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第三章 時を埋める季節
3-70 いいひと
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孫達が自分達の膝の上で、何も無いように見える空間に手を伸ばして精霊達と戯れているらしき光景を見て、祖父母も目を瞠った。
「精霊様のご加護があると、邪まな物を遠ざけるとか幸福を呼び寄せると言われておりますのよ。
この子達がそうであってよかったわ。
辺境の地でどうしているのか、ずっと気になっていましたのよ」
そういや、この子達と最初に会った時なんか見事なまでのグッドタイミングだったよなあ。
あ、俺につけられた精霊の加護が三万飛んで八百六十三個増えている。
もう合計で十万個を越えているなあ。
「そうですか、じゃあしっかりと祖父母様に甘えさせてやってください。
母親を早くに亡くしたんで、女の子が家に来る度に『お母さんになって』と強請るのです。
ちょっと傍から見ても不憫でね。
だから王都へ連れてきて、あなた方に是非会わせたかった」
それを聞いて、母親が驚いて息子を詰問した。
「奥さんが亡くなったのは聞いていますが、お前、子供達を今どうしているの?」
「あ、いや。今子供達の世話をしてくれている者はいるし、亡き妻の姉夫婦などもよくしてくれているんだ」
「まあ、そういう女性がいるの?」
俺は盛大に火炎放射のような勢いで紅茶を噴いてしまった。
せめて下を向くだけの良識があっただけ事は褒めてやりたいね。
俺は見事にそれをとっさに収納に収めるファインプレーを披露した。
まあ確かにアレを『ママ』と表現したりはするのだが。
「御婆ちゃん、フォミオママは最高なんだよ?」
「あたし、フォミオの事が大好きなの」
「フォミオの御飯は美味しくて、とっても優しいの」
「子守歌や絵本読みも上手なの」
君達、素晴らしいタイミングでフォローをありがとう。
そして、侯爵家の御隠居ご夫妻はこのような事を申し上げられました。
「その方はどこにいるのだね」
「あなたの『いいひと』だというのなら、是非ともお会いしなければ」
あふう。
つい、俺は思いっきり仰け反ってしまった。
ヤベエ、こいつはどうにもなあ。
俺はピクピクしながら一人掛けソファーに首を仰け反らして、宙に伸ばした両手をワキワキさせていたのだが、少し体を起こしてカイザの様子を見たら顔を下げて、でこを押さえていた。
そんな俺やカイザの様子を夫妻もご当主である弟君も不審そうというか、不思議な顔で見つめていた。
「いやいや、今は王都の宿で他の子供達の世話をさせていますが」
「まあ、もう子供がいるのですか、それは聞いていませんが」
「あー、そうではなくてですね」
「だって私達の孫なのでしょう?」
「是非会っておかなくては」
だが、彼らは興奮しまくっていて俺の説明に取り合う気もないようだったので、俺はカイザを見た。
『どうするつもりだ』という目線で。
「ああ、なんていうかな。
カズホ、これはもう直接あいつを見せた方が早いんじゃないか」
「正気か、お前。
いや、いいなら連れて来ちゃうけどなあ。
ああ、連れてくるのなら他の子やニールも一緒でないと。
明日のランチをこっちでというのはどうだ」
「ああ、俺は構わない」
「ええ、構いませんわ。是非!
ねえ、あなた」
「そうとも、明日必ず連れてきなさい」
「そうか、じゃあカズホ。
そういう事に決まったので」
俺の頭の上ではエレが笑い転げていたし、だだっ広いリビング中で数万の精霊達が笑いさざめいていた。
それを見て、キラキラとした目で子供達が楽し気にしていたし、悪いけど俺もどうにもニヤニヤ笑いが止められなかった。
そして、後ろから可愛らしい声がかかった。
「ねえ、父さま。その子達に僕らの事はいつ紹介してくれるの」
年の頃はマーシャやアリシャと同じくらいの男の子が二人、ソファーの蔭から出てきて父親の腕の服地を引っ張った。
あは、顔形から髪や目の色までカイザによく似てらあ。
あいつも小さな頃はこんな感じだったのかなあ。
そういや弟さんもよく似ているのだった。
「ああ、こちらはうちの子です。二人とも、ご挨拶しなさい」
「こんばんは、ルイザです。今六歳」
「こんばんは、サイザだよ。今四歳」
「マーシャだよ、六歳だから一緒だね」
「アリシャ、四つだよ」
「ねえ、お父様~」
「ああ、もうすぐ晩御飯だから少しだけだよ」
「やったあ。
行こう、マーシャ、アリシャ、屋敷の探検に。
案内してあげる」
「よおし、行こう」
「行くです~」
おチビ達は揃って走っていってしまった。
残されたのは両親と弟。
俺はもう要らなくなっただろうザムザ1を回収し、執事さんにお願いした。
とりあえず俺も要らないだろうから。
「よろしければ、俺もお屋敷を拝見してみたいのですが」
「わかりました。アネッタ、アネッタはいますか」
「はーい、ここに」
金髪メイドのアネッタが紫色のアメジストのような瞳を煌かせて駆け付けてくれた。
「勇者様が当家の屋敷をご覧になりたいそうだ。
ご案内しておくれ」
「かしこまりました。
ではどうぞ、こちらへ」
俺は残された彼らに笑いかけ、軽く手を上げた。
「それでは、俺は席をはずしますので、後はご家族でどうぞ」
