔力はあるが素の体力は少ないからな、毒や菌に弱いのだ。
ボースが体調悪いってことはと、もう一人の真人であるヒッグスを見たところ、何やらマリアに耳打ちしていた。マリアはそれに笑顔で頷いた。マリアがこちらにやってきた。
「ねぇマシュー、ボースの体力が中々戻らなくて……ボースを背負って、先に洞窟を抜けててくれる?」
「ああ、分かった。まかせろ」
「マリアさん、それと皆! 無事で良かった!」
マリア達は反応していない。
「ウィンドコントロールの範囲にマリア達を含めないと声が届かないぞ」
「あっ」
セルシウスは、チビ達へと走っていき、再会を泣いて喜んでいた。俺はそれを眺めつつ、ホッとため息を吐く。
「なんにせよ、早い内に合流できて良かった。後は獣人に見つからないように脱出するだけだな」
あの家は放棄せざるを得ないだろうが、学園に入れば寮生活だから問題ないだろ。あぁ、ちび達は寮に住めないだろうから、その場合は俺たちが預かってやろう。
それ自体はまぁ良い。問題はこの一連の事件だ。
ビルドはこの襲撃のタイミングを知っていたようだ。一体どうやって?
そして襲撃のタイミングを知っていたのなら尚更、今回の襲撃の回避の仕方に他のやり方があっただろうと思う。
例えば今回の襲撃でセルシウスが死んだことにして、別人としてほとぼりが覚めるのを待つとかな。なんなら今回の件で獣人に報復して、完全に後顧の憂いを断つことだってできたはずだ。このままだと学園の中でもセルシウスが狙われることになってしまうし、マリアがそれに巻き込まれる可能性も十分にある。
と、それは後付けの理由だ。結局俺は違和感を拭えずにいるのだ。なぜならビルドのやってることは、セルシウスを助けたいのか助けたくないのかはっきりしないから。それに加えて何かが引っかかっているんだ。だが、何が引っかかっているのか分からない……。
「マシューさんマリアさん、本当にありがとうございます。もし貴方達が居なければ、俺と皆が全員無事ではいられなかったかも知れない」
「まだ獣人が追ってくるかもしれないんだから、ちゃんと外に出られるまでお礼なんて受け取れないよ!」
「そうだな」
思考を切り替えよう。これはあとでも考えられる事だ。今は俺たちが全員無事に脱出することを考えなくては。
今まで気が散っていて気付かなかったが、ボースの顔色がこの暗闇の中でも分かるくらいに悪くなっていた。毒ガスがまだ完全には抜けてないからだろうか? 真人族は魔力はあるが素の体力は少ないからな、毒や菌に弱いのだ。
ボースが体調悪いってことはと、もう一人の真人であるヒッグスを見たところ、何やらマリアに耳打ちしていた。マリアはそれに笑顔で頷いた。マリアがこちらにやってきた。
「ねぇマシュー、ボースの体力が中々戻らなくて……ボースを背負って、先に洞窟を抜けててくれる?」
「ああ、分かった。まかせろ」
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