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第三章 時を埋める季節
3-5 とんでもない同行者
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だが、メンバー全員が真面目な顔で俺を見ていた。おそらく今ここにいる精鋭が参加メンバーだろう。こいつら全員、通常は最上級のSランク冒険者なのだ。そしてギルマスは話を続けてくれる。
「王都の冒険者ギルドではなく、ここへ依頼が来たことからもわかるように、国王陛下はカズホに仕事をやらせたい、というか王都を襲撃した魔獣をたった一人で粉砕したほどの勇者の力を必要としているミッションなのだろう。
であるにも関わらず、他の勇者は一人も派遣してきていない。まるで魔王軍との戦い以外で勇者を失うリスクを避けたいとでもいうかの如くにね」
あー、わかる。この前一気に半分以上勇者を持っていかれていたもんな。あの時俺が行かずに、またエリクサーも大量にあるのでなかったら、空を飛べる泉以外の勇者が全滅してたんじゃないか?
まあ泉に呼ばれたんだから、この俺が文字通り宇宙ロケットのように大気圏外まで飛び出していかないなんて事はありえないのだがな。
「王国は俺に何をさせたい。あ、もしかしてあれか、王様絡みという事は魔王軍との戦いを有利にできるようなアイテムでも探させるつもりなのか」
「ご名答、さすがはカズホだ。伊達に今まで散々魔王軍や王国絡みの話に巻き込まれまくってきたわけじゃないな。
そして、これはまた途方もなく困難なミッションだ。その間はずっとパーティが危険に晒され続ける事になる」
「ギルマス、もう行くだけ行って、中でぶらぶらして帰ってくるというのはどう? ここは半金で我慢しようぜ。命あっての物種っていう諺もある事だしさ」
「ふざけないでっ!」
鋭い叱咤に軽口の腰を折られて俺は驚いた。
振り向いたそこには金髪に真っ赤な瞳をなさった、まるで吸血鬼ばりに見目麗しい十五歳くらいのお嬢様が一人立っていた。
下はタイツのようなピッチリしたズボンを履いた、若干女騎士っぽいような感じの格好をして、その全身から匂い立つかのように立ち上らせている気品はまさか。
そしてギルマスは、俺の考えを裏付けるかのように恭しく腰を落とし、そいつに丁寧な挨拶をした。
「これはこれは、もういらしてくださったのですか。ビジョー王女殿下におかれましては大変御機嫌麗しゅう」
「黙りなさい、この下郎。卑しくも、筆頭公爵家の一員、この私の従兄弟でありながらあのような犯罪に加担して。恥を知りなさい。
本来なら、私がこのような場所へやってくるなど、怖気を震うような事態ですわ! 大体、この私を前に膝もつかないとは、どういうつもりなのですか」
「おい、あんた!」
だがギルマスは片手の平をこちらに向けて俺を制し、カイザも俺の肩に片手をかけて首を振った。
俺は小声でブツブツ言うだけは言っておいた。日本だと決して吐いてはならない台詞をクライアントの前で漏らすという狼藉は少し快感だ。
「チッ、冒険者ギルドは王国の支配を受けないんじゃなかったのかよ。ギルマスはもう追放されて公爵家の人間じゃねえんだからよ。
クライアントだからって、でかい面すんなよ。でかいのは、さっきから揺らして見せつけている、その乳だけで十分だぜ」
「なんですって、王女に向かってそのような下品な事を言うなんて。さては、あなたが噂の極悪ハズレ勇者カズホですのね!」
「おう、いかにも俺が不良ハズレ勇者のカズホだあ!」
「よさんか、馬鹿者」
だが王女のヒステリーは、大人しく膝をついていた、俺を諫めた王国の騎士にまで向いた。
「まあ、お前は! 侯爵家に後ろ足で砂をかけて王都から逃げていったカイザ・アイクルではありませんか」
「おいっ! それを命じたのは、よりにもよって、お前の父ちゃんなんだがなあ!」
この言い草には、さすがに営業畑出身で忍耐強い俺も切れた。さては、魔王軍相手の連合の都合か何かの政略結婚とかで、仕方なく嫁にとった性格の悪い嫁に産ませた子だな。
妙に王様とは歳が離れているみたいだし。この手の気苦労まで背負い込んでいたのか、あの爺さんも。本当に王様なんて苦労の塊のような物は迂闊になるもんじゃねえなあ。
しかもこの女、綺麗に俺の追及を無視しやがった。それが父親の仕業なんだと最初からわかってはいるのだが喚かずにはいられないという子供の我儘だ。後ろからそっとパウルが耳打ちしてくれる。
「大切な友人を侮辱されて怒る気持ちはわかるが、ここは抑えろ。ビジョー王女は我儘な気質で有名なんだ、二人ともそれはよくわかっているから別に気にしちゃいないさ。
それに相手はクライアントが派遣した正式な仕事の立会人だ。俺達冒険者は体を張って仕事をするが、別にならず者とかではない。お前も組織の一員になったんだから、そこは肝に銘じておけ」
う、それを言われちゃあな。まあ日本の会社にいると思えば、この程度の理不尽はどうという事など。ん? 仕事の立会人だと?
