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第四章 大精霊を求めて
4-82 冒険者ギルドのクリスマス
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俺達は婚約した夜のクリスマスイブを、愛しの婚約者の彼女と過ごし、一緒に遅めの朝食を作っていた。
こういう作業も、俺達二人は阿吽の呼吸で自然体にこなしている。
そして泉がサラダ用の菜っ葉を千切りながら言ってくる。
「今朝の食事は軽くにしておきましょうか。
どうせ昼からパーティなんでしょう?」
俺はパンやスープを温め、紅茶の準備をしつつ答えた。
あとヨーグルトが欲しいので、これも発酵のスキル持ちのフォミオに頼んである。
「ああ、向こうはまた激しくドンチャン騒ぎになると思うぜ。
あの子達、宗篤姉妹も来るだろうしな。
SSSランクが勢ぞろいだぜ。
いつもの勇者の面々も呼んであるんだ。
今回は目玉となる魚海さんも呼んだしな」
こうやっていると、まるでもう結婚したみたいな雰囲気だな。
お互い、子供の世話なんかはもう手慣れたものなので、子供ができても、この異世界で充分に楽しくやっていけるだろう。
焼き締めパン村に住むにしても家はどうするかね。
結婚して子供部屋を作る事までは頭になかったのだ。
まあ最初はうちの小屋でもいいけどね。
ちゃんと万能選手の子守りまでこなす使用人付きなのだ!
今度上手い事拡張できないか、あの男爵に訊いてみようかな。
最悪は領主館に間借りする事も考えておこう。
あるいは古いカイザの家なんかを借りても趣があって悪くないかもしれん。
うちは貴族でもなんでもないから、あれでも十分に、いやむしろあの方が楽しいからな。
なんというか、現地の異世界様式そのものというか。
「ああ、あれをやるのね。
あたしも楽しみだわ」
「俺もあれには目が無いんだよ。
こっちの仲間から、どんな反応が返ってくるかと思うと楽しみだなあ」
「どうかしらね、この世界の人には食べ慣れない食べ物だから」
「まあね、でも外国人にもそれなりに好評だぜ」
「まあ外国人でも食べ慣れている人にはいいかもしれないわね」
「まあ、納豆あたりに比べたらな」
「あははは、それはないわ」
「でも、カイザは納豆なんか平気で食っているし、ルーテシアやマーシャも大丈夫だ。
アリシャなんか、もう納豆がないと生きていけない体らしいぜ。
フォミオに習って自分でも納豆作りに励んでいるし、今度は自分の畑で大豆を育てるところから頑張るつもりらしい」
「あは、そいつはまた素敵なお話ね」
そんなこんなで早めにビトーへと向かう事にした。王宮へ迎えに行くと、皆がもう中庭にほぼ集合していた。男衆は皆いるなっと。
「全員、集まったかなあ」
「あれ、姶良ちゃんがいない」
可愛い真っ赤な衣装のミニスカサンタさんになっている、とりわけ彼女と仲のいい聖奈嬢が、周りをきょろきょろしながら見渡していたので、泉も苦笑していた。
「あの子、物凄く寝坊だからね。
日本では毎日お母さんに何回も起こされていたらしいわよ。
演習の時も遅刻していて、女兵士さんが部屋まで迎えに行っていたくらいだもの」
そいつはまた、娘がいなくなったら気が抜けたような生活だろうな。
ここは頑張って帰り道探しを手伝わないといけないかもなあ。
「何やってんの、あの子。
