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第四章 大精霊を求めて
4-35 イワシ
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異世界の魔王と人間の騒動もイワシの幼魚様にはまったく関係がなかったらしい。
ザムザアイをもって堤防から臨む海面には、プランクトンを求めてか彼らもまた多くが群れていた。
普段なら、そのような物は観察しないし、釣りなんかの対象外だからね。
通常は近海にて、一艘で引く巻き網漁やパッチ網(引き回し引き網)で漁を行う物だったはずだが、まあここでは割とどうでもいい。
ちなみにパッチとは股引の事だ。
イワシなんて世界中の大概どこにでもいる奴らなので、ここ異世界にもいるかなとは思ってはいたのだが、やっぱりいてくれたか。
種類によっては鳩みたいに年中産卵しているらしいし。
イワシの旬は各地で存在しているらしいが、あまり旬に拘らなくても大きくても脂が乗っていれば美味しいとかいう、万能性というか妙に手軽なところも人気なのだろう。
成魚なら堤防から手軽に釣れるのもまた釣りの初心者にも人気がある。
「こりゃあ、今度みんなを連れてイワシ釣りにでもくるかね」
漁協みたいなものはあるのかね。
このイワシだってこのあたりの人の大事な収入源なんだからな。
「ねえ、早く掬おうよ。
欲しかったんでしょ、チビイワシ」
「ああ、よろしく頼むよ」
本来は船である程度の深さで獲る物なので、こんなところではあまり効率がよくはないのだろうが、チビ達は一生懸命網で掬ってくれた。
その甲斐あって、イワシは幼魚や成魚共にそれなりに集まっていった。
まあ鮮度は別として成魚はいいものばかりではないので、帰りに店でも仕入れていこう。
「ふむ、成魚はもうちょい大きいのが欲しかったんだがな」
ここのイワシは日本近海にも多い通年産卵するカタクチイワシで小ぶりなのだが、俺の狙い目の縮緬雑魚はこいつが主な原料だ。
あれのあまり大きいのは好きじゃないが、これなら俺好みの縮緬雑魚が出来上がるだろう。
それによさそうなサイズの奴が大量に獲れて、俺も思わず顔が綻ぶ。
勇者のメニューに大根おろしに添えたそいつが加わる日が、ついにやってきたのだから。
刺身にしたらいいような大型のマイワシなんかは春先にでも沖へ探しに行くか。
どうせまた、魔物とやりあわねば手に入らんのだろうが。
「こいつの幼魚なら探せばいろんなサイズがいるよ。
ほら、中には大きめサイズのも入っているし。
まあ数が手に入るかどうか知らないけど」
数はこの際、一匹万倍魚で増やせばいい。
とにかく今は魚が、ことにイワシが欲しいのだ。
「はは、ありがとうよ。
数はある程度あればいいさ。
こいつを干したらいい物ができるかな」
「これを干した奴? それならお店にあるよ」
「お、本当かい。それも欲しいねえ」
「おばちゃんところにあるよ。
みんなで作ってから売りに行くの。
大きいのしかないけど、それは冬の保存食なんだよ。
他所に売られる事もあるけど、そう他の土地では魚の干物なんか買ってくれないし」
おや、メザシみたいな奴かな。
さっき獲った小さい奴を煮干し(いりこ)にすれば味噌汁の出汁にいいし、ラーメンスープの出汁にも使えるはずだ。
日本じゃ普段なら見向きもしないような安くて、スーパーなどですぐに半額になっていそうな食い物だが、ここでは黄金にも値する代物なのさ。
勇者連中の中には泣きながら食う奴までいそうだ。
これらがあると勇者の食卓、特に朝御飯を非常に豊かにしてくれるだろう。
ぜひとも鮭もどこかで手に入れたいものだねえ。
なにしろ日本という国は、外国人が空港で降りると「魚臭い」とか感じるくらいだそうだからな。
魚は日本国を象徴するような食材なのだ。
「そいつは絶対に買って帰らないとなあ」
「へえ、勇者様もこんな物を欲しがるんだな」
いや、勇者にとっては宝物のような物なんだけどね。
この港町、油断すると勇者が入り浸っちゃいそうな町だな。
俺は大量の獲物を収納に仕舞い込み、子供達と一緒にお店に戻っていた。
子供達には銀貨一枚と大銅貨十枚をやったので、それはもう大喜びだった。
俺もイワシを手に入れて大喜びなのだけれど。
まさか干物などがあるとは思ってもいなかった。
フォミオに頼んで、イワシでローマのガルムのような魚醤を作ってみてもいいな。
あれはイワシの種類が違っていたはずだが、まあ似たような物はできるだろうよ。
「ただいま、女将さん」
「いや、見てたよ。
勇者様大活躍じゃないか。
そういやイワシは獲れたかね」
「ああ、バッチリさ」
「おばちゃん、銀貨!」
「大銅貨も~」
「おやおや、はずんでもらったもんだ。
そりゃあよかったね。
何しろ、こんな街じゃ碌に子供の仕事なんかないからねえ。
それ勇者様、うちで厳選したイワシだよ」
というか、その歳でもう働かせるのもなんなのだが。
まあうちの村でも薪とか拾ってましたけどね。
あれも立派な売り物さ。
