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第四章 大精霊を求めて

4-26 教会を建てよう

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 そしてザムザ1001が、フォミオに執事服を仕立ててもらっている間に、俺達は教会候補地を見に行く事になった。

 一応村の中心にあった方がいいという事で、それなりの場所に作りたいという侯爵家の意向を汲んで、ゲイルが案内してくれる事になった。

「村にそんな場所があったかな」
 この村は山の手にあるため、概ね平坦な土地は耕作地に使われてしまっている。

 そのあたりがベンリ村とは違うところだ。

 それでも比較的各家は広めに作られているのだ。

 でも広めの庭も副業的な作物を植えるスペースになってしまっているのが現状だ。

 まあそういう事もあって、ここは辺境の割には森の恵みと合わせればそう暮らし向き自体はそう悪くない。

 暮らしが悪くないのには他にも理由があるのだが、さすがにこの前の嵐のように畑が丸ごとやられてしまったら洒落にならない。

 まあ、その割に焼き締めパンなんか食っているんだけど。

 まあ僻地なんだし、アルフェイムの地なんだからしょうがない。
 こんなところで出来立てパン屋さんも営業してくれないからな。

 一番いいのは、ここには『年貢がない』のだ。
 一応収穫の数字は出さないといけないのだが。

 その確認もカイザの仕事らしいのだが、特にビトーなどから監査官が来る訳でもなし、本来の任務が重視されるのでそれも形式だけのものだった。

 王国も、重要な直轄地であるアルフェイムの地が『ちゃんと食べていけているか』を確認したいだけなのだから。

 万一、監視官不在の期間が出来れば村自体が監視の報告をしなければならないのだ。カイザが来る前も一時期はゲイルが担当していた。

 だから魔物穴なんかにも詳しかったのだ。それに元々は彼も『辺境の名門アルフェイム家』の一員なのだからな。

 ゲイルもカイザも堅物なので不正など起こるはずもない。
 一円でも合わないと目の色を変えて計算し直すタイプだ。

 というか年貢を取られないので、見栄を張る以外に数字を改ざんする必要すらない。

 そんな事をしたって村長にだって役得は何もない。

 収穫物の現物は個人の物であって、一切村へ動かないからな。
 互助のための共益金や催事などの村費などの拠出はあるのだが。
 
 ここは元々王都直轄地であり、村の主な任務が年貢を納めるための作物を作る事ではなく監視官が暮らすためのバックアップであるため、『村が存在してくれていればいい』という非常にレアな意味で在る村なのだ。

 何もないところに一人だけで暮らせと言われたら、さすがにカイザだって困ってしまうだろう。
 ハズレ勇者じゃあないんだから。

 いかにこの国といえども、このような役割や制度の村は他に一つも存在すまい。

 そうでもしないと過疎って人がいなくなってしまって村が消滅してしまうので、そうしているらしい。

 その代わり特に支援はないので発展もないという現状で今に至る。

 村の人も何かやりたいとか、賑やかな場所で暮らしたいとかいう人は、靴屋のアルフのように街や他の大きな村を目指して出ていってしまうので。

 それではカイザはどう収入を得ているのか。
 それは、いわゆる法衣貴族として王様から給料をもらっているのだ。

 つまり今まで通りという事だ。

 一つ違うのは、子爵になったので貰えるお金は相当増えたという事だ。

 その他に事業をやれば収入は増えるが、その分については王国へ税金を納める必要がある。

 あくまで年貢無しは村の基本的な耕作などについてだから、彼個人の余分な事業収入は免税ではない。

 せっかく割と自由な領地なんで何かやりたいなあ。

 そしてゲイルが案内してくれた土地とは!

「あっはっは、これただの耕作地じゃないか」

 要するにただの畑である。
 この場所は畑に囲まれた家々のど真ん中だ。

 ある意味で村の中心点だなのだ。

 村の入り口付近にある領主館は街道には近いが、村内では隅っこにあたる。

 元々邪魔にならない場所に、カイザが気ままに暮らせる耕作地には向かないが広めの場所という事だったので。

 幼女様の趣味で庭に小さな畑くらいはあるのだが。
 そこにはもっぱら、簡単なおやつを作るための作物が植えられている。

「え、畑……」
「村の耕作地を潰してしまって大丈夫なのかね」

 侯爵家の反応も微妙なものだった。

「ああ、ここは休耕地です。

 畑が飛び地になっている場所もありますが、基本的に畑に沿って家がありますんでな。

 各家は離れておりますので、できれば境界を作るならば中心にあった方がいいかなと思いましてな」

「はあ、でも若い人が畑を継がないといけないのでは」

「ここは何もない最果ての土地でありますし、若者も家を継げなければ出ていく者もおりますし、こうやって空いた土地をいただいて受け継ぐ者もいます。

 ここは持ち主が年を取って畑仕事は辛くなっていましてな。
 小作人や借りてくれる人を捜しておったところでして。

 教会になって土地代をいただけるのなら本人も喜ぶでしょう。
 一応地主の了解はもらってあります」

「そ、そうですか。
 まあそう考えれば、ここでも」

「まあ、周りを見渡しても耕作地しかないですしね」

「そりゃあまあ街じゃないんですからねえ。
 こんなもんですよ。

 下は畑ですので多少地盤が心配だけど、カイザの家同様にミールの魔核を埋めて守護させておけば絶対に崩れません。

 上の建物が崩れたって土地だけはビクともしないでしょう」

「そ、そうか。
 じゃあ建物はどうしようかね」

「二階建てくらいでどうでしょう。
 あまり高い建物を建てても村の景観に合いませんし、後の補修も大変だ。

 村でも人を出せば直せるように木材中心で、広めに作るという事でいかがでしょう。

 村のコミュニティの中心になるような。
 そういや、この村って公民館みたいな場所もないんだな」

「公民館ってなんです?」

「ああ、なんていうか、村の人が集まってちょっとした催しをやったり相談事をしたりする家の事ですね。

 子供を集めて色々企画をやったり学習したりもします。
 そういう物は別で『子供の家』とか作ったりもしますけど」

「そうですか、じゃあそういう機能もつけて広めにお願いしておきますかな」

「ええ、今カイザの家で子供達に勉強をさせたり、街で社会見学や隣の村で職業実習をしたりしてますが、そういう教育的な事も神父様ならできるんじゃないですかね。

 村の方でいろいろお手伝いの人とか出せば。
 多分、神父さんが来てくれても一人くらいじゃないのですか」

「まあ多分、そうだろうな。
 一人寄越させるのが一苦労だ」

「あっはっは、何せここは史実にも残るほどの大辺境だからなあ」

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