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第四章 大精霊を求めて

4-8 和の心

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 そこからも皆で和食談義が止まらない。

「お醤油~。
 これで最低限の卵かけ御飯が食べられる!」

「生食用の卵の殺菌なら、あたしの魔法に任せて~。
 多分、異世界の卵は生食でそのまま食べちゃ駄目だと思うよ」

「あと、ふりかけも欲しいんだよね。
 あの化学調味料で味付けした普通の奴が」

「時雨佃煮」
「海苔卵」

「鰹」
「牛そぼろ」

「梅紫蘇」
「あ、梅干しもいいよねー」

 それもあったか。
 これもどこかで探させるか。

 まあ梅干しはないだろうが、梅や紫蘇はどこかにあるのではないだろうか。

 ふふ、出番だぜショウ。
 あと、そういえば。

「漬物!」
「それもあったね」

「白菜やカブの塩で漬けた漬物ならあるよ」
「あ、マジで。
 俺も欲しいな~」

「じゃあ、これあたしの作った奴あげる」

 聖奈ちゃんがガラス瓶に入った手製の漬物を何本かくれた。

 女子高生ども、意外とみんな漬物好きだなあ。
 久しぶりの漬物につい我慢ができなくて万倍化する前に一つ摘まんだら、ん~、やっぱり美味しい。

「米ぬかが欲しいよね。
 あれがあると沢庵が作れちゃう」

「稲が欲しいのループに戻ったね」
「その他の糠漬けも作れちゃうし」

「茄子はあるからさ」
「いいな、とりあえず茄子の味噌漬けにしてみるか」

 とりあえず茄子の鴫焼はゲットだー!

 熱々の茄子に醤油を垂らして頬張るあの油のよく滲みた甘み。
 醤油が間に合った奇跡に思わずガッツポーズだ。

 ああ、美味いビールが欲しい。

「地球原産じゃないけどカレースパイスが欲しいわ~」

「あ、麦野さん。山菜といいキノコもあるよ」
「うーん、いいねえ!」

 皆、案外と日本食っぽい物に飢えて自家製の食品作りに邁進していたんだなあ。

 個人的にはメザシやシシャモも捨てがたい。
 縮緬雑魚なんかも欲しいぜ。

 大根オロシの上に置いてから醤油をかけてパクっと。
 うわあ、想像しただけでもう辛抱堪らんのう。

「なんだか和食食品交換会になっちゃったね」

「うむ、子供の頃を思い出す。
 高山ラーメン作りに挑戦してみるか」

「あたしは味噌ラーメンにチャレンジしてみようかな。
 まずは味噌ラーメン用の太い麺を作らなくっちゃ。
 手伝ってよ、国護さん」

 師匠と姐御がラーメン道に燃えているが、味噌はともかく醤油スープの方はどうだろうな。

 あれは麺汁みたいに本返しという物がいるのではなかったか。

 あれは確か一週間は寝かせる時間がいるから大変なんだよな。
 さすがにラーメンスープには詳しくない。

 俺が本格醤油ラーメンを賞味させていただくまでに結構時間はかかりそうだ。
 とりあえず、師匠には大量の醤油を渡して置いた。

「そういや、麦野さん。
 糯米は無いんですか?

 もうすぐ正月だし、それと赤飯も食べてみたいのですが。
 みたらし団子もいいなあ」

「斎藤さん、無茶を言わんでください。
 いや俺も正月に餅は食べたいんだけどさ。

 とりあえず、アルファ米ベースの五平餅で我慢してください。
 とりあえず、味噌が出来ましたからね。
 これ、試食品です」

 うちの五平餅はオーソドックスな形の、木の平たい棒に小判を引き延ばしたようなタイプだ。

 米を叩いて形を整えて味噌だれで焼く物だが、類似の食べ物は案外と少ない気がする。

 秋田のキリタンポは煮る食べ物で、味や形や調理法などは似ても似つかない食い物のだが、原料や製法を考えると意外にあれが近い系譜の食品なのかもしれない。

 こいつは確か岐阜の恵那方面あたりが発祥の地だと思う。

 あっちには五平餅が作られるに至った由縁の神様がどうとかいう特別な意味合いを持つ変わった形の物があるそうだが、後世に作られるようになった一般的な形の奴が作りやすくて食べやすいのだ。