まあ今日は軍事関連でも王宮行事でもない、俺の管轄で内輪でやるパーティだから別にいいんだけどなあ」
すると、バタバタとパンを咥えて走ってきた、少し寝ぐせのついたミニスカサンタさんがやって来た。
生憎な事に、ここでは角を曲がったところで運命の人と出会えるイベントは起きそうにないが。
ここは中庭の真ん中で、ブラインドになっている角はないしな。
「もう遅いよー、姶良ちゃん」
「ごめーん。
昨日、遅くまでマンガ描いてたから」
「なんだ、お前さん、マンガ家志望だったのか?」
「あー、趣味の奴ですう。
男の人には関係ないの!」
「あっそう」
こいつめ、まさかそっち系だったとは。
まさか異世界で薄い本の布教でもするつもりなのか。
まあ好きにすればいいさ。
「じゃあ、みんな揃ったなー」
「ああ、チェックした」
一人や二人遅刻したくらいでは微塵も揺るがない引率者達。
例によって、アメリアさんだけは一緒、と思いきや。
見慣れない男性勇者が一人いた。
勇者なのはわかるのだが、顔と名前がよく思いだせない。
見覚えはあるのだが、優秀な営業の俺の記憶スキルにも忘れ去られるとは、かなりのステルススキル持ちらしい。
「あれ、あんたは」
「あー、どうも」
「どうも」
俺は泉に「誰だっけ」という視線を送ったが、彼女は笑っている。
「ああ、うちの彼氏なんだけど、連れていっていいよね」
そういうことを言っていたのは、なんと斎藤さんだった。
「ありゃあ、斎藤さんも勇者の彼氏を作っていたんですねー」
「うん、夕べ」
速攻だな、おい。
まあいかにも斎藤さんって感じの行動だな。
そういや、こんな人もいたな。
少し大人しい感じの人で、歳は二十代後半に入ったかどうかくらいか。
目立たない感じだが、あのヤンキーどものような尊大な事はなく、抜け目ないというよりかは、気を使って慎重に立ち回っていたタイプのようだ。
他人に気配りの出来るようなタイプだな。
斎藤さんとのカップリングがアンマッチにしかみえないが、まあ逆に考えればこういう組み合わせの方がいいのかもしれん。
あ、思いだした。
迂闊な、俺はこの人の事を何故忘れていたのか。
「あんた、たしか……」
「え? 僕がどうかしましたか?」
「ああいや、なんでもないんだ」
彼はきょとんとした顔で俺を見ていた。
師匠や姐御は気付いているかもしれないな。
いや、師匠は知っているはずだわ。
だって、あの時。
だから余計に師匠は俺の事を。
こういう作業も、俺達二人は阿吽の呼吸で自然体にこなしている。
そして泉がサラダ用の菜っ葉を千切りながら言ってくる。
「今朝の食事は軽くにしておきましょうか。
どうせ昼からパーティなんでしょう?」
俺はパンやスープを温め、紅茶の準備をしつつ答えた。
あとヨーグルトが欲しいので、これも発酵のスキル持ちのフォミオに頼んである。
「ああ、向こうはまた激しくドンチャン騒ぎになると思うぜ。
あの子達、宗篤姉妹も来るだろうしな。
SSSランクが勢ぞろいだぜ。
いつもの勇者の面々も呼んであるんだ。
今回は目玉となる魚海さんも呼んだしな」
こうやっていると、まるでもう結婚したみたいな雰囲気だな。
お互い、子供の世話なんかはもう手慣れたものなので、子供ができても、この異世界で充分に楽しくやっていけるだろう。
焼き締めパン村に住むにしても家はどうするかね。
結婚して子供部屋を作る事までは頭になかったのだ。
まあ最初はうちの小屋でもいいけどね。
ちゃんと万能選手の子守りまでこなす使用人付きなのだ!