「パウル。彼女が立会人とは、一体どういう事だ」
「彼女、ビジョー王女は今回の仕事の立会人で、俺達パーティの同行者だ」
「ギルマス、彼女が同行するというのは本当か」
そして彼は静かに肯定を示す頭の動きを見せてくれた。
「えー、王都の勇者も出せないようなヤバイ仕事に、王子ならともかく王女様を派遣してくるのか!」
俺は否定というよりも素直に驚きを声に込めた。それに、この少女を護衛するとなれば、俺達のリスクも増す。
「そうだ、彼女には今回のダンジョン行で大事な役割があるのだ」
「えーと、彼女の護衛の従者とかは?」
「へたな兵士や騎士を出すと我々の足手纏いになる。ただでさえ少数精鋭のSランク以上で構成するパーティだ。我々だって、それを失うリスクさえある仕事なのだからな」
うわあ、嫌な事を言ってくれるな、ギルマスも。俺達は全員で苦笑いをアイコンタクトしてみせた。この面子、チームワークはそう悪くないようだぜ。
「王女様、ちょっと聞いてもいいですか?」
「なんです、このハズレ」
ふ、散々女子高生からはハズレ君呼ばわりされてきたので、こういう言われようをされても今更だぜ。
いきなり、このような凄い美少女から冷たくこういう言い方をされたら、何かのマズイ性癖に目覚めちまいそうだしなあ。ありがとう、姶良ちゃん達。
「王都の冒険者ギルドではなく、ここへ依頼が来たことからもわかるように、国王陛下はカズホに仕事をやらせたい、というか王都を襲撃した魔獣をたった一人で粉砕したほどの勇者の力を必要としているミッションなのだろう。
であるにも関わらず、他の勇者は一人も派遣してきていない。まるで魔王軍との戦い以外で勇者を失うリスクを避けたいとでもいうかの如くにね」
あー、わかる。この前一気に半分以上勇者を持っていかれていたもんな。あの時俺が行かずに、またエリクサーも大量にあるのでなかったら、空を飛べる泉以外の勇者が全滅してたんじゃないか?
まあ泉に呼ばれたんだから、この俺が文字通り宇宙ロケットのように大気圏外まで飛び出していかないなんて事はありえないのだがな。
「王国は俺に何をさせたい。あ、もしかしてあれか、王様絡みという事は魔王軍との戦いを有利にできるようなアイテムでも探させるつもりなのか」
「ご名答、さすがはカズホだ。伊達に今まで散々魔王軍や王国絡みの話に巻き込まれまくってきたわけじゃないな。
そして、これはまた途方もなく困難なミッションだ。その間はずっとパーティが危険に晒され続ける事になる」
「ギルマス、もう行くだけ行って、中でぶらぶらして帰ってくるというのはどう? ここは半金で我慢しようぜ。命あっての物種っていう諺もある事だしさ」
「ふざけないでっ!」
鋭い叱咤に軽口の腰を折られて俺は驚いた。
振り向いたそこには金髪に真っ赤な瞳をなさった、まるで吸血鬼ばりに見目麗しい十五歳くらいのお嬢様が一人立っていた。
下はタイツのようなピッチリしたズボンを履いた、若干女騎士っぽいような感じの格好をして、その全身から匂い立つかのように立ち上らせている気品はまさか。
そしてギルマスは、俺の考えを裏付けるかのように恭しく腰を落とし、そいつに丁寧な挨拶をした。
「これはこれは、もういらしてくださったのですか。ビジョー王女殿下におかれましては大変御機嫌麗しゅう」
「黙りなさい、この下郎。卑しくも、筆頭公爵家の一員、この私の従兄弟でありながらあのような犯罪に加担して。恥を知りなさい。
本来なら、私がこのような場所へやってくるなど、怖気を震うような事態ですわ! 大体、この私を前に膝もつかないとは、どういうつもりなのですか」
「おい、あんた!」