残された家族は八年ぶりにリビングに蘇った家族の肖像に、なんとなく照れたものか、しばしぎこちなかったようだが、俺が廊下に出る頃にはカイザの子供の頃の話で盛り上がっていた。
「精霊様のご加護があると、邪まな物を遠ざけるとか幸福を呼び寄せると言われておりますのよ。
この子達がそうであってよかったわ。
辺境の地でどうしているのか、ずっと気になっていましたのよ」
そういや、この子達と最初に会った時なんか見事なまでのグッドタイミングだったよなあ。
あ、俺につけられた精霊の加護が三万飛んで八百六十三個増えている。
もう合計で十万個を越えているなあ。
「そうですか、じゃあしっかりと祖父母様に甘えさせてやってください。
母親を早くに亡くしたんで、女の子が家に来る度に『お母さんになって』と強請るのです。
ちょっと傍から見ても不憫でね。
だから王都へ連れてきて、あなた方に是非会わせたかった」
それを聞いて、母親が驚いて息子を詰問した。
「奥さんが亡くなったのは聞いていますが、お前、子供達を今どうしているの?」
「あ、いや。今子供達の世話をしてくれている者はいるし、亡き妻の姉夫婦などもよくしてくれているんだ」
「まあ、そういう女性がいるの?」
俺は盛大に火炎放射のような勢いで紅茶を噴いてしまった。
せめて下を向くだけの良識があっただけ事は褒めてやりたいね。
俺は見事にそれをとっさに収納に収めるファインプレーを披露した。
まあ確かにアレを『ママ』と表現したりはするのだが。
「御婆ちゃん、フォミオママは最高なんだよ?」
「あたし、フォミオの事が大好きなの」
「フォミオの御飯は美味しくて、とっても優しいの」
「子守歌や絵本読みも上手なの」
君達、素晴らしいタイミングでフォローをありがとう。
そして、侯爵家の御隠居ご夫妻はこのような事を申し上げられました。
「その方はどこにいるのだね」
「あなたの『いいひと』だというのなら、是非ともお会いしなければ」
あふう。
つい、俺は思いっきり仰け反ってしまった。
ヤベエ、こいつはどうにもなあ。
俺はピクピクしながら一人掛けソファーに首を仰け反らして、宙に伸ばした両手をワキワキさせていたのだが、少し体を起こしてカイザの様子を見たら顔を下げて、でこを押さえていた。
そんな俺やカイザの様子を夫妻もご当主である弟君も不審そうというか、不思議な顔で見つめていた。
「いやいや、今は王都の宿で他の子供達の世話をさせていますが」
「まあ、もう子供がいるのですか、それは聞いていませんが」
「あー、そうではなくてですね」
「だって私達の孫なのでしょう?」
「是非会っておかなくては」
だが、彼らは興奮しまくっていて俺の説明に取り合う気もないようだったので、俺はカイザを見た。
『どうするつもりだ』という目線で。
「ああ、なんていうかな。
カズホ、これはもう直接あいつを見せた方が早いんじゃないか」
「正気か、お前。
いや、いいなら連れて来ちゃうけどなあ。
ああ、連れてくるのなら他の子やニールも一緒でないと。
明日のランチをこっちでというのはどうだ」
「ああ、俺は構わない」
「ええ、構いませんわ。是非!
ねえ、あなた」
「そうとも、明日必ず連れてきなさい」
「そうか、じゃあカズホ。
そういう事に決まったので」
俺の頭の上ではエレが笑い転げていたし、だだっ広いリビング中で数万の精霊達が笑いさざめいていた。
それを見て、キラキラとした目で子供達が楽し気にしていたし、悪いけど俺もどうにもニヤニヤ笑いが止められなかった。
そして、後ろから可愛らしい声がかかった。
「ねえ、父さま。その子達に僕らの事はいつ紹介してくれるの」
年の頃はマーシャやアリシャと同じくらいの男の子が二人、ソファーの蔭から出てきて父親の腕の服地を引っ張った。
あは、顔形から髪や目の色までカイザによく似てらあ。
あいつも小さな頃はこんな感じだったのかなあ。
そういや弟さんもよく似ているのだった。
「ああ、こちらはうちの子です。二人とも、ご挨拶しなさい」
「こんばんは、ルイザです。今六歳」
「こんばんは、サイザだよ。今四歳」
「マーシャだよ、六歳だから一緒だね」
「アリシャ、四つだよ」
「ねえ、お父様~」
「ああ、もうすぐ晩御飯だから少しだけだよ」
「やったあ。
行こう、マーシャ、アリシャ、屋敷の探検に。
案内してあげる」
「よおし、行こう」
「行くです~」
おチビ達は揃って走っていってしまった。
残されたのは両親と弟。
俺はもう要らなくなっただろうザムザ1を回収し、執事さんにお願いした。
とりあえず俺も要らないだろうから。
「よろしければ、俺もお屋敷を拝見してみたいのですが」
「わかりました。アネッタ、アネッタはいますか」
「はーい、ここに」
金髪メイドのアネッタが紫色のアメジストのような瞳を煌かせて駆け付けてくれた。
「勇者様が当家の屋敷をご覧になりたいそうだ。
ご案内しておくれ」
「かしこまりました。
ではどうぞ、こちらへ」
俺は残された彼らに笑いかけ、軽く手を上げた。
「それでは、俺は席をはずしますので、後はご家族でどうぞ」
残された家族は八年ぶりにリビングに蘇った家族の肖像に、なんとなく照れたものか、しばしぎこちなかったようだが、俺が廊下に出る頃にはカイザの子供の頃の話で盛り上がっていた。
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