 これ案外と口の周りが味噌だらけになるので結構食べにくいんだよね。

 そいつにフォミオに作らせた五平餅専用のたれっぽい感じの味噌が添付されており、俺の自家製素材でビニール包装されている。

 愛知県の観光地の売店などではよく見かける、お持ち帰り用の御土産タイプの五平餅なのだ。

 この五平餅が愛知県周辺の山の手でしか食べられていないマイナー食品だとは大人になるまで知らなかったよ。

 大学も地元だったから他の連中も当たり前のように食べていたし、学祭でも普通に屋台を出して売られていたしな。

 こいつはアルファ米がベースなので、やや微妙な代物なのだが、まあ体裁だけは整っている。

 味は味噌頼みかな。
 味噌に胡桃なんかが混ぜられている物もあって、俺はあれが好みで今回はそいつだ。

 今までの人生の中で食った中ではそいつが一番美味いのだが、なかなか売っていない特製の味の物なのだ。

「おお、五平餅~」
「懐かしい、さっそく焼いて食べようよ」

 まあここの勇者って、ほぼ全員が名古屋人だし五平餅は大人気だった。

 俺達全員まとめて名古屋で一網打尽に召喚されたのだから当り前なのだが。

 中には他所から転勤してきた人もいるんだろうが、数年暮らしていれば地元の食い物には普通に馴染んでしまうしね。

 名古屋方面で山の手の観光地でこれが置いていないなんて絶対に許されないというくらいの名物だ。

 なんたって、たっぷりと味噌を使った食い物だしな。

「あと小豆がどこかにないかしらね。
 たい焼き・大判焼きにぜんざいとかさ」

「俺、饅頭も食いたいんですよ、粒餡の奴。
 温泉饅頭も食いたいし」

「肉まんなら作ったわよ。
 はいどうぞ」

 そう言って差し出してくれたのは、トレーに乗った肉まんだ。
 しかも、吹かし立ての熱々な状態で。

 こういう時に収納って非常に便利だ。

「おー、さすがは姐御。
 こりゃあいいや、これから冬が来るしなあ。
 村でも流行らせようっと」

「ピザまんは挑戦中よ。
 ホットドッグを作った人がケチャップも作ってくれたから助かるわ。

 あとカレーまんと餡まんが食べたいのよねえ」

「おでんの季節到来」
 これは絶対に主張しておかないとなあ。

 インスタントのおでんの素はフォミオに作らせようっと。
 師匠や姐御に泉なんかは、ちゃんと自分で出汁をとって作るんだろうな。

「あれは出汁をどうするかで女の子の間でも揉めているわ、ここで醤油も来たから余計に迷うな。

 とりあえず味噌田楽でもいっとく?

 豆腐はあるけどコンニャクが無いわねえ。

 醤油が来たから、豆腐は焼き豆腐にしてスキヤキなんかいけるかしら。
 ああ、白滝が無いじゃないの」

「名古屋人なら、どて煮を忘れちゃいけませんや!」
「名古屋味噌煮込みうどん!」

「唐揚げはもう各種アレンジしたよね」
「ねえ、姐御。
 名古屋名物の手羽先は?」

 こいつをお強請りしない手はない。
 市場で見かけたので、胡麻があるのは知っているしな。

「醤油が来た事だし、ここから頑張るわね。
 テリヤキチキンなんかも悪くなし」

 これらの食べ物も新領主を祝う祭りでデビューさせるとしようか。

 他の人にも引き続き料理の精進をお願いして、俺は山車の作成にかかりたいのでアルフ村へ戻る事にした。
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