とりあえず、俺は立派なメザシなどの保存食の商品や、カタクチイワシといえども丸々と太って脂の乗った奴を大量にせしめて、とりあえず戻る事にしたのであった。
ザムザアイをもって堤防から臨む海面には、プランクトンを求めてか彼らもまた多くが群れていた。
普段なら、そのような物は観察しないし、釣りなんかの対象外だからね。
通常は近海にて、一艘で引く巻き網漁やパッチ網(引き回し引き網)で漁を行う物だったはずだが、まあここでは割とどうでもいい。
ちなみにパッチとは股引の事だ。
イワシなんて世界中の大概どこにでもいる奴らなので、ここ異世界にもいるかなとは思ってはいたのだが、やっぱりいてくれたか。
種類によっては鳩みたいに年中産卵しているらしいし。
イワシの旬は各地で存在しているらしいが、あまり旬に拘らなくても大きくても脂が乗っていれば美味しいとかいう、万能性というか妙に手軽なところも人気なのだろう。
成魚なら堤防から手軽に釣れるのもまた釣りの初心者にも人気がある。
「こりゃあ、今度みんなを連れてイワシ釣りにでもくるかね」
漁協みたいなものはあるのかね。
このイワシだってこのあたりの人の大事な収入源なんだからな。
「ねえ、早く掬おうよ。
欲しかったんでしょ、チビイワシ」
「ああ、よろしく頼むよ」
本来は船である程度の深さで獲る物なので、こんなところではあまり効率がよくはないのだろうが、チビ達は一生懸命網で掬ってくれた。
その甲斐あって、イワシは幼魚や成魚共にそれなりに集まっていった。
まあ鮮度は別として成魚はいいものばかりではないので、帰りに店でも仕入れていこう。
「ふむ、成魚はもうちょい大きいのが欲しかったんだがな」
ここのイワシは日本近海にも多い通年産卵するカタクチイワシで小ぶりなのだが、俺の狙い目の縮緬雑魚はこいつが主な原料だ。
あれのあまり大きいのは好きじゃないが、これなら俺好みの縮緬雑魚が出来上がるだろう。
それによさそうなサイズの奴が大量に獲れて、俺も思わず顔が綻ぶ。
勇者のメニューに大根おろしに添えたそいつが加わる日が、ついにやってきたのだから。
刺身にしたらいいような大型のマイワシなんかは春先にでも沖へ探しに行くか。
どうせまた、魔物とやりあわねば手に入らんのだろうが。
「こいつの幼魚なら探せばいろんなサイズがいるよ。
ほら、中には大きめサイズのも入っているし。
まあ数が手に入るかどうか知らないけど」
数はこの際、一匹万倍魚で増やせばいい。
とにかく今は魚が、ことにイワシが欲しいのだ。
「はは、ありがとうよ。
数はある程度あればいいさ。
こいつを干したらいい物ができるかな」
「これを干した奴? それならお店にあるよ」
「お、本当かい。それも欲しいねえ」
「おばちゃんところにあるよ。
みんなで作ってから売りに行くの。
大きいのしかないけど、それは冬の保存食なんだよ。
他所に売られる事もあるけど、そう他の土地では魚の干物なんか買ってくれないし」
おや、メザシみたいな奴かな。
さっき獲った小さい奴を煮干し(いりこ)にすれば味噌汁の出汁にいいし、ラーメンスープの出汁にも使えるはずだ。
日本じゃ普段なら見向きもしないような安くて、スーパーなどですぐに半額になっていそうな食い物だが、ここでは黄金にも値する代物なのさ。
勇者連中の中には泣きながら食う奴までいそうだ。
これらがあると勇者の食卓、特に朝御飯を非常に豊かにしてくれるだろう。
ぜひとも鮭もどこかで手に入れたいものだねえ。
なにしろ日本という国は、外国人が空港で降りると「魚臭い」とか感じるくらいだそうだからな。
魚は日本国を象徴するような食材なのだ。
「そいつは絶対に買って帰らないとなあ」
「へえ、勇者様もこんな物を欲しがるんだな」
いや、勇者にとっては宝物のような物なんだけどね。
この港町、油断すると勇者が入り浸っちゃいそうな町だな。
俺は大量の獲物を収納に仕舞い込み、子供達と一緒にお店に戻っていた。
子供達には銀貨一枚と大銅貨十枚をやったので、それはもう大喜びだった。
俺もイワシを手に入れて大喜びなのだけれど。
まさか干物などがあるとは思ってもいなかった。
フォミオに頼んで、イワシでローマのガルムのような魚醤を作ってみてもいいな。
あれはイワシの種類が違っていたはずだが、まあ似たような物はできるだろうよ。
「ただいま、女将さん」
「いや、見てたよ。
勇者様大活躍じゃないか。
そういやイワシは獲れたかね」
「ああ、バッチリさ」
「おばちゃん、銀貨!」
「大銅貨も~」
「おやおや、はずんでもらったもんだ。
そりゃあよかったね。
何しろ、こんな街じゃ碌に子供の仕事なんかないからねえ。
それ勇者様、うちで厳選したイワシだよ」
というか、その歳でもう働かせるのもなんなのだが。
まあうちの村でも薪とか拾ってましたけどね。
あれも立派な売り物さ。
とりあえず、俺は立派なメザシなどの保存食の商品や、カタクチイワシといえども丸々と太って脂の乗った奴を大量にせしめて、とりあえず戻る事にしたのであった。
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