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第三章 時を埋める季節

3-8 準備は怠りなく

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 とりあえずは冒険者ギルドも望外に見学できて楽しめた上に、自国のお姫様の楽しい痴態もたっぷりと拝見できて大満足のおチビさん達を、宿で聞いておいたランチの上手いお店へ連れていってからマルーク号に乗って村へ帰還し、俺はダンジョン行きの支度をしていた。

  探索にどれくらい時間がかかるかわからないので、その間に必要な食材や料理におやつなんかをフォミオとカイザに預けておいた。

 そして自分も、今回王都で買い集めた充分な量のありとあらゆる物資を王都で買った馬車に詰めてから万倍化した。

 ダンジョンの中では何があるのかよくわからないので、なるべく現地では万倍化のスキルは温存しておきたいからな。

 広々とした荒野が、一万台の馬無しで荷物満載の大型馬車で埋め尽くされ、それを収納してから泉に通信の宝珠で連絡した。

「よお、実は明日辺りから王様からの依頼でダンジョン攻略に行く事になったんだけど、王国のお姫様を一緒に連れて行く事になってな。もちろん、むくつけきあの連中と一緒にさ。なんか知らんがダンジョンの深層で探し物なんだってよ」

「ああ、もしかして、あの面倒くさそうなビジョーとかいうお姫様のお守りなのかあ。うわあ、そいつはご愁傷様」

「ちょっと、お前な」
 なんかあおのお姫さんは、勇者女子からも評判が悪そうだ。まあちょっとあの態度だとどうにもな。

「いや、だってさあ。あの子も悪い子じゃないと思うんだけど、やっぱり性格はアレな子なんだもん。付き合ったらとっても面倒くさそう」

「あ、そうそう。あの子、陽彩の小僧にフラレちゃったんだって?」
 当分、このネタは勇者間では何かにつけ取り沙汰される事になるだろう。

「あー、あれね。あれは傑作だったなあ、あの陽彩君は本当にチキンね~。後で女の子全員集まって爆笑したわ。でもあのお姫様は気真面目なタイプよ、面白いからってあんまり弄っちゃ駄目だからね」

「おっともう遅い。既に手遅れだぜ」

 あのお姫様に必殺っぽいスキルまで使わせちゃったもんね。半分精神が決壊して本音が駄々洩れだったしなあ。

「もう、カズホったら。そういうお遊びはほどほどにしておくのよ。ところで、いつ頃帰れそう?」

「さあ。いやまったく当てがない仕事なんで、本当に片付くのかどうかも皆目わからん。おそらくは、あの立会人のお姫様が諦めるまでなんだと思うが、多分ここで功績を立てて親兄弟を見返してやろうとか思っていそうだから、果たして途中で諦めてくれるのかなあ」

 絶対に諦めが悪そうなんだよなあ。まあ会社ギルドとして依頼を受けたのだし、高額依頼、しかも王国からの指名依頼なのだから少しは頑張らないと。

 俺なんかこれが初仕事なんだぜ、それにどの道俺も大精霊には会わないといけないのだから。

「あっはっはっは、あの子なら大いにありそうな事態ね~」

「本当なら、あれの面倒をみてくれる女手が欲しかったんだけど、お前は偵察任務があるんで長期間は開けられないだろうから、まず無理だしなあ。勇者を失いたくない王国は勇者を出すのを躊躇っているという話だが」

「まあ、そう無理をしなくてもいいわよ。王国も駄目元で殆ど無い物強請りをしているだけみたいだからさ」

「そっかあ、じゃあ早めにキリつけて帰るわ。冬が来る前にチビ達を王都へ連れていかないと煩いしな。今日までビトーへ行ってきたばかりだから、まだ機嫌は持ちそうだが」

 いやあビトー行きの後で本当によかったこと。でないと、あいつらがぐずりまくりだぜ。

「あんた、本当に子煩悩ね。まあ自分の付き合っている彼氏が子煩悩な性格なら、その方が彼女の立場としては嬉しいんだけどな」

「そう言ってくれて嬉しいぜ。ベビーシッターもアメリカなら十八歳くらいまでは守備範囲さ。じゃあ、ダンジョンの御土産を楽しみにしておいてくれよ」

「あっはっは。期待してないで待ってる。そんなところに御土産屋さんもなさそうだしね」

「いっそ、俺がダンジョンで店でも開くかな。エリクサー屋なんかどうだ」
「さすがに、それはマズくない?」

「ま、気楽に楽しんでくるわ。前金は貰えるんで、お姫様が危ないようならゲンダスの背中にでも括り付けて帰ってくるわ」

「もう、手加減してあげなさいよ。でもそれくらいしないと帰れないかもね。そろそろ王都では名物の焼き栗の屋台が出る頃だってさ。帰ったら一緒に食べようよ」

「はいはーい、じゃあまたなあ。お前も俺がいない間に、もし王都に魔獣なんかが出たら、他の奴に構わずに空を飛んで逃げておけよ」

 この宝珠、ダンジョンの中からでも使えるのかな。困った時にギルマスからアドバイズとか貰えるとありがたいのだが。
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