今度上手い事拡張できないか、あの男爵に訊いてみようかな。
最悪は領主館に間借りする事も考えておこう。
あるいは古いカイザの家なんかを借りても趣があって悪くないかもしれん。
うちは貴族でもなんでもないから、あれでも十分に、いやむしろあの方が楽しいからな。
なんというか、現地の異世界様式そのものというか。
「ああ、あれをやるのね。
あたしも楽しみだわ」
「俺もあれには目が無いんだよ。
こっちの仲間から、どんな反応が返ってくるかと思うと楽しみだなあ」
「どうかしらね、この世界の人には食べ慣れない食べ物だから」
「まあね、でも外国人にもそれなりに好評だぜ」
「まあ外国人でも食べ慣れている人にはいいかもしれないわね」
「まあ、納豆あたりに比べたらな」
「あははは、それはないわ」
「でも、カイザは納豆なんか平気で食っているし、ルーテシアやマーシャも大丈夫だ。
アリシャなんか、もう納豆がないと生きていけない体らしいぜ。
フォミオに習って自分でも納豆作りに励んでいるし、今度は自分の畑で大豆を育てるところから頑張るつもりらしい」
「あは、そいつはまた素敵なお話ね」
そんなこんなで早めにビトーへと向かう事にした。王宮へ迎えに行くと、皆がもう中庭にほぼ集合していた。男衆は皆いるなっと。
「全員、集まったかなあ」
「あれ、姶良ちゃんがいない」
可愛い真っ赤な衣装のミニスカサンタさんになっている、とりわけ彼女と仲のいい聖奈嬢が、周りをきょろきょろしながら見渡していたので、泉も苦笑していた。
「あの子、物凄く寝坊だからね。
日本では毎日お母さんに何回も起こされていたらしいわよ。
演習の時も遅刻していて、女兵士さんが部屋まで迎えに行っていたくらいだもの」
そいつはまた、娘がいなくなったら気が抜けたような生活だろうな。
ここは頑張って帰り道探しを手伝わないといけないかもなあ。
「何やってんの、あの子。
まあ今日は軍事関連でも王宮行事でもない、俺の管轄で内輪でやるパーティだから別にいいんだけどなあ」
すると、バタバタとパンを咥えて走ってきた、少し寝ぐせのついたミニスカサンタさんがやって来た。
生憎な事に、ここでは角を曲がったところで運命の人と出会えるイベントは起きそうにないが。
ここは中庭の真ん中で、ブラインドになっている角はないしな。
「もう遅いよー、姶良ちゃん」
「ごめーん。
昨日、遅くまでマンガ描いてたから」
「なんだ、お前さん、マンガ家志望だったのか?」
「あー、趣味の奴ですう。
男の人には関係ないの!」
「あっそう」
こいつめ、まさかそっち系だったとは。
まさか異世界で薄い本の布教でもするつもりなのか。
まあ好きにすればいいさ。
「じゃあ、みんな揃ったなー」
「ああ、チェックした」
一人や二人遅刻したくらいでは微塵も揺るがない引率者達。
例によって、アメリアさんだけは一緒、と思いきや。
見慣れない男性勇者が一人いた。
勇者なのはわかるのだが、顔と名前がよく思いだせない。
見覚えはあるのだが、優秀な営業の俺の記憶スキルにも忘れ去られるとは、かなりのステルススキル持ちらしい。
「あれ、あんたは」
「あー、どうも」
「どうも」
俺は泉に「誰だっけ」という視線を送ったが、彼女は笑っている。
「ああ、うちの彼氏なんだけど、連れていっていいよね」
そういうことを言っていたのは、なんと斎藤さんだった。
「ありゃあ、斎藤さんも勇者の彼氏を作っていたんですねー」
「うん、夕べ」
速攻だな、おい。
まあいかにも斎藤さんって感じの行動だな。
そういや、こんな人もいたな。
少し大人しい感じの人で、歳は二十代後半に入ったかどうかくらいか。
目立たない感じだが、あのヤンキーどものような尊大な事はなく、抜け目ないというよりかは、気を使って慎重に立ち回っていたタイプのようだ。
他人に気配りの出来るようなタイプだな。
斎藤さんとのカップリングがアンマッチにしかみえないが、まあ逆に考えればこういう組み合わせの方がいいのかもしれん。
あ、思いだした。
迂闊な、俺はこの人の事を何故忘れていたのか。
「あんた、たしか……」
「え? 僕がどうかしましたか?」
「ああいや、なんでもないんだ」
彼はきょとんとした顔で俺を見ていた。
師匠や姐御は気付いているかもしれないな。
いや、師匠は知っているはずだわ。
だって、あの時。
だから余計に師匠は俺の事を。
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