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第三章 時を埋める季節

3-62 驚異の魔道具達

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 まずは女の子用のお人形さん巡りから。

「じゃあ、王都の有名で品揃えのいいお店に行くわよ。

 今日は男の子女の子両方が大勢いるから、そっちの方がいいでしょう。
 あたしもそこはよく連れていってもらったところだし」

 定番の大きなお嬢さん向けから赤ちゃん用っぽい奴まで一通り見させてもらった。

 そして、男の子用には怪獣(魔物)っぽいヌイグルミ系の需要があった。

 日本のような特撮怪獣やアニメのモンスターなどはなく、本物の魔物しかいない世界なのだから子供にはどうなのかと思うのだが、男の子には好評だから売っているんだろうな。

 しかも、彼らから見てかなり大きめのサイズなので、きっと村に帰ったら寝床のお供からプロレスの相手まで、いろいろ務める相方になるのだろう。

 次は幼女様方が待望のお洋服だ。

「ここは大手商会から全国の、あるいは外国の品まで揃っているし、また自店にてオーダーメイドやオリジナルの既製品まで売っているのも売りよ」

 うーん、やはり王都の品揃えは一味違った。
 今まで輸入品なんて見た事もないな。

 ビトーにはあったのかもしれないが、特に意識していないので気が付かなかった。

 やはり外国製品があると品の種類も幅が出る。

 前に自分でも王都の店は回ってみたのだが、つい最近成人した、しかも女の子の場合は子供向けを見る観点がやはり違っていた。

 特に女の子向けの充実した内容は目を瞠る。

 ついでに仕立てているところも見せてくれて、裁縫に興味のある子は目が釘付けだった。

 男の子の方は設備の方が気になるようだったが。
 そこには魔道具なども使用されていて非常に興味深い。

「その魔道具というのはどこで手に入れたのですか?」

「ああ、これらは王都の工房にて一点物で作らせているものなので、値段も非常に高価で納期も長いのですが、勇者様もご興味があるのですか?

 よろしければ、工房をご紹介させていただきますが。
 ただ、相手がドワーフの職人なので、これがなかなか」

 そう言って店の主人が苦笑いをしていたところを見ると、『やはりドワーフ』な感じなのらしい。

 うーむ、ドワーフか、相手にとって不足はないな。自分の中の営業魂が密やかに燃え上がってくるのを感じた俺は、素晴らしい営業スマイルで応対した。

「それは是非とも、お願いいたします!」
「なんで、そんな物を欲しがるの?」

 シャーリーは不思議そうな顔で訊いてきたが、俺は胸を張って答えた。

「それは、うちには凄い従者がいるので、元の世界にいた頃の服を作らせたいのだ。

 今は針と糸だけで仕事をしているからな。
 あれじゃ火縄銃で戦争しているようなもので勝負にならん。

 まさか、こんな道具があったとはなあ。まるで一分間で百発撃てるバルカン砲のような威力を発揮してくれるのに違いないぜ。さすがは王都だぜ」

「へえ、面白そう。今度遊びに行ってもいい?」

「おう、いいぞ。あそこは辺鄙過ぎて王都の勇者仲間だって遊びには来ないがな、あっはっは」

「うわあ、辺境のアルフェイムかあ。
 なんたって伝説の地だものね」

「何しろ村の向こうは、荒城と召喚神殿が建っているだけだからな。

 そういや、そろそろ草刈りにいかないと、城までの道がどこかわからなくなりそうだ。

 元々、王国の兵士達も元が道なのか、少し平坦な荒れ地だったのかもわからないままに突貫工事で道を開いていたみたいだから、昔とは少しずつルートがずれているかもしれない」

「伝説の世界って、そういう風に考えると気が遠くなるわね」

「おう、そこにかけられる兵士達の労力とかを考えると、なおさらな」

 子供達はなんとか作業場のお邪魔にならない程度にはいい子にしていたので、一緒に回って道具の説明を聞きながら、質問して詳しい機能や工夫したところなどの説明を受けた。

「こちらの台は、パターンメイカーと呼ばれる機械です。

 型紙の試作が簡単にできますので非常に大きな工数低減になりますし材料も無駄にはなりません。

 入力した寸法などから型紙を作り、それから作られる縫い合わせた状態の完成品の姿を前もって、これも魔核に組み込まれた術式により三次元投影でき、それをくるくると回していろいろな角度から見る事ができます。

 魔石を板に加工したものに内容を記憶させておくことも可能です。

 このパレットと呼ばれる石板に線を引き形にして指定していくと、それを機械に組み込まれた魔核が記憶します。

 色を指定したい時は塗料を塗りつけると自動解析して色付け指定まで可能で色間違いがなくなります。

 お陰様で製品開発が非常によく進められます。また現物のない既製品の型紙から現物の姿を映して、作る前から出来合いがどのようなものなのかも知る事ができます。

 注文生産で現物がない製品でも、お客様に型紙から事前に完成後の姿を見て選んでいただく事も可能ですし、気に入らなければ手軽にデザインを作り直す事もできます。

 そしてこちらの機械にデータを移すと、そのパターンから自動裁断で型紙ないしは、直接服のパーツを作る事も可能です。

 もちろん、そのデータは取っておいて、後で型紙を起こす事も可能です」

 あっはっはっは。パターンメイカーだと、三次元投影だと!

 勇者どもは結構暇なんだとみえる。
 面白い機械を作ったもんだぜ。

 まるでCADとか一部は絵描きソフトのようなものまで組み込まれているのではないか。

 ホログラムまでも魔道具を使えば可能だったか。

 それにくるくると空中で手を動かして服の映像を三百六十度回す様は、まるでインターネットで見る自動車販売店サイトの紹介ページなんかの如しだ。

 ある意味でそれを越えているしな。

 液晶スクリーンやその他電子機器を作るよりは、ここではこの方が簡単だったろう。

 ドワーフと魔道士と錬金術師あたりで勇者のアイデアを製品にしたものなのか。

 俺が爆笑していたので店長が不思議そうにしていたが、次の機械も見せてくれた。

「これはトレーサーという機械で、逆に洋服から型紙を作ってくれる機械です。

 有名デザイナーが作った高級な一点物を、なんと解体しないで型紙を起こす事もできる秀逸な機械なのです。

 お陰様で貴重なクラッシク・ドレスを壊さずに新しく再現できて、多くのお客様から喜んでいただいております。

 バラしてしまうと、思い出までバラバラになってしまうとかおっしゃる老婦人のお客様などもいらしてですね。

 さらにこれが画期的な機械でして、ミシンという機械です」

 ああ、こいつは欲しい。正しくはソーイングマシンだが、よほどミシンに愛着がある奴が開発したとみえる。

 ミシンそのままの名前で流通させているのか。

 そして機能も半端ではなく、業務用の本格的な物で、なんとさっきの機械の応用技術なのか、入力したパターンを指定位置に好きなサイズで打ち込める刺繍機能まで持っていやがる。

「こいつはすげえ、この世界に超高性能ミシンを再現してやがる。
 いや、こいつだけは絶対に欲しいわ。
 これを作らせたのは、今の勇者の誰だ」

「はは、さすがは勇者様、ご存じでございましたか。
 今王都におられるハカゼ・ツボネデ様でございます」

「姐御、マジで多才だな!」

 さすがは年の功とか言ったら、きっとぶっとばされるんだろうが。

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