だがギルマスは片手の平をこちらに向けて俺を制し、カイザも俺の肩に片手をかけて首を振った。
俺は小声でブツブツ言うだけは言っておいた。日本だと決して吐いてはならない台詞をクライアントの前で漏らすという狼藉は少し快感だ。
「チッ、冒険者ギルドは王国の支配を受けないんじゃなかったのかよ。ギルマスはもう追放されて公爵家の人間じゃねえんだからよ。
クライアントだからって、でかい面すんなよ。でかいのは、さっきから揺らして見せつけている、その乳だけで十分だぜ」
「なんですって、王女に向かってそのような下品な事を言うなんて。さては、あなたが噂の極悪ハズレ勇者カズホですのね!」
「おう、いかにも俺が不良ハズレ勇者のカズホだあ!」
「よさんか、馬鹿者」
だが王女のヒステリーは、大人しく膝をついていた、俺を諫めた王国の騎士にまで向いた。
「まあ、お前は! 侯爵家に後ろ足で砂をかけて王都から逃げていったカイザ・アイクルではありませんか」
「おいっ! それを命じたのは、よりにもよって、お前の父ちゃんなんだがなあ!」
この言い草には、さすがに営業畑出身で忍耐強い俺も切れた。さては、魔王軍相手の連合の都合か何かの政略結婚とかで、仕方なく嫁にとった性格の悪い嫁に産ませた子だな。
妙に王様とは歳が離れているみたいだし。この手の気苦労まで背負い込んでいたのか、あの爺さんも。本当に王様なんて苦労の塊のような物は迂闊になるもんじゃねえなあ。
しかもこの女、綺麗に俺の追及を無視しやがった。それが父親の仕業なんだと最初からわかってはいるのだが喚かずにはいられないという子供の我儘だ。後ろからそっとパウルが耳打ちしてくれる。
「大切な友人を侮辱されて怒る気持ちはわかるが、ここは抑えろ。ビジョー王女は我儘な気質で有名なんだ、二人ともそれはよくわかっているから別に気にしちゃいないさ。
それに相手はクライアントが派遣した正式な仕事の立会人だ。俺達冒険者は体を張って仕事をするが、別にならず者とかではない。お前も組織の一員になったんだから、そこは肝に銘じておけ」
う、それを言われちゃあな。まあ日本の会社にいると思えば、この程度の理不尽はどうという事など。ん? 仕事の立会人だと?
「パウル。彼女が立会人とは、一体どういう事だ」
「彼女、ビジョー王女は今回の仕事の立会人で、俺達パーティの同行者だ」
「ギルマス、彼女が同行するというのは本当か」
そして彼は静かに肯定を示す頭の動きを見せてくれた。
「えー、王都の勇者も出せないようなヤバイ仕事に、王子ならともかく王女様を派遣してくるのか!」
俺は否定というよりも素直に驚きを声に込めた。それに、この少女を護衛するとなれば、俺達のリスクも増す。
「そうだ、彼女には今回のダンジョン行で大事な役割があるのだ」
「えーと、彼女の護衛の従者とかは?」
「へたな兵士や騎士を出すと我々の足手纏いになる。ただでさえ少数精鋭のSランク以上で構成するパーティだ。我々だって、それを失うリスクさえある仕事なのだからな」
うわあ、嫌な事を言ってくれるな、ギルマスも。俺達は全員で苦笑いをアイコンタクトしてみせた。この面子、チームワークはそう悪くないようだぜ。
「王女様、ちょっと聞いてもいいですか?」
「なんです、このハズレ」
ふ、散々女子高生からはハズレ君呼ばわりされてきたので、こういう言われようをされても今更だぜ。
いきなり、このような凄い美少女から冷たくこういう言い方をされたら、何かのマズイ性癖に目覚めちまいそうだしなあ。ありがとう、姶良ちゃん達。
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